今回は解説記事として、NFT界隈で今話題の「ブリッジ」について書いていきたいと思います。
ブリッジ・クロスチェーンというワードは、もともとNFTよりもDeFiの文脈で用いられることが多かった印象ですが、最近ではNFT文脈でのブリッジについて議論される場が増えてきたため、今回は「NFTにおけるブリッジ」に焦点を当てます。
では早速、この記事の構成について説明します。
まずは、「NFT」というものはいろんな独立した世界(チェーン)で発行することが可能であることを説明し、またどんな独立した世界が存在するかについて解説していきます。
次に、独立した世界同士を繋げるための「ブリッジ」という仕組み・カラクリについて解説します。
最後に、将来的に各世界にブリッジ機能が備ることを見据えて、今あなたがNFTを購入する際に知っておくべきこと・留意すべきことについて私見を混えながら解説していき、NFTやブリッジについての理解を深めていただくことを目指します。
本記事が、皆さんの「NFT」や「ブリッジ」への理解の一助となりましたら幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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NFTを発行できるブロックチェーン
- Ethereum
- Polygon
- Binance Smart Chain (BSC)
- Solana
- LINE Blockchain
- FLOW
- Tezos
- WAX
- VeVe
- ICP
- Fantom
- Avalanche
- Ronin
- Immutable X
- Counterparty
- Monaparty
- Harmony
- Terra
- IOST
- …etc
さすがに多すぎて、全てを箇条書きしながら解説していたら筆者の手が腱鞘炎を起こしてしまいそうなレベルです。(腱鞘炎では済まないかも)
ということで、今回はこの中から5つだけピックアップして、特徴などについて軽く解説していきます。
Ethereum
言わずと知れたpublicブロックチェーンですね。
スマートコントラクトの機能を備えた分散型アプリケーションプラットフォームで、DeFiやNFTなどさまざまな用途で活用されています。
NFTでは、2017年はじめにEthereumチェーンに初めて記録されたERC721規格ではないNFT「CryptoPunks」が誕生し、同年11月にはERC721規格として初のNFT「CryptoKitties」がリリースされました。
また、Ethereumは
- Bored Ape Yacht Club(BAYC)のようなコレクタブルNFT
- Loot(for Adventures)のような「ボトムアップ型NFT」
が誕生するなど、現在も主流NFTの発行元チェーンとして活用されています。
しかしながら、現在のEthereumチェーンがNFTの発行・販売をおこなうにあたり最適かと言われると、人や立場によっては必ずしも最適ではありません。
まず、現在のEthereumチェーンの課題の一つに「gas代高騰の問題」があります。
この課題が原因となり、新しくNFTを発行・販売したいと思う人にとっては、少々ハードルが高くなっています。
仮想通貨マンガ 第31話「NFTの罠」
— ciana (@coinciana) October 11, 2021
大NFT時代にちゃっかりイラストを出品したカレン。まさかのオファーが入るも…?! pic.twitter.com/OHp0v8L52Z
そしてもう一つの課題は、「Ethereumチェーンで発行されたNFTは環境に悪いのではないか?」という問題です。
最近では、著名人・有名IP(著作権)がNFTに参入しはじめていますが、既存ファンなどの反対によって中止・または声明文を出すといった事態になったりしています。
昨日、NFTに関する新しい発表をさせていただきましたところ、世界中から様々な反響を頂く事となりました。これを受けまして、レーシングミクをNFTとして提供する事を中止する判断をいたしました。ご意見をいただいた皆様にはあつくお礼申し上げます。#fightgsr #初音ミク #レーシングミク
— GSR公式アカウント (@goodsmileracing) September 17, 2021
— さいとう なおき🍀 (@_NaokiSaito) October 12, 2021
これに関しては思うところがあるものの、本題と逸れてしまうためまた別の機会にでもお話しできればと思います。
そして、以上のような背景と現状課題があり、gas代高騰・環境破壊問題のソリューションとして、
- サイドチェーン
- 独自ブロックチェーン
によるNFT発行の流れが、近ごろ加速してきています。
