今回は、Starknet上に構築されているオンチェーンストラテジーMMOゲーム「Influence」について紹介・解説していきたいと思います。
さて、近頃はStarknetエコシステムを中心として『オンチェーンゲーム』の開発が加速しているように感じていますが、今回取り上げるInfluenceもその中心的プロジェクトとして有名です。
なぜこのゲームが面白いのか、そしてオンチェーンで体現することでどういった波及効果などが見込めるのかなど、筆者の私見を交えながらお伝えしていきたいと思います。
ということで本記事では、Starknetのオンチェーンゲーム「Influence」についてご紹介することで、本プロジェクトの概要ならびに注目ポイントなどについて紹介・解説しながら、Starknetにおけるオンチェーンゲーム概況について触れていきたいと思います。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、本記事のメインテーマであるオンチェーンゲーム「Influence」の実態について、世界観や登場するNFTなどにも触れつつ解説します。
続いて、Influenceがどういったオンチェーンゲームなのかについての理解を深めていただくために、執筆時点でローンチされているテストネット版のゲームをプレイしつつ、そのイメージを掴んでいただくことを目的とします。
最後に、Influenceの発展可能性やStarknetエコシステムでのオンチェーンゲーム開発などについて、筆者の私見を交えながら考察してまいります。
本記事が、Influenceの概要やゲーム内容、Starknetでのオンチェーンゲーム事例などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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「Influence」とは
概要
Influenceは、「”宇宙”をテーマにした、Starknet上に構築されているストラテジーMMOゲーム」です。
この後のストーリー節で後述しますが、『滅びゆく地球から逃亡した世代宇宙船「アルヴァード(Arvad)」に乗って不運な旅を終えた後にたどり着いた「アダリア(Adalia)星系の小惑星」を舞台にした宇宙戦略MMOゲーム』という設定です。
「アダリア小惑星を植民地化し、そこにインフラを構築し、テクノロジーを発見し、戦闘を行う。」
このことによって、『アダリア小惑星帯における自身の影響力(Influence)を拡大しよう』というのが、本ゲームのメインコンセプトとなっています。
プレイヤーは、採掘、建築、貿易、研究、戦闘といった、さまざまな手段で競い合うことになります。
フル3Dモードの三人称視点でやり取りをおこないながら、適切な資源やアイテムを獲得し、それをもとに経済の原動力となる建物や船を作成・操作するなど、単独または他のプレイヤーと協力しながら目標の達成を目指していくというゲーム性です。
ちなみに、Influenceは基本的にはfree to playの(無料で遊べる)ゲームですが、プレイヤーは『アダリア』にある25万個の小惑星NFT(上写真左側の小さい光の数々)を購入したり、保有することが可能です。
こちらは後ほど「実際にゲームを触ってみよう」章で一部実践してみます。
また、ゲームの舞台となっているアダリア星系の小惑星帯は、『player-owned(FT/NFTにより保有可能)なオープンエコノミー』であると同時に、このような複雑なMMO戦略ゲームがフルオンチェーンで構築されている点も、注目ポイントの一つであると筆者は考えています。
ストーリー
本ゲームのストーリーや世界観については、上部掲載の2分間の動画をご覧いただくと非常に分かりやすいかと思います。
なお、動画を観るのが億劫だという方向けに、筆者の解釈で本ゲームのストーリーを記載しておきますので、ご参考ください。
私たちの祖先は、滅亡していく地球から逃れて、より良い生活を送りたいと考えていた。彼らは、14光年離れた居住可能な太陽系外の惑星へと向かうため、世代宇宙船『Arvad』に乗って地球からの逃亡を図った。そして150年後、当初求めていた目的地ではないものの、新しい居住地である「アダリア」に到着した。その後、世代宇宙船『Arvad』を解体し、鉱山や製油所、工場などを開発したことにより、「アダリア」での新しい生活が可能に見えるようになった。しかし、輝く光には必ず影がつきもの。祖先たちは、羨望や貪欲、冷酷さまでを地球に置いてくることはできなかったのだ。もしかすると近いうちに、「アダリア」で紛争が起こるのではないかと懸念される。
各主要なNFTについて
Asteroids(小惑星)
Influenceでは、Asteroids(小惑星)を土地NFTとして表現しており、プレイヤーが保有できる形式を採用しています。(以下「小惑星NFT」と記載)
すべての小惑星NFTは、それぞれその表面下に独自の組成を持っていることから「資源を採掘」することができるのですが、これがInfluence経済の基盤となる重要なアイテムとなります。
ここではその全てを具体的に記載はしませんが、大まかなゲームの流れとしては以下になります。
- プレイヤーは小惑星NFTを保有する
- エキストラクタ(抽出器)を使用して、小惑星NFTから原料および未精製の材料を抽出する
- ②を用いて、精製所や工場を使用して新しいアイテムを作成し、ゲーム内で使用または二次流通マーケットなどで取引する
また、小惑星NFTの総発行数量は250,000個ですが、執筆時点でmintされているのは11,143個のみです。
Crew(乗組員)
乗組員はゲーム内のキャラクターであり、以下5つのクラス(≒職業)のいずれかを持ちます。
- Pilot(パイロット)
- Merchant(商人)
- Engineer(エンジニア)
- Miner(マイナー)
- Scientist(科学者)
また、以下3つのいずれかの属性をもち、OpenSeaでの価格は上から順に高くなっています。
- Citizen(市民)
- 6,771体(※執筆時点での数量)
- Specialist(専門家)
- 1,393体(※執筆時点での数量)
- Leadership(リーダー)
