『NFTという技術によって生かされる人は必ずいる』|IZUMOのco-founder(共同創業者)おゆ/Captainさんに取材

どうも、イーサリアムnavi運営のでりおてんちょーです。

先日、AIやweb3技術を活用したVTuberプロジェクト『IZUMO』の共同創業者である「おゆさん」に、インタビューを行いました。

IZUMOプロジェクトの設計思想や背景について、web3文脈で興味深いポイントに焦点を当てながら深掘りしつつ、「おゆさん」の目線で現状のweb3業界に対する課題や、二次創作文化の歴史や仕組みなどについても説明していただきました。

また、先日アナウンスされた『IZUMOのシンボルキャラクターであるAilis(アイリス)を、豪華アーティストの方々に描き下ろしてもらい、SBTとして無料配布するコラボ企画「SAI by IZUMO」』についても、その背景や想いなどを語っていただいています。

TL;DR
  • 「金銭価値のつかないNFTが、どういう風にユーザーに捉えられるのか」に対する挑戦
    • 『金銭インセンティブ×ロングテール』の設計はめちゃくちゃ難しい
  • 豪華アーティストの方々とのコラボが実現できた理由は、シンプルに「パッション」
    • 「金銭的な条件」や、NFTプロジェクトとしての「質」「立ち振る舞い」も当然ながら大事
  • 日本の二次創作文化は「阿吽の呼吸」で成り立っている
    • 問題が起きたら裁判を起こしてルールを整備していくスタイルのUS社会とは異なる文化
  • CC0にしたからと言って二次創作が起きるわけではない
    • 二次創作は、5段階くらいのステップを経て起きるもの
    • CC0を採用することはそのステップの一つを改善するようなもの
  • CC0は、クリエイターに対して大きな自由を提供する反面、それはともすると会社としての責任の放棄にもなりかねない
    • CC0 NFTが悪いわけではなく、それはそれで面白いし、一つの社会実験として好き
    • ただ、CC0ライセンスの採用が『IZUMOのビジョン達成のための促進材料になるわけではない』と判断
    • 少なくとも最初の数ステップにおいては熱狂的に旗を振る人が必要
  • 『今のこの時代に適した創作文化に対して熱狂を持っている人たち』に、もっと参加してほしい
    • 新しい技術を前提としたものづくり文化における「クリエイターさんたちの居場所」を模索していきたい
  • 良い作品を創る人がたべていける可能性を“最大化”したい
    • NFTという技術はクリエイターさんが生きていくための一つの大きなピース
    • 少なくともこの技術によって生かされる人というのは、必ずいるという確信がある
  • そもそもお金を短期的に稼ぎたいんだったら、エンタメという領域は選んでいなかった
    • エンタメ業界で大きなモノを生み出すためには、多くの時間とムーブメントみたいなものが必要
    • 『あんまり結論ファーストで考えすぎなくて良いんじゃないか』という提案

でははじめに、この記事の構成について説明します。

STEP
IZUMOと共同創業者の「おゆさん」について

まずは、AIやweb3技術を活用したVTuberプロジェクト「IZUMO」の概要を簡潔に解説しつつ、共同創業者の「おゆさん」についての情報を簡略的にまとめていきます。

STEP
おゆさんへのインタビュー

続いて、IZUMOの共同創業者である「おゆさん」へのインタビューの内容について、文字起こしして読みやすく編集したものをお伝えしてまいります。

本記事が、これから「IP×web3」の領域で事業展開したい方や、IZUMOプロジェクトの立ち上げ背景やファウンダーの想い、NFTプロジェクト立ち上げに至るまでの過程などについて知りたいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

目次

IZUMOと共同創業者の「おゆさん」について

IZUMO

出典:izumo.com

「IZUMO」は、2023年にAnotherBall社によって始動した『新時代のバーチャルエンタメ体験を提供するプロジェクト』です。

IZUMOは、AIやweb3技術を活用したVTuberプロジェクトであり、『Live as you want to be.(好きな姿で暮らしていくことができる世界の実現)』をそのスローガンとして掲げています。

その世界を実現するための一環として、IZUMOプロジェクトはシンボルキャラクター「Ailis(アイリス)」のアバターアセットを営利・非営利を問わず無料で公開するなど、web3やNFTの文脈でも非常に興味深い試みを行っています。

出典:IZUMO運営のAnotherBall、エンジェルラウンドにて世界で活躍する著名投資家から約3億円を資金調達

また、2023年5月17日にはエンジェルラウンドにて約3億円の資金調達を実施したことをアナウンスしました。

孫 泰藏さんや本田 圭佑さん、ZenAcademyのZeneca氏、Mask Network CEOのSuji Yan氏など、国内外のさまざまなインベスターから出資を受けています。

derio

今回のインタビューでは、web3文脈で気になるポイントに焦点を当てつつ、IZUMOプロジェクトの立ち上げの背景や思想的な部分、現在のweb3カルチャーに対して思うことや、二次創作文化についての考察などについて、共同創業者である「おゆさん」に伺っていきます!

