今回は、クリプトコアな人々からの注目度が急上昇しているオンチェーン3D世界における土地アートNFTプロジェクト「Terraforms」について紹介・解説していきたいと思います。
Terraformsは、いわゆるメタバースとも言える壮大なクリプトプロジェクトでありつつも、さらにその構成要素である各NFTがダイナミック(動的)フルオンチェーンNFTということで、マニアの間だけに留まらず多くの方から注目されるプロジェクトになってきています。
NFTの総発行数は10,000個近くありつつも、OpenSeaのフロアプライスは執筆時点で0.51ETHであり、さらにローンチ以来高値をキープし続けている点は注目に値する一つの要素です。
なぜ、ここまでコアで一般受けしづらそうなNFTプロジェクトが長きにわたりフロアプライスを落とさずにいられるのか、そして最近になって一層クリプトコアな人々からの注目を集めるようになってきたのかについて、本記事では深掘りして解説して参りたいと思います。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、「Terraforms」というNFTプロジェクトの概要について、それぞれの注目ポイントを詳しく掘り下げながら簡潔に解説していきたいと思います。
続いて、本プロジェクトを深く理解する上で欠かせない「NFTのプロパティ」について、深掘りして詳しく解説して参ります。
最後に、本プロジェクトの注目ポイント・面白いポイントについて、いくつかピックアップして解説して参ります。
本記事が、「Terraforms」の概要や注目ポイント、クリプトコアな人々から注目されるNFTプロジェクト事例などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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Terraformsとは
概要
Terraformsは、0x113dとxaltgeistという2人の匿名開発者からなる「Mathcastles」スタジオによりローンチされたNFTプロジェクトです。
TerraformsというNFTプロジェクトは、合計11,000のNFTで構成されており、開発者は「ダイナミック(動的)に生成されるオンチェーン3D世界における土地アート」であることを謳っています。
Terraformsというのは、各NFT(以下「区画NFT」と呼称)の集合体として構成される所謂メタバース的な位置付けのものであり、上写真のように1階〜20階まで存在する菱形の集合体のことを指しています。
各区画NFTは、20階建てのTerraforms上の土地の「1区画」を表しており、各区画NFTのアートワークは文字セットが描かれたアニメーションアートです。
また、Terraformsは個々の区画NFTという作品として鑑賞するだけでなく、分数化された1つの見えないアート作品として捉えることもできます。
各区画NFTには、内部的な特徴とともに構造的なメタデータが付与されており、例えば「Level 11 at {26, 15}」というように、名前にその情報が表示されています。
このデータにより各区画NFTは、非公式にhypercastle(ハイパーキャッスル)と呼ばれている、より大きな3D構造の一部として位置づけられます。
ハイパーキャッスルは垂直方向に20段あり、上下で1段ずつ狭くなっていて、13段目と14段目が最も幅が広くなっています。
ここで重要なことは、各区画NFTにはその内部自体に、標高に関する構造情報が含まれていることです。
この構造情報は、各区画NFTのスマートコントラクトにエンコードされているため、関数をオンチェーンで呼び出すことで参照・再現することができます。
Terraformsは、「目に見えるレイヤー」「目に見えないレイヤー」を持つアート作品であり、なおかつそれを誰もが読み取り操作することを可能にし、さらにパブリックでパーミッションレスなデータベースに保存されているという点において、従来のgenerativeアートとはまったく新しい魅力的なものであると筆者は捉えています。
Ethereumブロックチェーンという技術の芸術的な可能性を深く追求した、まさにクリプトネイティブなアート作品であると感じます。
ちなみに、public mintは2021年12月17日に、1つ0.16ETHの価格でおこなわれました。
11,104個のうち9,905個がmintされ、残りは運営チームがmintできる体制で現在も保管されています。
ロードマップ
本プロジェクトには、明確な将来的計画/ロードマップなどは存在しません。
あくまで将来の可能性であることを前提とした上で、以下の事項に取り組んでいくのではないかと推測されています。
- 実験用にすべてのコピーを備えたTestnetまたは類似の構成物の製作
- Plague ChromaとDaydreamモードを改善するための、反転可能かつオプションのコントラクトアップグレード(主にビジュアルの改善)
- ファーストパーティツールの製作
- “MacPaint meets Game Boy “ドローイングツール
- 区画用アニメーションGIFエクスポーター