- 13体(※執筆時点での数量)
各クラス(≒職業)は、それぞれ独自のスキルとブーストを提供することから、自身の小惑星のメンバーにどのクラス(≒職業)のCrew(乗組員)を配置するかなどが、戦略的要素となります。
Ships(宇宙船)
宇宙船は、小惑星帯を移動するための鍵となるアイテムです。
前提として、今後の予定でExploitation(収奪/開拓)という期間が設けられることになっており、宇宙船はそのとき「他人が保有する惑星に移動したりする際に使用されるもの」となります。
宇宙船を使えば、近隣の小惑星や遠方の目的地まで飛行計画を立て、資源取引や戦闘をおこなうことが可能になります。
その他にも、SWAYというPlay-to-Earnの報酬となるコインがエコシステムに組み込まれているなど面白い要素がたくさんありますが、長くなってしまうので今回は割愛します。トークンエコノミクスに関心がある方はこちらをご参考ください。
また、Influenceでは現実空間における軌道力学や燃料消費システムを採用しており、それらをStarknet上にCairo言語を用いて実装している点も、一つ大きな注目ポイントであると考えられます。
実際にゲームを触ってみよう
ゲームの内容そのものに対して関心がないという方は、次章「筆者の論考・考察」まで読み飛ばしていただいて結構です。
なお冒頭で述べた通り、執筆時点においてInfluenceはメインネットとテストネットの両方で利用できますが、ゲームがまだ開発中であるため機能セットが制限されています。なお今回筆者はPC(Mac)環境で「テストネット」の方をプレイしていきます。
準備
まずは、ゲームプレイ(テストネット)をおこなう前に必要となる、各種ウォレット・テストネットトークンなどを準備していきます。
- Starknetウォレットアカウント
- 今回はArgent Xを使用します(ウォレット開設手順はこちら)。
- Goerli(L2)テストネットトークン
- Starknet Faucetなどから取得してください。
- Goerli FaucetなどからGoerli(L1)テストネットトークンを取得して、L2にブリッジすることも可能です。(こちらは後ほどやります)
ウォレットとテストネットトークンが角男できたら、TestNet Gameから「Launch」ボタンをクリックしましょう。
すると上写真のように、フル3Dモードの三人称視点での宇宙画面が表示されるので、まずは右上にある「Account => Argent X」からウォレットを接続します。
ウォレット接続が完了したら「Login」ボタンが表示されるので、クリックしてSignしましょう。
小惑星NFTを購入する
執筆時点ではテストネット環境における「小惑星NFTのmint」が終了しているため、二次流通マーケットを通じて購入する必要があります。しかしメインネットではmintの選択肢があるため、今回はmintの手順を説明した後、小惑星NFTをテストネット環境で入手するために二次流通マーケットから購入するという手順で進めていきます。
ゲーム画面下部にある「MAP」タブにカーソルを合わせ、「Filters」をクリックして小惑星のフィルタリングパネルを表示します。
上写真のように、①にそれぞれ数値を入力したら、財布のアイコン「②Filter by Ownership」をクリックし、「③Owned」のチェックマークを外します。
その後、ゲーム画面下部にある「MAP」タブにカーソルを合わせ、「①Mapped Asterroids」をクリックして、「②検索にヒットした小惑星の一覧」を表示します。
そこから「①適当に一つ小惑星を選択(カーソルを合わせてSelect Asteroidをクリック)」して、下側に小惑星の詳細が表示されるので「②Detail」ボタンをクリックします。
すると画面左側に詳細画面が大きく表示されますが、ここの「③Manage AsteroidにあるPurchase」から、対象の小惑星NFTを(本来は)mintすることができます。
今回は、後者の「MintSquare」の方をクリックしてみます。
すると上写真のような画面が表示されました。残念ながら現在はNFT保有者が出品していないようなので、「From Influence Asteroids」から他のNFTを探してみます。
フロアプライス(最低価格)が3ETHと、かなりお高めで出品されていますね。
あいにく筆者は、Starknet側では3ETHものテストネットトークンは持ち合わせていなかったので、StarkGateを用いて「Goerli(L1)=>Goerli(L2)」へ5ETHほど転送しておきます。
転送が完了したら、3ETHで出品されていた小惑星NFTを購入します。
Adalian Recruitment
続いて、Adalian Recruitmentと呼ばれる工程を通して、小惑星内のメンバーとなるCrew(乗組員)を作成していきます。
後述しますが、執筆時点ではテストネットのCrew作成の過程で問題が生じているようなので、途中までしかテストプレイができない状態です。後日開始予定の「Test to Earn 第3フェーズ」からは修正されるようなので、そちらが開催され次第追記いたします。
ゲーム画面下部にある「ASSETS」タブにカーソルを合わせ、「Crew Members」をクリックします。
画面右側に「Owned Crew」が表示されるので、そこにある「Crew Details」ボタンをクリックします。
すると、上写真のように「Adalian Recruitment」の説明画面が表示されます。
居住地の外は、頭上に果てしなく広がる冷たく暗い真空の空。銀灰色のレゴリスの広大な平原に静止しているのは、年配者には不安なものだ。彼らは、アルヴァード(Arvad)の船内生活がより閉鎖的になり、今のような外界の感覚はなかったと話している。しかし、あなたは外が好きだ。あなたはこのスリリングな新しい環境で成人し、小惑星帯の探索を開始するクルーに採用されるのを待ちきれないでいる。思春期を終え、大人になったあなたは、自分の選んだ道で最初の一歩を踏み出す準備ができている。一般教養を終えたあなたは、専門教養を身につけ、仕事を覚え、生計を立てるために、どのクラスに入るかを決めなければなりません。あなたはどのクラスに入りたいですか?