参考:
IZUMO運営のAnotherBall、エンジェルラウンドにて世界で活躍する著名投資家から約3億円を資金調達

共同創業者: おゆさん

おゆさんについてもっと知りたいという方は、「こんにちは、大湯俊介と申します。自己紹介など」や「【大湯俊介】起業家の心に、圧倒的に寄り添った存在でありたい」をご覧ください。

おゆさんへのインタビュー

derio

おそらく、お話しするのは初めましてですよね?本日はよろしくお願いします!

おゆ

はじめまして。こちらこそ、よろしくお願いします!

おゆさんの起業ヒストリー/「ママリ」について

derio

では早速なのですが、まず初めにおゆさんが起業家になられるまでの経緯や、IZUMO以前にやられていた「ママリ」などのアプリについて簡単に教えていただけますか?

おゆ

はい、ありがとうございます。そうですね、僕が起業するきっかけになった最初のサービスは、「クリエイター(ものづくりする人たち)の作品を公開していって、生活をサポートできる」みたいなコンセプトのアプリです。『世界に向けて、日本のものづくりを出したい!』みたいなことを考えていました。

出典:コネヒトとの8年間の旅
おゆ

それで当時、孫 泰藏さんがやられていた「MOVIDA」っていうインキュベーションプロジェクトがあったんですけど、そのアイデアで応募したんですよ。そうしたら、泰藏さんから『良いんじゃない!』みたいに言われて(笑)

出典:v-tsushin.jp/interview/movidainc/
おゆ

『「日本で⚪︎⚪︎でこうやって…」みたいなプロジェクトが多い中で、君たちは「世界で」と言っていて、良いね!』みたいになって。それで採択されて500万円投資しますということが決まったので、学生としては出資されることもそうですけど、泰藏さんから評価してもらえたことが嬉しかったですね。それに背中を押されて起業しました。

derio

そんなエピソードがあったんですね。

おゆ

そうです。で、そこからアプリを半年くらいかけて頑張って作って、そのまま2年間くらい「Creatty (クリエッティ)」という名前で運営していたんですけど、ビジネス化するのは難しくて、結果的にはピボットすることになりました。このまま続けていても、会社としては成り立たないよねと。

出典:コネヒトとの8年間の旅
おゆ

500万円貰っていたものの、当時の僕と共同創業者は給料0円で2年間やっていましたし、連れてきた友達とかも朝から晩まで働いてもらったのに月5万円しかあげられなくて。。そういうことを経て、『ちゃんと人の役に立つものを作らないとダメだよね』ということを考えるようになって、じゃあ「人の生活に役立つものって何だろう?」と考えた結果、最初は健康領域に行こうということになり、そこからさらにピボットして家族向けのQ&Aアプリ「ママリ」にピボットしていく流れでした。

ママリは、お金は一切絡まない「トークンエコノミー」だった

おゆ

今振り返ってみると、「ママリ」ってトークンエコノミーだったんですよね。

derio

なるほど、「ママリ」のポイントシステムについてもう少し詳しく教えていただけますか?

おゆ

アプリの中にポイントがあって、誰かが投稿した質問に対して回答して評価されると「ママリポイント」が貰えるんですよ。ただ、そのポイントというのは実際ほとんど何も使えないものなんですよね。で、コミュニティの中で良い回答をしたりとか、早く困っている人を助けたりするとママリポイントが貯まっていくんですけど、それが自分の「良いことした点数」みたいな感じで、誇りになっていました。『ママリポイント、15万ポイントですか!すごいですね!』みたいな。