- @threepwaveのCrypts and Cavernsとのコラボの可能性
- コラボレーション・統合のためのファーストパーティ製の拡張レジストリの製作
- THREEやUnrealを使ったインタラクティブな3Dエクスプロレーションの製作
ただし同時に、コミュニティ発のプロダクトが多数出現している点は注目に値します。
具体的には、コミュニティDAOからゴルフゲームに至るまで様々な分野に関する活発な会話が交わされ、可視化やツーリングの分野でも常に開発がおこなわれています。
例えばこちらのデモ動画は、とあるコミュニティメンバーによる、本物の区画を使った3Dの可能性を探る素晴らしい作品です。
コミュニティにより開発されたプロダクト一覧はこちら
- Token Visualizer (official)
- EnterDream (0x0112#0654)
- Terraforms Token SEEDs (astrostl#4756)
- Terraforms Worksheet (BoomBoomNFT#1897)
- Terraforms Viewer (davidhao3300#6141)
- Terraform Explorer (el_ranye#4179)
- Terraforms Explorer (m3tatr0n#7957)
- Terra (demo) (PlayPeng909#3739)
- Terra V2 (demo) (PlayPeng909#3739)
- Terra 3D (PlayPeng909#3739)
- Terra Minecraft (PlayPeng909#3739)
- Terra Plane (PlayPeng909#3739)
- Terra Revert (PlayPeng909#3739)
- Terra Spine (Keystones) (PlayPeng909#3739)
- TerraCrawler (demo) (PlayPeng909#3739)
- Daydreaming (RueLibbe#4046)
- Terraforms Builder Resources (UronSol#0001)
- Terraforms Full Metadata (UronSol#0001)
- Terraforms Subgraph (UronSol#0001)
- Terraforms Supplemental (UronSol#0001)
- Seed Sniper (yoshi#5572)
NFTのプロパティについて深掘り
各区画NFTは、以下6種類のプロパティを含んでいます。
- Biome
- Chroma
- Mode
- X Coordinate
- Y Coordinate
- Zone
また、Levelsという欄に「???」ならびに「Level(階層)」というパラメータも用意されているので、こちらも含めて計8つを説明しやすいものから順に解説してまいります。
Level(階層)
TerraformsというNFT集合体が、上写真の一番左部のような菱形の3D構造体を指しているのは先述のとおりですが、「Level」はその標高を表すパラメータです。
Levelは1〜20まで存在し、また菱形という形状であることからそれぞれのLevelごとに配置可能な区画数が異なるので、区画がたくさんあるところとほとんどないところが存在します。
Level 13, 14に区画が、集中して多く存在していることが見て取れます。
これまでの市場では、明らかに区画の少ないレベルに関心が示されているそうで、特に上位(18〜20)と下位(1〜3)は高値で売買される傾向にあるそうです。
X/Y Coordinate
X/Y CoordinateはX/Y座標のことであり、二次元の位置を指し示すパラメータです。
レベル(階層)が大きくなったり小さくなったりすると、レベル(階層)ごとに利用可能な区画の量が変化し、13階と14階で最も幅が広くなっているので、利用可能なX/Y座標が最も大きくなります。
各レベルは(X0/Y0)から始まり、その大きさに応じて (X0/Y1(, (X1/Y0), (X1/Y1)… と進んでいきます。
Biome
Biomeは文字セットのことであり、アニメーションのグリッドとなるテキスト文字や図形を参照するセットが92種類も存在します。
文字セットの例としては、A-Z、1-9、FUNKY charactersなどがあります。
各区画となるNFTはそれぞれimage部分がSVGファイルとなっているため、画像部分をコピーしてTwitterなどにペーストしてみると、さまざまな文字セットが使用されていることが確認できます。
Chroma
Chromaはアニメーションの循環速度を制御するためのものであり、色変化速度を表すパラメータです。
Zone
Zoneは区画が表示できる色調のことで、明るいもの/暗いもの/多様なもの/モノトーンなどがあり、全部でカラーパレットに対応する75種類のZoneが存在します。
「Biome」「Chroma」「Zone」を組み合わせることで、コレクションに対して奥行きと変化を与え、全体としてTerraformsに魅力的な多様性を与えています。
???
