ブームを生み出すのに欠かせない「誰でも参加できる敷居の低さ」|Daily Stock #5

どうも、でりおてんちょーです。

今日のDaily Stockは、ブームを生み出すのに欠かせない「誰でも参加できる敷居の低さ」についての話です。


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最近、BTCが日本円建てで最高値を更新し、価格面では盛り上がりを見せているものの、クリプト市場全体としては人が増えていないと感じている。

2021年のバブルの際には、クリプトに触れていない友人から「教えてほしい」と呼び出されることが多かったが、現在ではそのようなことは全くなくなっている。

こういった話を他のクリプトに関わっている人々と話しても、皆同じような感想を持っているような印象だ。

その原因について考えた時、2021年の盛り上がりには「NFT」という誰もが取っ付きやすいテーマがあったように感じる。そして、NFTがあれほど流行った背景には、クリエイターやイラストレーターといったそれまでクリプトに触れていなかった層が参入できる「敷居の低さ」があったのではないかと考えている。

出典:https://opensea.io/blog/articles/introducing-the-collection-manager

もし、NFTを構築するために、Solidityを0から書いて、Hardhatを使ってコントラクトをデプロイする必要があったならば、あそこまでのブームにはならなかっただろう。

誰もがOpenSeaのストアフロントなどを用いて、ノーコードで写真を掲載するだけでNFTを発行できる手軽さと、そこから得られる確かな収益があったからこそ、多くの人々を魅了し、業界の外の人々まで巻き込みカルチャーに昇華されたのだと思う。

これを裏付ける話として、ビートたけしさんが漫才業界について同じようなことを言及していた。

世の中に漫才師が5組かそこらしかいない状態で「漫才で日本一になる!」なんて息巻いたところで、そんなものは商売になんてなりゃしない。「オレも漫才師になりたい」と思うやつが100組、1000組、1万組とひしめく戦いが始まれば、そのなかで上澄みに躍り出たやつがスターになれる。だからブームってのが必要なんだ。才能さえあれば成功できるわけじゃない。誰もが「オレもなれる」と思って参入してニセモノがいっぱい増えると、ブームは起きる。ブームを支えているのは、実はなんだかよくわからないニセモノなんだ。超本格派の本物の才能をもっている人間が一人いても、それでは商売にならない。母数が多いからこそ、本物の素晴らしさがわかる。そうして淘汰が始まる。

出典:北野武が教える「伝統の因数分解」と、売れるために必要な「本当の才能」

また、日本におけるHIPHOP(日本語ラップ)の流行も同じ構図がある。

Zeebraさんが「高校生RAP選手権」や「フリースタイルダンジョン」を通じて『ラップバトル』というスタイルを確立し、リスナーが「俺もできるかも」「私もやってみたい」と思うようになり、日本におけるラップバトル市場は、現在のような大きなマーケットになった。

ラップバトルを入り口に参入した多くの人は、それまでHIPHOPを聴いていなかった層であり、そうした人々が少しずつバトルだけでなく音源も聴くようになったことで、市場全体の人が増え、パイが大きくなり、市場が拡大した。最近では、元アイドルや芸人、格闘技選手などがラップバトルを行うなど、明らかに裾野が広がっている印象がある。

これと同じ理屈で、ブレイキングダウンも同様に、格闘技界の裾野を広げることに大きく貢献している。

かつてK-1は成功を収めたが、視聴率の低下やスポンサーの減少に苦しんだ。「格闘技を本当に好きな人たち」だけにリーチしているだけでは、ビジネスとして成り立たせるのは難しいといった課題を浮き彫りにしたと言われている。

それに対して、ブレイキングダウンのように、ストーリー性のあるケンカ自慢達が試合をする様子を流し続け、それを見た人のうち何割かが最終的に「格闘技の凄さ」に気づき、RIZINやK-1にも興味を持って、試合を見るようになった。

このように、漫才やHIPHOP、格闘技などの既存産業においても、「ブームを巻き起こすためには、まずは何よりも母数を増やすことが大事」という教訓があるが、これが現在のクリプト業界には足りていないのかもしれない。

RWAやZK, DePINなどは流行りそうと言われているものの、一般層からすると敷居が高い。お金もかかり、調べるコストも高い。

そんな中で、一つ可能性があると個人的に感じているのは、「ミームコイン」だ。

例えば、最近ではSolanaチェーンでミームコインを発行できるPump.funの収益が3,000万ドルを超えたり、著名人の参入も注目を集めるようになっている。特に、元アメリカ大統領ドナルド・トランプの有罪判決後、政治家に関連するミームコインが再び活発に取引されている。

これは、2021年にNFTが一大ブームになったのと同じように、思想がいけているか否かで判断できるという分かりやすさ、誰でもミームコインを発行できる敷居の低さが主な要因だと思う。実際、著名人が自分のミームコインを発行する事例も増えてきている。

思想さえあれば、それに金銭的な価値を持たせて流通させることができる。そこには分散性やブロックチェーンのコアな技術といった文脈はほとんど無いが、そのくらい分かりやすくて敷居が低いものが、今のクリプト業界には求められているのも事実だろう。

(中略)そんなことを妄想しながら漫才をやったり映画をつくったりしていたら、やることがいくらでもあって、おもしろくてしょうがない。数学で分解してみると、俳句や短歌がもつ時代を超えた素晴らしさに気づかされる。長く続く本質的なよさが伝統のなかにあるということを気づくには、今までそれに参加できなかった人たちが参加することだと思うね。伝統の上にあぐらをかいている人たちは「自分たちを守る」ために楯として伝統を言い訳にしているだけ。大事なのは、誰もが気づかなかったことに新しい感覚が導入されることだよ。「伝統には新しい血が必要」と言うけど、そこに入れなかった一般の人のほうが第三者的に見ているから、よく見えているんだ。

出典:北野武が教える「伝統の因数分解」と、売れるために必要な「本当の才能」

そして、有象無象のミームコインが乱立してしばらくした後に焼け野原となり、本物と呼ばれるミームコインがいくつか生き残り、多くの人から認められるカルチャーとして定着するのかもしれない。今のDogecoinがそうであるように。

クリプト業界が再びブームを迎える日を楽しみにしつつ、時には過去の知識や常識を手放して、新たな可能性を模索し続けていきたい。

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