出典:コネヒトとの8年間の旅
おゆ

それで、実際にママリポイントが貰えたら嬉しいから、回答がどんどん増えていって、そこにいる人たち同士が助け合うようになったんです。これって、困っている人に対して無償で回答してあげるわけですから、奉公的なコミュニティとして機能しているんですよね。例えば、『今日うちの赤ちゃんが泣き止まなくて辛いです。大変です。皆さんどういう風に子どもさんをあやしていますか?』みたいな質問があったときに、周りのお母さんたちが『私もその時期はすごく大変でした。私はこういう風にやっていましたよ。』みたいな会話をしているわけです。

derio

非常に健全なコミュニティって感じですね。

おゆ

別に回答する方もお金が貰えるわけでもないんですけど、そういう助け合いコミュニティで成り立っていたんですよ。だから、web3の世界の人からしたら「なんでそんな無駄なことしているんだ」とか思うかもしれせんね(笑)別に何のエアドロップも無いのにと(笑)

derio

いやいや(笑)思わないですよ(笑)

おゆ

でも、基本それでコミュニティって成り立つわけですよ。僕たちがママリをやっていて思ったこととしては、「回答する側が価値を感じてくれている」という側面があるということです。

derio

なるほど、それはどういう意味でしょうか?

おゆ

結局、コミュニティの中で回答してありがとうと言われること自体に、快楽とか幸福があるわけですよ。特に、普通に子育てしていると誰かに感謝されることが少ないんですよね。例えば家で子育てをしていて、旦那さんが夜遅くに帰ってきて「飯まだか!」みたいなのが一般的だったり、子どもが小さいと外出したり友達とランチに行ったりとかも難しいわけで。

おゆ

そういうのってよくある話ですけど、要はコミュニケーションを取る機会がママには少なくて、誰からも感謝されないみたいな世界の中で、このアプリ上だったら自分の体験を人にシェアするだけで『あなたの体験が参考になりました!』みたいに感謝されると。だから、金銭的な欲求から切り離したコミュニケーションで、「感謝」というものによって回答する側も満たされているから回答してくれるわけです。

derio

金銭インセンティブのような外発的動機よりも、内発的なモチベーションをどう引き出すかみたいな話ですね。

おゆ

そもそも、なぜQ&Aでアンサーがたくさん出てくるのかを考えると、そこに対しての「楽しさ」があるからですよね。回答して感謝される喜びや、フィードバックが得られることの楽しさがある。なので、よくママリの話をすると『どうやってそんなに回答する人を集められたんですか?』って聞かれるんですよ。web3とかだと、どうやって人を集めるためにエアドロップを絡ませるとか、金銭インセンティブの話になりそうですけど、僕はまったく逆だと思っていて。

derio

なるほど、「逆」ですか。

おゆ

要は、「質問をする人」を集める方が大変なんですよ。回答する人は、回答するという行為で既に楽しんでいるんですよね。なので、逆に回答する人を無理やり集める必要はなくて、良い質問さえ集まってくれば、自動的に回答がついてくるんです。

おゆ

なので、そこに対して無理やりインセンティブをつける方が歪むと僕は思っていて。例えば、回答することで10円貰えるみたいになったら、その人は10円を貰うために回答することになるわけで、10円貰えなくなったら回答しないわけじゃないですか。

derio

金銭インセンティブをトリガーにして内発的モチベーションにちゃんと移行できないと、そうなってしまいますよね。

おゆ

はい。そういう意味で、インセンティブが逆行してしまうと。でもこれって、NFTのロードマップとかの話ともすごい近いと思うんですよ。「将来こういうプランがあるから、今このNFTに注目して買っておいた方が良い」となると、結局それって突き詰めると『儲かりそうだから集まっている』みたいな話にもなりかねないですよね。

derio

たしかに、よく見る光景ですね。

おゆ

でも、そもそも僕はプロセスを楽しむことが大事だと思っています。まず第一にプロセスが楽しくて、その人は純粋に楽しんで活動していた結果、そこでロイヤルユーザーになって、そういう人にこそリワードをあげたいって思うよね、と。

derio

とても同感です。僕もNounsDAOから何度かリワードを貰ったことがありますが、純粋に楽しんで活動していた結果ロイヤルユーザーになり、リワードを貰えたことを思い出しました。

おゆ

僕の場合、ママリを運営していたことが、こういう考え方に紐づいているのかもしれないです。だから今思えば、ママリというサービスはトークンエコノミーだったなと思いますね。別にお金は一切絡んでいないですけど。