???の値が高いほど、区画内に文字を循環するセルが多くなる可能性が高くなります。
???の値が比較的低い区画
???の値が比較的高い区画
Mode(モード)
各区画には「モード」という概念が存在します。
(これが非常にややこしいのですが重要なので、説明が長くなります。)
モードはその性質を定義し、その能力(何ができる状態か/誰がそれを実現できるか)を定義します。
モードの簡易な図解は上写真の通りですが、以下にそれぞれのモードについて順番に解説を添えて参ります。
Terrainモード
Terrainモードは最も一般的なモードであり、デフォルト(mint時)のモードです。
Terrainモードでは、区画が誕生した際にコードで刻印されたアートアニメーション(Biome・Chroma・Zoneに応じたもの)を表示するだけであることから「natural art」と呼ばれており、要は「ただ観るためだけのモード」になります。
区画に描画するためには、後述するDaydreamモードに移行させる必要があります。
ちなみに、TerrainモードからDaydreamモードに移行するためには、スマートコントラクトのenterDream関数をEtherscanから直コンして呼び出す必要があります。
Daydreamモード
Daydreamモードは「空白」(繰り返しのBiome文字を使用)として始まり、新しいアートでプログラム(描画)することができるようになります。
描画するために使用する公式のトークンビジュアライザー(数字の「1」を自分のものに変えてください)には、
- 「e」キー => 消去
- 「q」キー => ブラシサイズ
- 「a」キー => 高さレベル(ブラシストローク中にマッシュしてパターンを作れる)
という大まかな描画ツールが用意されており、これを用いてNFT保有者はプログラム(描画)することができます。
そのままの形式でプログラム(描画)することが難しい場合は、上写真のように専用サイトで先にドット絵制作のようなUI/UXでアートワークを生成し、後から右側のコードをコピペするという選択肢も提供されています。
Terraformモード
「Terraformモード」と先程の「Daydreamモード」は、双方向にモード移行可能となっています。
新しいアートでプログラム(描画)することができる「Daydreamモード」に対して、「Terraformモード」は『描画をブロックチェーンにコミットして他の人が閲覧できるようにする』ためのモードです。
つまり、NFTのアートワークに対して変更を加えるためには初期の「Terrainモード」から「Daydreamモード」に切り替えて編集する必要があり、編集が終わって編集モードからviewモードに切り替えて他の人が見れるようにする際には、「Daydreamモード」から「Terraformモード」に移行させる必要があるのです。
「Daydreamモード」と「Terraformモード」はいつでも双方向に切り替え可能であることから、view/editorモードをいつでも切り替えられるという意味合いになります。
また、NFT保有者が原画(Terrainモード時のもの)に戻したいと思った場合、原画を表示することができるTerra Revertツールを活用することで、原画に近いものを復元することは可能です。
Originモード
詳細は後述しますが、本NFTプロジェクトではTerrainモードのNFTだけが蔓延っていた場合、NFTの集合体であるhypercastle(Terraforms)全体が崩壊してしまうという仕掛けが組み込まれています。
つまり、時間経過ごとに一定数以上のDaydreamモードNFTが存在していることが、本プロジェクトにおけるゲーム存続のルールなのです。
しかし、初期の段階からNFT保有者が積極的に「Terrainモード」から「Daydreamモード」に切り替えるとは(Terrainはデフレするという要素もあり)考えづらいため、運営によってごく一部の区画がDaydreamモードの状態で作成されました。
これが「Origin Daydream」モードと呼ばれ、「Origin Terraform」モードへ変換することができるようになっています。
これらOriginモードのNFTは、プロジェクトの初期サポーターのための特別なmintとして提供されました。
仕様としては、非OriginをOriginにすること(またはその逆)ができず、また機能的にOrigin Daydream/Terraformモードは、他のDaydreamやTerraformモードと変わりません。
以上、NFTのプロパティについて最後に簡潔にまとめます。
- 区画NFTは、Level(階)・X/Y座標に従って、hypercastle(ハイパーキャッスル)のいずれかの位置に配置される
- Zoneの色、Chromaの速度、Biomeの文字セット(それらの???に従ったサイクリングと高さ)を保持している
- Terrainモードならナチュラルアートが表示されるだけ、Daydreamモードならお絵描きができ、Terraformモードならコードが描かれたアートが表示される
- Terrainモードは一度Daydreamモードに設定すると、二度とTerrainモードに設定し直すことはできない
- DaydreamモードとTerraformモードモードは自由に行き来することができる
- 他のDaydreamモードやTerraformモードの区画と名前だけが異なるOriginモード区画もいくつか存在する
Terraformsの注目/面白ポイント
この続き: 2,084文字 / 画像8枚
まとめ
今回は、クリプトコアな人々からの注目度が急上昇しているオンチェーン3D世界における土地アートNFTプロジェクト「Terraforms」について紹介・解説しました。
本記事が、「Terraforms」の概要や注目ポイント、クリプトコアな人々から注目されるNFTプロジェクト事例などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
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— イーサリアムnavi (@ethereumnavi) July 9, 2022
今回は、近頃クリプトコア層からの注目が高まっていると噂のNFTプロジェクト「Terraforms by Mathcastles」について解説しました✍️
ダイナミックフルオンチェーン土地NFTを3D空間で活用するという、マニアも大興奮の新進気鋭なプロジェクトです🌍https://t.co/tRSN2byOaa
A tremendous guide to Terraforms in Japanese
— mathcastles (@mathcastles) July 9, 2022
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