強力な多機能ツール搭載|Starknetのオンチェーン版スプレッドシート「Starksheet」について解説

どうも、イーサリアムnavi運営のでりおてんちょーです。

今回は、Starknetで開発が進められている「Starksheet」というプロダクトについてピックアップしていきます。

Starksheetの詳細はこの後で解説しますが、簡潔にいうと『ExcelのようなUI/UXでありつつ、スプレッドシートやブロックエクスプローラーを超える強力な多機能ツール』です。

出典:starksheet.notion.site/Starksheet-bfb55bc581e446598d7bf5860e219b03

上のgif画像のように、ビジュアルや体験としてはスプレッドシートに近いのですが、Starknet上にデプロイされたスマートコントラクトのアドレスや関数を、セルに対して埋め込むことができるという点が注目ポイントです。

さらに、セルに値を入力できるのは自分だけでなく第三者も含まれるため、ボトムアップ型の発展が可能であると期待されます。

ということで本記事では、「スプレッドシートやブロックエクスプローラーを超える強力な多機能ツール」であることを標榜するStarknet上のプロダクト『Starksheet』について概観し、その概要や使い方、今後の発展可能性などについて、筆者の私見を交えながら解説していきたいと思います。

でははじめに、この記事の構成について説明します。

STEP
Starksheetとは

まずは、Starksheetの概要や運営チームに関する情報、なぜStarknetで構築しているのかなどについて説明します。

STEP
Starksheetの使い方と購入方法

続いて、実際にStarksheetをどのように利活用したら良いのかについてステップバイステップで解説しつつ、補足としてNFTの購入方法についても述べていきます。

STEP
筆者の論考・考察

最後に、Starksheetの注目ポイントや今後の発展可能性などについて、筆者の私見を交えながら考察を展開していきます。

本記事が、Starksheetの概要や使い方、Starknet上の他のプロダクトとの連携による発展可能性などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

Alpha Navigatorは、超アーリーなクリプトプロジェクトに特化して探知し、webサイト, discord, twitterで情報発信を行っています。

目次

Starksheetとは

出典:starksheet.xyz

概要

出典:starksheet.notion.site/Starksheet-bfb55bc581e446598d7bf5860e219b03

Starksheetは、「スプレッドシートやブロックエクスプローラーを超える強力な多機能ツール」であることを標榜する、Starknet上のプロダクトです。

ユーザーはStarksheetを使用することで、カスタマイズされたトラッカーを作成し、オンチェーンコントラクトと対話することができるようになります。また、分析やトランザクション構築、プラグイン作成に限らず、ブロックチェーンエコシステムにおける様々な用途に使用できることを、強みとして挙げています。

例えば以下画像のように、ユーザーは各セルに対して様々な値を入力することができます。

出典:app.starksheet.xyz/0x588554cc80b7daa129cc6b92fb431c81e9cc62c58d13477c0299471a6861b5
各セルに対して入力できる値の種類
  1. 定数値
    • 10進数または16進数表記
  2. 文字列
    • 31文字未満
  3. コントラクトアドレス
    • Starknetにデプロイ済みのもの
  4. アドレスを含むセル参照

③, ④のように、Starksheetは『dApps×スプレッドシートの機能』を組み合わせたアプリケーションなので、ユーザーはStarksheetから直接Starknet上のスマートコントラクトと対話することが可能です。

このあたりは、実際にプロジェクトを見ながら解説した方が分かりやすく理解が深まると思いますので、次章で詳述します。

ちなみにStarksheetは、セルの値が変わればNFTのアートワークも変化する「ダイナミックNFT」としての性質も備えており、『データ型NFT × ダイナミックNFT』として特異なポジションにあるとも主張していますが、こちらも最終章で詳述します。

参考:starksheet.notion.site/Starksheet-bfb55bc581e446598d7bf5860e219b03

なぜStarknetなのか?

さて、なぜStarksheetはデプロイ先にStarknetを選んだのでしょうか。

第一に、Starksheetはスプレッドシートのようなインターフェースを提供しています。これをExcelのように誰でもデータと対話できる状態にすることで、web3エコシステムにおける公共データへのアクセスを民主化することを目的としています。

また、Starksheetは独占的なソフトウェアとは異なり完全にオンチェーンで構成されており、ERC721標準規格を活用して「永久的なアクセスとエコシステム全体での多目的な利用」を実現しようとしています。

よって、現在Ethereumは最大のエコシステムであり、最も安全で分散化されたブロックチェーンであるため、このエコシステム上で最初に公開するのが自然な選択だと主張しています。