『お金のインセンティブ』について

おゆ

まあでも、本質的にはコミュニティサービスってそうあるべきなんですよね。お金のインセンティブというのは、強烈すぎるんですよ。

derio

でも、NFTプロジェクトとかでお金のインセンティブを絡ませないのは、なかなか難しいですよね。

おゆ

そうそう。web3っていうラベルが付いた瞬間に、どうしても金銭的価値と切り離せないじゃないですか。僕はそれがサービスを難しくしていると思うんですよね。

derio

アンダーマイニング効果とかの話もそうですよね。例えばボランティアの話とか有名ですけど、彼らはお金を貰えないからやっているんですよね。そこでお金を貰ってしまうと、『自分のやっている行動価値はその程度なのか…』みたいに感じて、やる気を削いでしまいますよね。

アンダーマイニング効果は、金銭や賞品などの外発的インセンティブが、タスクを実行する人の内発的動機づけを期待に反して低下させるもの。以前は報われなかった活動に対して報奨を提供することの全体的な効果は、外発的動機への移行と既存の内発的動機づけの弱体化である。報酬が提供されなくなると、その活動への関心は失われる。その後も内発的動機づけは戻らず、活動を維持する動機として外発的報酬を継続的に提供されなければならなくなる。

参考元出典:wikipedia
おゆ

そう、陳腐化しちゃいますよね。さっきの回答したら10円貰えるという話もそうですが、お金もらえないならやらないみたいな話に繋がってしまうと。それは人間の本質なので、非常にお金を絡ませるって難しいですよね。

derio

たしかに…

おゆ

ただもちろん、お金を絡ませられるからこその急速な成長というのはあって、なんだかんだでお金は強いんですよね。例えばAzukiは今炎上しているけど、なんだかんだ今回のElementalsで54億円くらい調達しているわけじゃないですか。

おゆ

これを結構クリティカルな失敗だと捉える人もいますけど、54億円もあれば僕はなんとかなると思うんですよね。それだけのお金が集まれば最低でも5回くらいは打席に立てますし、そのどこかでホームランを打てば良いわけですから。それくらいお金はお金として強いので、登り切ることができれば強いなと思いながらも、じゃあ金銭インセンティブが付いていれば上手くいくかというと「そんなわけはないよね」と思う面もあります。コミュニティサービス等にとっては、金銭インセンティブは余計なものなのかもしれないですね。

derio

そうですね。登り切れば強いですけど、中途半端になってしまった時が一番厄介ですよね。『金銭インセンティブを絡ませたせいで、後から全体が崩れてしまった』みたいな事態に繋がりかねないですし。

おゆ

そうそう。で、あとはIPビジネスとコミュニケーションサービスでもまた違うと思っていて。Azukiはコミュニティで作るとはいいつつ、主眼はIPの会社だと理解しています。一方で、TwitterとかFacebookとかは無数のユーザーが関わってくるので、性質が違う気がします。

derio

なるほど!

おゆ

例えばAzukiのホルダーを観察してみると、世界中からお金持ちが3,000〜4,000人集まっているという構造にも見て取れます。しかし、コミュニティサービスを作ろうとした場合はそうもいかないんですよね。「Twitterには4,000人のユーザーがいます」ってなっても、それコミュニティサービスとしてダメじゃんってなるので。だから、よりロングテールにインセンティブ設計をしないといけないとなると、『金銭インセンティブ×ロングテール』ということになって、めちゃくちゃ難しいんですよね。鬼門だと思います。

出典:我々が「SAI」に込めた想い【IZUMO】
おゆ

なので、金銭的な価値がつかないNFTとか、そっちの方向で模索した方が良いんじゃないかと思っています。それで、金銭インセンティブを伴わないNFTに可能性があると考えて、「金銭価値のつかないNFTが、どういう風にユーザーに捉えられるのか」みたいな実験を行っています。だから、僕はNFTの有用性として「所有する喜びと親密感」「オリジナルIPで食べていける人の増加」の2つを掲げていたんですけど、今回のSAIでは後者は一回諦めましょうと。『まずは前者で攻めましょう、後者はまたやります!』という感じでやっています。

derio

なるほど、それがSBTにした理由に繋がってくると。

おゆ

そうです。今のタイミングで「儲かるNFTをつくろう」とかは思っていないし、うちとしてはカロリー高すぎるなぁと。『フロアプライス下がったけど、どうしてくれるんだ』みたいなコミュニケーションを求めていないですし、今みたいな冬の時代にNFTを売って稼げるとも思っていないし。仮に0.1ETHで10,000個売れたとしたら2億円ぐらいですけど、「お金で無理やりコミュニティを歪めてしまうくらいなら、2億は別にいらないかな…」みたいな(笑)

derio

(2億いらない…だと…)

おゆ

もちろん、あったら嬉しいんでしょうけど、2億円をゲットするために過剰な歪みを背負わなくちゃいけない気がしていて、それが呪いになると思っているんですよね。なので、無理やりその呪いにかかりにいくのも違うんじゃないかなと、思っているところはあります。

IZUMOで開催されていたクイズ大会

derio

そういえば、話が変わるのですが、IZUMOでは今年の頭くらいにクイズ大会みたいなのをやって盛り上がっていましたよね?