Polygon
Polygonは、Ethereumとの互換性をもったサイドチェーンです。
Polygon上で稼働しているスマートコントラクトも、Ethereumと同じくSolidityという言語で書かれています。
Ethereumと異なる点としては、PolygonはコンセンサスアルゴリズムがPoWではなくPoSです。
このあたりの詳細は長くなるので省きますが、要は環境破壊の原因と一部で言われている「消費電力量」に関して、PoSモデルの方が圧倒的に少なく済むのです。(ゆえに「エコ」などと言われています)
また、gas代に関してもPolygonであれば現時点で1円未満で済むため、
- お試しでNFTをつくってみたい人
- 安価なNFTを販売したい人
- コントラクトをメインネットにデプロイしてみたい人
にとっては、使い勝手が良いとされています。
これらの前提があって、一部では
NFTはPolygonチェーンで安くエコに発行して、後からEthereumチェーンにブリッジしたら完璧だね
と言われていますが、これが本記事のメインテーマなので後ほど詳しく解説していきます。
Binance Smart Chain (BSC)
BSCは、2017年に中国で設立された暗号資産取引所「Binance」がつくったブロックチェーンです。
Binance Chainとは異なりEVM互換性があるため、Ethereum上で開発されたアプリケーションを簡単に移植可能です。
BSCはDeFiの文脈で話題になったのでご存知の方も多いと思いますが、このブロックチェーン上でもNFTを発行することも可能です。
EthereumやPolygonで発行されたNFTは「OpenSea」で表示できますが、BSCでは「FEATURED」を利用するようです。
ちなみに、BSCのコンセンサスアルゴリズムはPoSAというもので、21のValidator(Binance以外のチームもValidatorになっている)によって合意形成がおこなわれています。
そのため、高速かつ安価に取引をおこなうことが可能なチェーンなので、「エコかどうか」の文脈ではエコであり、ユーザー体験も優れているチェーンです。
Solana
SolanaはPolygonの後に出てきた独自ブロックチェーンで、こちらも手数料が安いかつ高速な取引を実現しています。
NFTの文脈では、暗号資産取引所「FTX」がNFTマーケットプレイスを立ち上げるなど、活発な動きが見られています。
取引所「FTX」
— miin | NFT情報コレクター (@NftPinuts) September 6, 2021
NFTマーケットをスタート
💎ETH/solana対応
💎最初のオークションは公式による「TEST」の文字
💎開始から8時間で1,000を超える出品
💎外部からのNFT持込販売、持出しも可能になる予定
💎現在は米国居住者のみに開放https://t.co/9O9Iu0UdrF pic.twitter.com/oxTyT5BKP0
ちなみにSolanaも独立した世界なので、Solana版のOpenSea「solsea」というものが存在します。
こちらを利用すれば、OpenSea同様スマートコントラクトを書かずとも、簡単にSolanaチェーン上でNFTを発行することが可能です。
また最近では、「Ethereum <=> Solana」でNFTのブリッジが可能なWormholeも発表されました。
ソラナとイーサリアムチェーン間でNFTを送信可能に🔥
— miin | NFT情報コレクター (@NftPinuts) September 23, 2021
☁Wormhole(ワームホール)が、SOLとETHでの交換ツールをリリース
☁送信先のチェーンで代替トークン(wrapped token)を発行する。逆光時にはBURNして同一性を保つ仕組み。
☁BSC、Teraにも対応予定
🇯🇵COINPOSThttps://t.co/Xk3cJKsR89
FLOW
冒頭でも出てきたCryptoKittiesというNFTを開発した「DapperLabs」による、『エンターテインメント特化した』ブロックチェーンです。
「Flow所得」「FlowVerse」というワードがTwitterでよく見られますが、NBA Top ShotというNFTブームのきっかけとなったNFTも、Flowブロックチェーン上で発行されています。
また、Flowブロックチェーンを開発したDapperLabsも、
- Ethereumのgas代の高さ
- スケーラビリティに関する問題
などの課題から、自分たちで独自のブロックチェーンを開発したという背景があります。
NFTを異世界(他のチェーン)に持っていく方法
以上のように、各ブロックチェーン上に異なる仕様のNFTが多数存在するわけですが、これらをチェーン同士で完全移行(ワープ)することは可能なのでしょうか?