出典:starksheet.notion.site/Starksheet-bfb55bc581e446598d7bf5860e219b03

さらに、EthereumのL2スケーリングソリューションの中でも、zkロールアップは計算ツールとして興味深い、以下のような機能を有すると述べています。

  • 安価な計算:
    • Excelで見られるような大規模なグラフを高速に作成することが可能
  • 計算の証明:
    • 計算が正しく実行されることが数学的に保証される
  • Fully homomorphic encryption (完全準同型暗号):
    • 完全に暗号化された環境での作業を可能にし、starksheetを世界で最も安全なクラウドベースの計算ツールにすることができる

こういった機能に加えて、Starknetは現在最も先進的な汎用zkロールアップであり、そして強力な成長コミュニティを持っていることも理由だと述べています。

ただし執筆時点では、上記のようなzkロールアップの機能の活用に特化するか、もしくはあらゆるブロックチェーンに展開できるようにstarksheetを一般化するかは、不明であるとも言及しています。

また、次のリリースでは「IPFSの統合」や「より高度な数式バーの導入」など、機能の拡張にフォーカスする予定であると言われているので、今後の開発進捗とその反響を見て検討していくのではないかと予想されます。

運営チーム

出典:discord.com/channels/898951180032540673/933012379275526154/933665986719137872

執筆時点において、Starksheetは以下5人のチームメンバーで構成されています。(ちなみに全員パリ在住だそうです。)

  1. Jason Delabays
    • web3 プロダクト/コミュニティマネジメント/ストーリーテリング/リクルーティング
  2. Clément Walter
    • Solidity & Cairo開発/コンピュータビジョン/データサイエンス
  3. georgesbiaux
    • フルスタック開発者/小説家
  4. Comzer
    • UXデザイン
  5. law
    • イラストデザイン

Starksheetの使い方と購入方法

執筆時点においてStarknetのdappsを利用するためには、Argent XかBraavosのようなStarknet上のウォレットが必要になります。

まだアカウントをお持ちでないという方は、以下の記事に開設方法をまとめているのでご参考ください。

Starksheetの使い方

執筆時点では、Starksheetは無料で遊ぶことができます。自身が入力したセルやデータをオンチェーンに保存したり、それを管理して共有したり、好きな人にNFTを与えたい場合などは、保存料金(Save fee)の0.01ETHがかかります。

では、Starksheetのアプリページ(app.starksheet.xyz)に遷移して、実際にStarksheetでどのような体験をすることができるのかについて確認していきます。

出典:app.starksheet.xyz

まずは右上にある「Connect」ボタンからウォレットを接続し、その後で画面左下にある「+」ボタンをクリックします。

今回、筆者は Braavosウォレットを使用します。

続いて、セルA1とセルA2に対して12を、それぞれ入力してみます。これだけであれば、既存の表計算ソフト(スプレッドシートやExcelなど)と機能的に変わりませんね。

ここでセルB1に対して、Starknet上にデプロイ済みのコントラクトアドレスを入力してみます。今回はデフォルトで用意されている計算関数が組み込まれたコントラクト(下画像の1番上0x181e1b8d5d1f16f3c818811d22e23ea93b07105e6455643fb41291502386d49)を選択してみます。

コントラクトアドレスを入力すると、ユーザーは対象のコントラクトで呼び出し可能な関数を使用することができます。

具体的な流れとしては、まずアドレスの末尾に「.」を付けることでコントラクトの関数を呼び出すことができるようになり、その後にUI(下画像を参照)には、利用可能な関数のサジェストが表示されます。

①で入力したコントラクトに備わっている関数が②で表示されています。実際にStarknetのブロックチェーンエクスプローラー(Starkscan)で確認すると、同じように表記されていることが分かります。

出典:starkscan.co/contract/0x0181e1b8d5d1f16f3c818811d22e23ea93b07105e6455643fb41291502386d49#read-write-contract

では試しに、セルA1とセルA2の値をsum関数で足して、結果を出力してみます。

数式バーへの入力値はこちら:
0x181e1b8d5d1f16f3c818811d22e23ea93b07105e6455643fb41291502386d49.sum([A1,A2])

すると上写真のように、正しい計算結果が出力されていることが見て取れます。

Starksheet上でデプロイ済みのスマートコントラクトの関数を呼び出し、その計算処理を行えることが分かりました。

ちなみに、コントラクトアドレスを別セルに入力しておいて、セル参照で引っ張ってくることも可能です。

この機能の面白い点は、自分一人でシートを作成するだけでなく、「他の人が埋めたセルの値・デプロイしたコントラクトの関数を利用して何かを構築する」という可能性を生み出すところにあると考えられます。

これについては最終章『筆者の論考・考察』パートで詳述します。

補足: Starksheetの購入方法

出典:starkgate.starknet.io

さて前章で述べた通り、StarksheetはEthereum (L1) ではなくStarknet (L2) 上のNFTなので、まずはStarknetにETHを転送(ブリッジ)してあげる必要があります。