おゆ

はい。初期の頃にIZUMOのクイズを出して、皆んなで解いていって、解けた人が「すごい!オタクだね」みたいなクイズをやっていましたね。クイズを結構頑張って考えたんで、フォロワー1000人くらいしかいなかったんですけど、そのうち1個とかは800人くらいからコメントが付くみたいなことが起こりました。

derio

これ当時Twitter上で観測していましたが、すごい企画力だなと思っていました。

おゆ

結構頑張ってクイズを考えていたっていうのもあるんですけど。あれって、あらかじめセットされてコンテンツが投稿されているように見えるんですけどね。。3時間くらい前の朝6時までネタを考えるみたいな、そういう地獄みたいなオペレーションでやってたんですよ(笑)

derio

そうだったんですね!結構その場その場でやられていたんですね(笑)

おゆ

そうそう。本当に外から見るとあらかじめ計画されたようなコンテンツ企画に見えるんですけど、裏側は本当にてんてこまいで、毎日夜中まで「ああでもない、こうでもない」って言いながらやってましたね。

derio

それはすごい裏話ですね。当時このクイズ企画はかなり盛り上がっていましたし、それでいうと今回のSAIアーティスト公開も『SAIの発表が毎日楽しみです!』みたいなツイートもたくさんありましたよね。

おゆ

そうですね、ありがたいことに!ただ、今はどちらかと言うとアーティストさんの名前を出しているだけなので、カジュアルなお祭り騒ぎという感じですけど。まあでも本当に、半年以上かけて仕込んできたものがやっと形になって、見せられるようになってきたので、「やっと」という感じですね。僕らからすると、半年以上前からずっとやってきていたので、長かったです(笑)

豪華アーティストの方々とのコラボが実現できた理由

derio

いや、すごいです本当に。ちなみに、読者の一人としてこの流れで聞いておきたいなと思うのですが、こういった豪華なアーティストの方々とのコラボが実現できた1番の要因っていうところには、何がありますか?

おゆ

シンプルに「パッション」じゃないですかね。すごい身も蓋もない話をしちゃいますけど。

おゆ

例えば、トップランナーで走っているクリエイターの方々と話していると思うんですけど、やっぱり皆さんセンスが良くて、すごく感度が高いんですよね。今回お声がけさせていただいた方々も、皆さんもう大成功されているクリエイターさんたちですけども、やっぱりそこにあぐらをかかずに、貪欲に新しい技術とかを取り入れていこうとされているなと、とても感じます。

derio

なるほど、やはり一流の人たちは、すごい努力されているんですね。

おゆ

でも一方で、一般論ですけど『名前が売れれば売れるほど身動きが取りづらくなる』というものじゃないですか。俗に言うイノベーションのジレンマのようなものですよね。なので、新しい技術とかが出てきたときに、彼らは常にきっかけを探していて。

出典:我々が「SAI」に込めた想い【IZUMO】
おゆ

ちょっと余談になっちゃいますけど、大体イケてるクリエイターさんとかに問い合わせとかをすると、『いや、2024年12月までスケジュール予定埋まっています』みたいに返ってくるんですよ。(笑)

derio

えー、そうなんですか!来年の末まで!(笑)