ここで、概要で説明した通り、どの職業を持ったCrew(乗組員)を宇宙船に乗せるかを決定していきます。
- Miner(マイナー)
- Engineer(エンジニア)
- Merchant(商人)
- Scientist(科学者)
- Pilot(パイロット)
ここでは試しに、いちばん上にある「A: Miner(マイナー)」を選択し、その後の項目は適当に(全てAを)選択してみます。
最後(5 of 5)まで完了すると、Create Your Adalianボタンが表示されるので、こちらをクリックします。
ここでは名前をつけることができたり、見た目が気に入らない場合は「RANDOMIZE APPEARANCE」ボタンを押してビジュアルのランダム変更を加えることができます。
執筆時点ではテストネットのCrew作成の過程で問題が生じているため、ここまでしかテストプレイができませんでした。後日開始予定の「Test to Earn 第3フェーズ」からは修正されるようなので、そちらが開催され次第追記いたします。(参考:discord)
Crewの管理
先程のAdalian RecruitmentでCrewの作成が完了したら、「ASSETS => Crew Members」から乗組員の編成がおこなえるようになります。
ちなみにこの後のゲームの流れとしては、適切な資源やアイテムを獲得しながら、それをもとに経済の原動力となる建物や船を作成・操作するなどして、単独または他のプレイヤーと協力しつつ目標の達成を目指していくことになります。
しかしながら内容量が非常に膨大なため、もし需要があるようであれば別の記事としてシリーズ化し、そちらでピックアップしていく方針と致します。
筆者の論考・考察
まとめ
今回は、Starknetのオンチェーンゲーム「Influence」についてご紹介することで、本プロジェクトの概要ならびに注目ポイントなどについて紹介・解説しながら、Starknetにおけるオンチェーンゲーム概況について触れていきました。
本記事が、Influenceの概要やゲーム内容、Starknetでのオンチェーンゲーム事例などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
オンチェーンゲーム領域は非常に難解なため、比較的敬遠されがちなテーマですが、世界中の頭の良い人たちがオンチェーンゲーム領域に集まり、実行力をもって強か(したたか)に開発し続けていることには、間違いなく意味と理由があります。
「本当の発見とは、新しいものを見つけに行くことではなく、新しい眼で見ることにある。」と、かつてのフランスの作家マルセル・プルーストは言いました。
ブロックチェーン/クリプトを使った「ゲーム」の開発事例は既に多数ありますが、オンチェーンゲーム領域に張っている人たちは「既存のゲームをどうブロックチェーンに落とし込むか」よりも、『ブロックチェーン/クリプトでしか実現できないゲームは何か』を考える傾向にあると、筆者は推察しています。
それは、コンポーザビリティの高い設計によるネットワーク効果を高めたゲーム、パーミッションレスなルール変更、ゲーム以外のプロジェクトとの相互作用性など枚挙にいとまがありませんが、そういったクリプトの眼を持ちながらゲームを設計しているところにオンチェーンゲームの面白さがあるのではないかと考えており、この趣深さを一人でも多くの方に伝えたいというのが筆者の大きなモチベーションの一つです。
そして、その震源地はStarknetであるというのが、現状の筆者の所感です。
現在はベアマーケット真っ只中ではありますが、彼らのような意義深い開発を続ける方々に最大限の敬意を表するとともに、筆者も微力ながら日本語圏での情報発信・記事執筆などを通してコントリビュートしていきたいと思うと同時に、今後もオンチェーンゲーム領域の注目事例について積極的に取り上げていきたい次第です。
最後に、励みになりますので参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。
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— イーサリアムnavi🧭 (@ethereumnavi) December 3, 2022
今回は、StarkNet上に構築されているオンチェーンストラテジーMMOゲーム「Influence」について解説しました📝
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