今回は上写真の通り、StarkGateを用いてブリッジを行います。

出典:mintsquare.io/collection/starknet/origin-starksheet

ブリッジが完了し、Starknet側のウォレットにETHが補充されたら、Starknet上のNFTマーケットプレイスであるMint Square(もしくはAspect)を通して、Starksheet NFTを購入します。

Starknetウォレットでの署名が完了し、トランザクションが承認されたら、Starksheetの購入作業は完了です。

筆者の論考・考察

さて、前章までの内容を通して、Starksheetの概要やその使い方などについて解説しました。

筆者が一通りStarksheetを体験してみて感じた可能性は、やはり自分一人でシートを作成するだけでなく、「他の人が埋めたセルの値・デプロイしたコントラクトを利用して何かを構築できる」という部分です。

これは、簡潔に表現すると非常に「web3的なアプローチ」であると言えます。例えば、オンチェーンゲームは「web3的なアプローチ」をゲームに応用したものですし、CC0 NFTやLoot/Nouns派生のNFT、一部フルオンチェーンNFTなどは、「web3的なアプローチ」をIP・イラストに応用しています。

そして、このweb3的なアプローチを『データ型NFT × ダイナミックNFT』という新しいかたちで表現している点に、Starksheetの奇抜性・斬新性があると考えられます。

参考:starksheet.notion.site/Starksheet-bfb55bc581e446598d7bf5860e219b03

『データ型NFT × 静的NFT』の代表例としては ENS (Ethereum Name Service) が挙げられますが、他にも「LootとHyperLoot」「NounsとLil Nouns」なども、大きく分類するとこの種類に分けられます。

要は、オンチェーンにあるデータという存在を土台に据えて、その上にNFTを構築していくというモデルとなっています。横同士のコラボというよりは、上下でのコラボといったイメージです。

他の人が埋めたセルの値・デプロイしたコントラクトを利用して何かを構築できる」という要素に関しては、横同士のコラボとしての発展可能性を秘めています。

一方で、Starksheetで各ユーザーが作成し、オンチェーンに保存されたシートが土台部分(下図のLayer 1 : Protocol Layer部)となることで、他の派生プロジェクト(可視化レイヤー/アプリレイヤー)の創出可能性を生み出すことも期待できます。

今回は詳述しませんが、このあたりのボトムアップ型NFTの創出事例や共通性などについて理解を深めたいという方は、過去に書いた以下などの記事をご参考ください。


また序章で述べた通り、執筆時点においてStarksheetは、zkロールアップの機能の活用に特化するか、もしくはあらゆるブロックチェーンに展開できるようにstarksheetを一般化するかは不明であると言及されています。

Starknet上のスマートコントラクトはCairoという独自の開発言語で書かれているため、EVM互換チェーン用に一般化するのであれば改めてコード部分から作り直す必要がありそうです。

それでも、Etherscanのようなブロックチェーンエクスプローラーを、より手触り感のあるかたちで使いやすくしたプロダクトとも表現できるため、一定の需要はありそうだと感じます。

他方で、一点集中型でStarknetに特化させていくのであれば、それはそれで面白い多様な使い方ができそうだとも思います。

例えば、Starknet特有の「計算効率の高さ」などの土壌を活用することで、現在Starknet上で独自発展させているオンチェーンゲームやDeFiなどと絡めたコラボレーションにも期待できそうです。

現状、オンチェーンゲームの課題は『UI/UXの複雑さ』が一因となっていると筆者は理解していますが、Cartridgeのようなウォレット部分とは別のアプローチで解決が図られる可能性もあると考えています。

オンチェーンゲームを楽しむために、Starksheetでセルにオンチェーンゲームのコントラクトアドレスを入力し、他のセルを参照しながらシートを作成することで、「このシート1枚あればオンチェーンゲームが遊べます!」という簡単な方法を提示し、ユーザーがゲームへ参加する障壁を低くすることなどができそうです。

このように、Starknet上の他のプロダクトとの連携による発展が期待できる一方で、Starksheet自体も使いやすさ・利便性を向上させていくことで、今後ますます注目される存在になる可能性があると言えます。

まとめ

イーサリアムnaviの「今まで」と「これから」

今回は、「スプレッドシートやブロックエクスプローラーを超える強力な多機能ツール」であることを標榜するStarknet上のプロダクト『Starksheet』について概観し、その概要や使い方、今後の発展可能性などについて、筆者の私見を交えながら解説しました。

本記事が、Starksheetの概要や使い方、Starknet上の他のプロダクトとの連携による発展可能性などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。

また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。

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