おゆ

そうなんですよ。で、「そうですよね…忙しいですよね。。」ってなってしまうと。ただ、結構トップオブトップの人たちは、本当に面白い企画がきたら飛び付けるように、うまくスケジュールを調整して、休みを空けてあるんですよ。

derio

なるほど〜

おゆ

基本的に案件は抱えていて、食い扶持としては困っていないんだけど、1ヶ月の間にいくらかとか、夏のコミケ後に1〜2ヶ月とか、結構まとまった休みを取れるようにしていて。だから、本当に面白いものと巡り合ったときに、体制を変えて飛び付けるような行動を取られているように感じます。

derio

一流の方々はすごいですね

おゆ

だから、今回コラボが実現できたのもそれに近いと思っていて。僕が今までやってきたこととか、これからどういうことをやりたいのかとか、今までいくつか事業をやってきたことに興味を持っていただきご紹介に繋がるとか、そういうのが積み重なって、お受けいただけたんだと思います。

derio

なるほど、昨日今日の話じゃなく「日々の積み重ね」ですね。

おゆ

もちろん、最初に興味を持っていただけたのには、別の理由もあると思っています。僕は皆さんに連絡を取るときに、自分でメールを書いたり送ったりもするんですけど、その時に「その人とやりたい理由」をちゃんと伝えています。そういう理由に共感していただけているからかなとは思いますね。

derio

そうですよね。彼らもたくさん連絡は日々もらっているでしょうから、テンプレ文章や内容の薄いものはスルーするでしょうし。

おゆ

そうそう。なので、全ての条件を満たさないといけないと思っていて。「金銭的な条件」もそうだし、NFTプロジェクトとしての「質」「立ち振る舞い」もそうだし、総合的に全部を満たすことができたら、初めてドミノが倒れ始めるみたいな感じかなと思います。その上で、少なくとも最初の扉を開けるきっかけというのは、パッションなのかなという気がしますね。『なぜあなたとやりたいのか』『なぜ今なのか』『なぜ僕らはこの状況にワクワクしているのか』みたいなものの組み合わせだと思います。

derio

なるほど、ありがとうございます!ちょうど2年くらい前からNFTって流行り始めて、web3企業の方が既存のイラストレイターさん・クリエイターさんに「コラボしましょう!」と声をかけているのを見てきたんですけど、ビジネスっぽいものに対しては反対するスタンスを取っている人も多かったのかなと個人的には思っていて。だから、今回おゆさんのプロジェクトがたくさんの著名アーティストの方々とコラボ発表されているのを見て、僕は純粋に「すごいな〜」と思って見ていました。

おゆ

賛否両論あるとは思いますが、極論で言うと別にSAIはビジネスビジネスしたものにしないようにしたいと思ってやっています。もちろん、IZUMOとしては事業を株式会社としてやっているわけですので、最終的には辻褄が合うようにやりたいとは思っていますが。

出典:なぜ「アイリス」は無料なのか?【IZUMO】
おゆ

距離感が大事だと思っていて、参加するアーティストの方もお金を貰ってイラストを描いたりする以上、当たり前ですけどそれが慈善事業ではないことは分かっているわけですよ。なので、そこの見せ方というか、セッティングの仕方がやっぱり大事だと思います。彼らも自分たちの見え方が商売なので、『自分はどういうプロジェクトだったら乗りたいと思うか』をちゃんと考えているんですよね。なので、「一切お金のにおいをさせないでください」「ビジネスっぽいものは嫌です」と思っているわけじゃなくて、セッティングの仕方とか、見せ方とか、それでファンが本当にハッピーになるのかとか、そういうところが本質だと思うんですよね。

derio

確かにそうですね。それでいうと、今回のSAIでは「SBTにしたことが良かった」という面もあるんですかね?

出典:我々が「SAI」に込めた想い【IZUMO】
おゆ

そう思います!やっぱり、折衷点だと思うんですよ。一部の熱狂している人たちの間では『NFTは未来だ!』『ブロックチェーンは未来だ!』となっていますけど、今はまだNFTとかブロックチェーンって本当に過渡期だと思っていて。要は、小さいカテゴリとかコミュニティの中でわちゃわちゃしているわけですよ。なので、それを広げていくためにも、もう少し折衷点とか落とし所みたいなものを見つけていく必要があるなと、以前から思っていました。外の人たちが受け入れられるような技術にしていかないといけないし、今は過渡期の中での折衷点として、僕たちの中では「SBTを使う」という結論に至った感じですね。

日本における二次創作文化

derio

なるほど、そういう経緯があったのですね。そういえばアイリス(Ailis)ちゃんって、Live2Dアセット(アバターのみならず基幹の設定ファイルを含めた全データ)とか、様々な形式の3Dアセット(Unity, Maya, Blender, 3dsMax, VRM. MMD及びFBXの計7種)とか、一式のアバターアセットを無料公開されていますよね。で、これらのアセットは商用利用も含めライセンスを開放されていますと。

おゆ

ですね!

