今回は、オンチェーンアクティビティを可視化するSBTプロジェクト「Soulbonds」についてご紹介すると同時に、今後同様の事例は日本発で創出されていくのではないかという仮説と考察を述べていきます。
一般的にインターネット上の行動履歴というのは、GoogleやAmazonなど特定のプラットフォームのデータサーバーに格納されていますが、web3プロダクトの多くはEthereumに記帳されるため、パブリックに検証可能・改ざん耐性の高いかたちで保存されています。
こういったデータは長い目で見た時にクリプト文脈で「価値がある」と考えられているものの、その分かりづらさや難解さからあまり注目されていないのが現状です。
しかし、Soulbondsではそういった『本来は価値があるものの分かりづらいもの』をPFPとして可視化することで、多くの人にその価値を最終的に気づいてもらおうといった趣旨のNFT(SBT)プロジェクトであると筆者は理解しており、非常に含蓄に富んだ事例であると考えています。
ということで本記事では「Soulbonds」についてご紹介することで、その概要ならびに注目ポイントなどについて理解していただくことを目的とすると同時に、『日本発のクリプトネイティブプロジェクトとして可能性のあるジャンルなのではないか』という筆者の考察を加えていきます。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、SoulbondsというSBTプロジェクトの概要や「リーダーボード」というランキング機能の実態、さらにDegenScoreとのパートナーシップなどについて解説します。
続いて、Soulbondsのどういった点が注目に値する要素なのかについて、「譲渡できないNFT」「Mintの仕組み」「メタデータの保管場所」という3つに絞って解説します。
最後に、「日本人は仏像を作って拝んでから宗教心に目覚める」という話を紹介しつつ、『分かりづらいオンチェーンアクティビティを可視化してあげる』というアプローチを採用する日本発プロジェクトの創出可能性などについて、筆者の私見を交えながら考察してまいります。
本記事が、「Soulbonds」の概要や注目ポイントの理解促進、また新規NFTプロジェクト立ち上げ時の知見を得たいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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Soulbondsとは
概要
Soulbondsは、個々のオンチェーンペルソナに合わせたSBT(Soulboundトークン)のコレクションです。
ユーザーは、DeFiなどのweb3プロダクトを触ったことをオンチェーン履歴によって証明し、そのステータスによってSBTのオンチェーン特性(traits)というかたちでビジュアルに変化を加えられます。
これはゲームに例えるとイメージしやすいかと思います。オンチェーンアクティビティをゲームにおける「達成度」のようなものとして捉えると、ミッション報酬としてSBTのオンチェーン特性が付与される遊びであると言い換えることができます。
そして、その達成度合いの高い人(アドレス)ほど見た目が豪華になっていくため、『その人(アドレス)のweb3スペースにおける強さ』のようなものが視覚的に表現できるといった面白さを兼ね備えたNFTプロジェクトとなります。
Soulbondsが特定のウォレットアドレスに対してmintされると、そのアドレスが分析され、過去のオンチェーンアクティビティに基づいた取得可能なオンチェーン特性リストが表示されます。(※mintの詳細に関しては後述します。)
そして、Soulbonds保有者は自分のアバターに表示したいtraisを選び、Dapp経由で即座にメタデータならびにアートワークをアップデートすることができます。
上画像のように、変更可能なオンチェーン特性は全部で10種類あります。
例えば、EthereumのICOに参加したことがあったり、Uniswapのエキスパートユーザーであったり、1inchで特定の取引をおこなったりすることで、装飾可能なオンチェーン特性がどんどん増えていくという仕様です。
また「オンチェーン特性」には、以下3つの固有の種類があります。
- 共通の特性(common traits)
- DeFiプロトコルを一度使う、あるプロトコルを使ってアセットをブリッジするといったような、手軽にアクセスしやすい実績のようなもの。
- ブロックチェーン上で自分が現在どの方向に進んでいるのかを示すために使うことができる。
- 遺物の特性(legacy traits)
- 1回限りの歴史的な出来事から得られる特性。
- 有名な資金調達イベントへの参加、巨額のNFTコレクションのミント、あるいは大規模なラグプルなどが含まれる。
- 進行型の特性(progression traits)
- すでに成長しているアバターに、さらに動的な要素を加えるもの。
- 主要なプロトコルとの相互作用、ガバナンスや 投票への参加、トレードやレンディングなどの活動に関係する。
リーダーボード
Soulbondsには「リーダーボード」というランキング機能が備えられています。
リーダーボードを実装した目的は、Soulbonds NFTの保有者に『競争の要素』を導入すること。
新しいオンチェーン特性のロックを解除するというプロセスは、ランキングシステムの力を使って他の人と競争するという、よりゲーム的な体験になると考えられているそうです。
web3の世界におけるレピュテーションと経験といった指標をオンチェーン特性の形式で可視化し、さらにリーダーボードというランキング要素を設けることで社会的欲求を満たすためにオンチェーンアクティビティを残すことに努めてもらおうといった戦略に見えます。
Phiでも同じような取り組みがおこなわれていますが、Soulbondsはオンチェーンアクティビティによって「SBTのオンチェーン特性が付与されていく」のに対して、Phiは『土地(ENS)の上に配置できるオブジェクト(NFT)がclaimできる』といった性質の違いがあります。しかし、どちらもオンチェーン活動履歴の価値を分かりやすく可視化してあげるアプローチを取っている点では、同じ系統のプロジェクトであると言えるでしょう。
また、後述する通り、Soulbondsのリーダーボードの実装には「DegenScoreとのパートナーシップ」が一役買っています。
DegenScoreとのパートナーシップについて
