【全文無料】Crypto×AI時代におけるモート|Daily Stock #134

どうも、でりおてんちょーです。

今日のDaily Stockは、Crypto×AI時代におけるモートについての話です。

以前、「web3における競争優位性|Daily Stock #17」という記事で、web3の登場が競争と協力の枠組みを根本的に変えた結果、企業には構造ベースまで立ち返った新たな視点と戦略が求められるようになったという内容について記した。

例えば、従来のweb2プラットフォームでは、ソフトウェアやネットワークデータの独占が競争優位の源泉となってきたため、X(旧Twitter)のような企業は、プロダクトのコードベースやユーザーデータといった情報を閉鎖的に保つことで競争者の参入を阻止してきたといえる。

一方、web3ではオープンソースコードやパブリックブロックチェーン上での開発が一般的であるため、新規参入者が既存のユーザーネットワークやプロトコルを容易に活用できる状況が生まれている。この結果、競争の障壁が低くなり、競争の激化が避けられない構造となっている点が、web2とweb3の大きな違いである。

こうした特性により、クリプトではモートを築くことが難しいとも言われており、差別化の要素としては「コンポーザビリティ」や「コミュニティ」、「流動性」、「時間」などが挙げられると言える。

出典:https://ethereumnavi.com/2024/06/25/daily-stock-17/

そうした状況の中で、最近ではAIの急速な進化に伴い、企業が競争優位性を維持するためのモートの概念が根本的に見直されつつある。例えば、従来のモートは市場シェアや利益率を守るための盤石な基盤とされてきたが、AIの台頭によって多くのモートがその有効性を失い、新たな戦略の必要性が高まっている。

AIの未来には、大きく分けて二つのシナリオが存在すると考えられる。一つは、AIが既存の能力を改良するにとどまり、成長が鈍化するシナリオである。この場合、AIの能力がさらに安価で効率的になることで、既存のタスクや業務が着実に改善される可能性が高いといえる。

もう一つは、AIが自ら改良を重ね、未知の領域に踏み出すシナリオである。この場合、AIが自己改良を通じて非訓練領域の課題を解決し、人間の創造力を超える成果を生み出す可能性が想定される。そして、いずれのシナリオにおいても、AIが産業全体に及ぼす影響は極めて大きく、これまでの競争優位性の構造を根底から揺るがすことになるだろう。

昨年末には、LayerXの福島良典氏が以下の記事で「SaaSは死なないが、AIエージェントの波に乗れないSaaS企業は死ぬ」と予測していたが、それほどまでに生成AIやAIエージェントの登場がもたらす構造変化やモートの有効性は、大きく変わりつつあるのかもしれない。

そして、これはクリプトか否かを問わず、これからの時代はAIの進化によって「従来の強みが次々と無力化される」ことが予想される。具体的には、web2(SaaSなど)においても、web3と同様に優れたプロダクトを持つこと自体が競争優位性としての機能を失う可能性が高いと考えられる。

というのも、AIを活用すれば他社がプロダクトを模倣し、それを短期間で改良することが可能になるからである。また、大規模なR&Dチームを有する企業であっても、その機動力の低下により少人数で効率的に動くチームに追い抜かれるリスクを内包している。

さらに、AIによる高品質なカスタマーサポートやUI/UXの模倣によって、これらの要素が持つ優位性は著しく低下すると考えられるため、もはや持続可能なモートとして成立し得ないとも言える。

出典:https://comemo.nikkei.com/n/n1b3453d26fab

そして、昨今の急速なAIの進化に伴い、短期的な競争優位性を確保する手段として注目されているのが「AIの早期導入と実践」だが、これらは一時的な優位性をもたらすに過ぎないと同時に、いずれ他社も追随することから、その効果は限定的であると考えられる。

また、AIによるアウトプットを活用した生産性の向上や効率的な業務の体系化といった要素も短期的なモートとしては有効であるが、長期的には標準化される可能性が高いと考えられる。特に記事コンテンツに関しては、AIが生成したような記事が氾濫している現状もあり、むしろ人間らしい文章の方が好まれる傾向があるようにも感じられる。

一方で、AI時代においても有効性を保つと考えられるモートが存在すると言える。それは物理的な資源や規制、データといった要素である。例えば、不動産や希少資源のような有限な物理的資源へのアクセスは、AIの進化が及びにくい分野であり、依然として強力なモートとして機能するだろう。また、規制を味方につけることは、新規参入者に対する高い障壁を形成する要因となる。

前者に関しては、RWA領域において多数の実験的な取り組みが見られる状況で、また後者に関しては、トランプ大統領の就任による規制緩和への期待を背景に、アメリカを中心にクリプト事業を展開しようとする事業者が増加している状況がうかがえる。

そして、Crypto×AI時代において相性が良いと考えられるのは「データ領域」であり、排他的かつ価値のあるデータを保有する企業は、他社との差別化を図る上で有利な立場に立つと考えられる。特に、AIモデルの訓練に利用できない独自データを持つ企業は、持続的な競争優位性を確保しやすいと言えるだろう。

分かりやすい例として、DePINはトークンインセンティブを活用してボトムアップでデータを蓄積し、それをtoBなどで販売することで収益を上げようとしているが、このような仕組みからDePINは差別化要素が高い領域であると考えられる。

また、ニュースレターやメディア事業者においても、他のメディアがキャッチアップできないデータに早期にアクセスできることは大きな差別化要素となり得る。この取り組みを企業のオウンドメディアで実践することで、クリプト企業としてのブランディングに繋がることも期待できることは、以下の記事で記した通りだ。

このように、Crypto×AI時代においてモートを維持・強化するためには、既存の優位性を見直しつつ、新たな強みを築く必要があると言える。企業は、自社のモートがAIの進化に耐え得るものであるかを慎重に評価し、不必要な要素を迅速に見直すとともに、AIの活用や業務の体系化を進め、変化に迅速に対応できる柔軟性を持つことが求められている。

加えて、未来を予測する能力や迅速な意思決定の重要性が増している現状を踏まえると、これらの能力を磨くことでAIがもたらす変化の波を先取りし、新たな機会を創出することが可能になると考えられる。

弊社でも、近頃「他のweb3企業が書かないような記事を書いてブランディングを支援してほしい」とか、「web3領域の有益情報をリサーチし、データベース構築を手伝ってほしい」などといった相談が徐々に増加しており、このような課題意識は業界全体で高まりつつあるのかもしれないとの実感を抱いている。

ということで、リサーチや記事執筆代行に関心をお持ちの企業様がいらっしゃいましたら、XのDMまたはお問い合わせページよりお気軽にご相談いただけますと幸いです。

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