先に結論から言うと、現時点では不可能です。
これを理解するために、まずはNFTにおけるブリッジの仕組み・カラクリについて解説していきたいと思います。
異なるブロックチェーン間のブリッジについてはいくつか型が存在するのですが、今回は最も一般的なパターンについてピックアップします。
まず、Ethereumチェーンで発行されたNFT「X」があるとします。
これを例えばSolanaチェーンに持っていきたいとした場合、NFT「X」をブリッジコントラクトという箱に収めておく(ロックする)必要があります。
それが確認できたら、Solanaチェーン上にNFT「X’」というコピーNFTを生成するというのが、ブリッジの基本的な仕組みです。
- チェーンAのブリッジコントラクトにトークンが送られてロックされる
- チェーンB側で上記のロックを確認したら、同等のトークンをチェーンB上に生成する
というカラクリですね。
これはSolanaチェーンに限らず他のチェーンでも同じ話で、それぞれ指定の箱に入れたのち、各チェーンにコピーNFTを生成します。
逆に、元のNFT「X」に戻したくなった場合は、逆の手順を踏めば良いというわけです。
- チェーンB上に生成したNFT「X’」を償還する
- チェーンB側で上記の償還が確認されたら、チェーンAのブリッジコントラクトにロックされたNFT「X」が返却される
つまり簡潔にまとめると、現時点でNFTにおけるブリッジの仕組みは、ドラ○もんの「どこでもドア」みたいなイメージではないということです。
NFT「X」はどこか別の世界(チェーン)にいきたい場合、箱(ブリッジコントラクト)の中にロックされ、NFT「X’」が戻ってくるまで閉じ込められたままになります。
そしてここで重要なのは、NFT「X’」はロックされたNFT「X」の情報を継承しているということです。
NFTのブリッジにあたり知っておくべきこと
先程のイラストを再掲します。
このイラストの黄緑色の領域は、NFT「X」発行元のチェーン(上イラストではEthereumチェーン)を表しています。
NFT「X」発行元のチェーンそのものが停止してしまうと、当然ながらブリッジコントラクトの情報も、内部のNFT「X」の情報も参照できなくなります。
つまりこの場合、誰が発行したかという履歴が追えないNFTに意味があるのか?という話になってきます。
そういった意味でブリッジは、○○○○チェーンの永続性に依存するため、まずはそのチェーンの「持続可能性」を考慮する必要がありますね。
次に、ブリッジコントラクトの「脆弱性」も考慮する必要がありそうです。
ハッカーからすると、ブリッジコントラクトにはNFTが大量に貯まった宝の山(高額なNFTがあればの話)なので、攻撃対象になりそうだと想像できますね。
しかし個人的には、高額な価格で取引されるNFTはブリッジコントラクトに預けられない可能性が高いと思っているので、これに関してはあまり問題視しなくても良さそうに感じています。
とはいえ、念には念をということで、ユーザー側の防御策としては
- ブリッジコントラクトのソースコードを読んでみる
- 出たばかりのコントラクトはしばらく様子見する
- 高額なNFTはブリッジしない
などが挙げられるでしょう。
NFTは「どこで発行されたか」が重要
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まとめ
本記事では、「NFTのブリッジ」に焦点を当てて、ブリッジの仕組みやNFT購入の際に留意すべきことなどについて、解説しました。
少し難しい部分もあったかと思いますが、NFTにおけるブリッジについてみなさんの理解が少しでも深まったのであれば幸いです。
今後、
- Ethereum2.0とEthereum1.0がマージされる
- Rollupなどが進展していく
ことによって話が変わってくる可能性は十分に考えられますが、現状の認識として理解しておいて損はないと思っています。
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