出典:なぜ「アイリス」は無料なのか?【IZUMO】
derio

個人的には、こういった方向性の施策というのは非常にweb3らしくて面白いなと思っていました。クリプトの文脈におけるオープン性とかpermissionlessとか、そういうカルチャーや概念に近いのかなと思って。そのあたりの思想は、おゆさんの中であったりするのでしょうか?

おゆ

そうですね。語弊があったら申し訳ないんですけど、別にオープン性自体はクリプトの特権でもないと思っていて。そもそも日本において二次創作の文化って、コミケとかでいうと40年近くの、結構それなりに長い歴史があるわけですよね。二次創作自体はすごい歴史があって、本来はそういう「エンタメコンテンツの歴史」みたいなところで、二次創作とか素材を自由に使うっていうDNAは組み込まれているはずなんですよ。

derio

なるほど、それは確かに。

おゆ

まあ、やり方は違うと思いますよ。日本はもう少し『阿吽の呼吸』でやっているというか。

おゆ

二次創作って多くの場合著作権法における親告罪の範疇なので、厳密にはグレーなんですよね。被害者による告訴がなければ無罪、告訴があればアウトになる可能性がある、そういう空気感の中で特有の阿吽の呼吸で許されているのが、日本の二次創作なわけですよ。だから、問題が起きたら裁判を起こしてルールを整備していこうっていうスタイルやまたフェアユースみたいなアメリカ的な概念はなく、どちらかというと「公共の善に照らして」「空気を読んで」みたいな。『一般常識に照らし合わせたら、日本人なら分かるよね?』という。そういう阿吽の呼吸文化に端を発した二次創作というのが、どちらかというと日本のスタイルですよね。例えばジブリとかも、2020年にイラストを使って良いよって公開しているんですよ。

おゆ

でも、ここには『常識の範囲でご自由にお使いください。』って書いてあるわけですよ。これは、非常にゆるやかですよね。非常に曖昧ですよね。非常に日本的かつジブリ的、アニミズム的というか。いろんな文脈から捉えて、見る側に判断を委ねている。その使われ方において、社会の総意に判断を委ねているという意味で、良くも悪くも非常に日本的だなと思います。

derio

確かに、そのように言語化されるとしっくりきます。

おゆ

例えば、その事例でいうと、最近こんなことがありましたよね。

おゆ

簡単に要約すると、『ジブリを使ってセミナーに誘導しているから、商用利用になっているんじゃないのか』みたいな話だったんですけど、これはまさに民意で燃えた例ですよね。ジブリ運営はわざわざこんな問題に対しては何も言わないですけど、こういったことを社会が許さないということでみんなが意見を投げかけた結果、対象アカウントの方が少しお休みしますという事態になったと。

derio

ありましたね。まさに、「阿吽の呼吸」で決まるものだなという感じがします。

おゆ

そうそう。ちょっと話が脱線してしまったけど、簡単にまとめると、日本の二次創作文化ってそういうものだと僕は思うんですよ。で、その文化に照らし合わせると、僕らがやっていることっていうのは、そんなに新しいことではないと言いますか、突飛なことをしているわけではないと思っています。

derio

なるほど〜。今のお話はすごく興味深いですね。僕は結構、海外事例としてのCC0 NFTをリサーチしていたので、その日本独特の現象というのは、違いとしてよく分かります。

derio

僕がいろいろ調べた結果、主語が大きいですけど「海外の人たちの方が白黒決めたがる傾向にある」と思っていて。要は、ライセンスがちゃんとCC0になっているか等を確認していますし、日本式の緩やかな感じだと『でもそれって、権利を持っている上の組織がダメって言ったら訴えられるリスクあるんじゃない?』とか、そういうことを毛嫌いしている人が多いのかなと思います。

おゆ

確かに確かに!

derio

それに対して日本式の二次創作の場合はそうではなく、コミケとかもそうですし、厳密にはグレーゾーンみたいなところでも進んできていて。でも、そのスタイルだったからこそ、これだけの二次創作文化が生まれているのかなとも思います。

有料パートでは、ここまでの話の続きとして『二次創作が起きるために必要な要素・過程』『IZUMOでCC0ライセンスを導入しなかった理由』などについて話しています。興味がある方はご覧ください。

これより先のコンテンツは、定期購読プラン (初月無料)に登録すると閲覧可能です。
ログイン 今すぐ登録

読者へのメッセージ

出典:我々が「SAI」に込めた想い【IZUMO】
derio

最後に、この記事を読んでくださっている方々へのメッセージとか、何かありますか?