DegenScoreは、さまざまなDeFiなどを触っている(オンチェーン活動をしている)ことがスキルの証明となり、それらの情報を元にスコアが算出され、上画像のようにランキングとして表示してくれるサービスです。
また、Beaconというアクセスパスとしての役割を担うSBTを保有していると、さまざまなプロジェクトのローンチやコミュニティなどに参加することができます。(現在BeaconをmintするためにはDegenScoreが700以上必要です。)
そして、このDegenScoreが上イラストの「②数値化してランク付け」の役割を果たしているとすれば、それを元にSoulbondsが「③数値を元に見た目で表現」というビジュアルレイヤーとして一翼を担っています。
このビジュアル化によって、「視覚的に分かりやすくオンチェーンアクティビティを評価することができる」というメリットが生まれます。
Soulbondsの特徴的なポイント3つ
本章では、Soulbondsのどういったポイントが注目に値する要素なのかについて、以下の3点に絞って順番に解説します。
- 譲渡できないNFT
- Mintの仕組み
- メタデータの保管場所
譲渡できないNFT
SoulbondsはSBTの設計を採用しているため、一般的なNFTのように二次流通マーケットなどで取引したり、自分の別ウォレットアドレスに対して転送することができない仕様になっています。
これは、「Soulbondsはクジラやインサイダーがお金を稼ぐためのハイプコレクションではない」ということの意思表示だそうです。
あくまで、web3スペースにおける達成度や没頭具合を可視化するためのPFPコレクションであり、かつ分散型ウェブの世界における保有者自身の反映であるため、『レピュテーションの指標』として使用してもらうことを想定しているとのこと。
そのため、上写真の通りOpenSeaなどのNFTマーケットプレイスではリスト0%となっており、出来高も0の状態です。
現状、SBTは秘密鍵の紛失/盗難などによりアクセス権を失ってしまうとリカバリーできないなどの課題もありますが、Soulbondsのように特定のウォレットアドレスの価値を視覚的かつ即座に理解できる(転送できないので保有者のウォレットアクティビティが可視化されていることが自明)という意味では、発展可能性があるとも考えられます。
Mintの仕組み
執筆時点におけるSoulbondsは、Gen 0(第0世代)とGen 1(第1世代)の2種類のSBTが存在します。
Gen 0は、初期にコミュニティに貢献した人などを対象にSBTミントの権利が与えられたものなので、現在は取得することができません。
そして特徴的なポイントは誰でもSoulboundsのSBT取得できるようになったGen 1以降のミントの仕組みです。
実はこのGen 1は、「Gen 0保有者」もしくは「他のGen 1保有者」の誰かのリファラル(紹介枠)を使用しなければミントできない仕組みとなっています。
そして、リファラルを提供したSoulbounds保有者には、紹介報酬として40%(Gen 0の場合は60%)が付与されるといった設計になっています。
現在Gen 1のSBTをミントするためには0.096ETHが必要なので、リファラルを提供した人に対しては0.0384ETH(Gen 0の場合は0.0576ETH)が付与され、webサイトなどを通してclaimできるようになります。
実際にミントする際はどのような流れになるのかについて、今回は実演していきます。
先ほどの紹介リンクからミントが完了したら、上写真のように「CONSTRUCTOR」ボタンが表示されます。
まずは、こちらをクリックしてオンチェーン特性を設定し、初期のSBTのビジュアルを決定していきます。
パートナーシップを提携しているDegenScoreの画面に遷移するので、MetaMaskを接続して署名(Sign)します。
署名が完了すると、上写真のようにベースとなるアバターが表示されます。
右側に、現時点のオンチェーンアクティビティで取得できる特性が表示されるので、好きなものを選択してビジュアルをカスタマイズします。
カスタマイズが完了したら、「APPLY」ボタンをクリックしてMetaMaskから署名します。
以上が、SoulbondsのGen 1 SBTをミントする流れと、初期のビジュアル設定を施すまでの流れになります。
そして、この「オンチェーン特性」という名前の由来は、先述の通りメタデータをAWSのようなサーバーではなくCeramicネットワークに格納しながらアップグレーダブルな設計にしているところにあります。
メタデータの保管場所
Soulbondsでは、すべてのメタデータがCeramicネットワークに保存される設計になっています。
Ceramicでは、データに対して不変かつ一意のID番号を付与するため、IPFSなどの従来の分散型ストレージとは異なり、データが変更されたときにデータが別のURIに移動しないという特徴を有するとのこと。
AWSのような集中型サーバーがNFTのメタデータを管理する場合、運営のラグプル・第三者による攻撃などによりデータが書き換えられてしまうリスクがありますが、Ceramicを用いることでそれらの課題を解消すると主張しています。
筆者の論考・考察
この続き: 1,859文字
まとめ
今回は「Soulbonds」というNFTプロジェクトについてご紹介することで、その概要ならびに注目ポイントをまとめつつ、『日本発のクリプトネイティブプロジェクトとして可能性のあるジャンルなのではないか』という筆者の考察を述べました。
本記事が、「Soulbonds」の概要や注目ポイントの理解促進、また新規NFTプロジェクト立ち上げ時の知見を得たいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
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— イーサリアムnavi🧭 (@ethereumnavi) December 24, 2022
今回は「Soulbonds」というダイナミックSBTについて解説📝
Ethereumでの活動履歴によって取得できるNFTの特性(traits)が増えていき、自由にオンチェーンでカスタマイズができるというクリプトネイティブなPFPプロジェクトです👻@SoulbondsNFThttps://t.co/6T7yxnGK2U
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