おゆ

そうですね。やっぱり、シンプルに技術が広がる時って、そこに対してワクワクとか何かしらのリビドー・情動みたいなものが、先に迸ることが必要じゃないですか。それは別に何でも良いんですけど、例えばエロコンテンツなら「エロ」だし、「お金」っていう場合もあるし、ニコニコ動画の時にはお金というよりは『こんなこと個人ができちゃうの!?』っていう「驚き・期待感」があったと思います。そんな感じで、新しい技術が広まる時にはそういった色んな角度からのワクワクが必要不可欠だと思っているので、僕らもそういったワクワクを形作れるように長い目線で闘っていこうかなと思って、IZUMOというプロジェクトをやっています。

おゆ

ただ当然、株式会社としてやっているので、最終的にどこかで帳尻を合わせて大きなビジネスにしていかないといけないし、経済資本主義からは切り離せないし、切り離すべきではないと思っています。

derio

もちろんです。

おゆ

でも、そもそもお金を短期的に稼ぎたいんだったら、エンタメという領域は選んでいなかったと思います。もうちょっと構造的に立ち上げやすくて、既にビジネスモデルが確立されているものをやるはずです。なので、最後は帳尻を合わせないといけないんですけど、エンタメ業界で大きなモノを生み出すためには、多くの時間とムーブメントみたいなものが必要なのかなと。ということで、皆さんにも急ぎすぎずにIZUMOを楽しんでほしいなと思っています。

出典:twitter.com/IZUMOofficial/status/1683672017827168256
おゆ

例えば、今回IZUMOでSBTを配ったんですけど、「それ来週にはどうなるんですか?!」って聞かれたとするじゃないですか。もちろん考えていますけど、変に金銭的な意味で期待しすぎるんじゃなくて、純粋に素晴らしい6人のクリエイターの人たちが僕たちのために作品を描いてくれているので、それをまじまじと見て楽しんでいただくこと自体が、今回の手段であり目的でもある気がしています。

derio

なるほど。「手段であり、目的でもある」ですか。

おゆ

なんかこう、あんまり即物的になり過ぎない方が良いというか、スローダウンした方が良いんじゃないかなという感覚すらあって。で、スローダウンしたからと言って、技術に対しての興味を失ってほしくないんですよね。なので、技術に対する興味は金銭的な意味ではスローダウンしているけど、この技術を使って面白いことができないかっていうのを模索していこうと思っているので、手段を目的化して楽しんでも良いんじゃないかなと思って、SAIをつくっています。

出典:我々が「SAI」に込めた想い【IZUMO】
おゆ

手段を目的化していると言ったけど、そもそもエンタメなんてそういうものじゃないですか。別に『アニメを観て何を生み出しているんですか?』って聞かれたら、「別に何も俺は生み出していないけどなぁ〜」みたいになる時間も結構多いわけで(笑)

derio

それはそうですね(笑)

おゆ

でも別にそれで楽しいし、刺激を受けてそれが僕の創作活動に繋がっているというところでは意味は絶対にあるし。なので、『あんまり結論ファーストで考えすぎなくて良いんじゃないか』っていう提案です、SAIは。そういうことを考えながらやっています。

derio

いや〜、ありがとうございます。すごく面白かったですし、僕もとても勉強になったところがいっぱいありました。

おゆ

いえいえ、こちらこそ。良い問いを投げかけてもらえたので、僕も考えるきっかけになりました。本当に。

derio

本当ですか、それは良かったです。

おゆ

世界のイーサリアムnaviにしていきましょう。

derio

ありがとうございます(笑)IZUMOも応援しています。お互い頑張っていきましょう!

おゆ

頑張ります!

まとめ

今回は、AIやweb3技術を活用したVTuberプロジェクト『IZUMO』の共同創業者である「おゆさん」に、インタビューを行いました。

本記事が、これから「IP×web3」の領域で事業展開したい方や、IZUMOプロジェクトの立ち上げ背景やファウンダーの想い、NFTプロジェクト立ち上げに至るまでの過程などについて知りたいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。

また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。

イーサリアムnaviを運営するSTILL合同会社では、web3/crypto関連のリサーチ代行、アドバイザー業務、その他(ご依頼・ご提案・ご相談など)に関するお問い合わせを受け付けております。

まずはお気軽に、こちらからご連絡ください。

励みになるので、よかったらSNSなどでシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次