ポイントに高いコンポーザビリティを持たせる|Base上のL3ポイントチェーンを標榜する「Stack」の概要と、web3時代の新たな”オンチェーンポイント”の概念を解説

今回は、2024年3月にシードラウンドで$3Mの資金調達をアナウンスして話題となった、「オンチェーンポイント」に特化したL3チェーン「Stack」について解説します。

近頃、web3スペース全体で、タスク報酬として「ポイント」を付与したり、EigenLayerがエアドロップを「ポイント」で行うなどの取り組みが話題となっています。

こうした動きを見ていると、「トークンのエアドロップ」が新規web3プロジェクト立ち上げの手段としてますます一般的になる中で、いかにTGE(Token Generation Event)を後ろ倒しにするかが鍵になりつつあるように感じられます。

そんな中、「ポイントに特化したL3チェーン」が誕生し、資金調達を行なったことが話題となりました。

今回ご紹介する「Stack」というポイント特化型プロトコルは、3月にArchetypeやCoinbase Venturesなどから$3Mの資金調達を行い、注目を集めています。

ポイントという概念が注目される中で、彼らが「web3×ポイント」でどのようなプロジェクトを構築しているのか、そして、ポイントをクリプトネイティブに表現するとどのような恩恵が受けられるのかについて、今回は紹介していきたいと思います。

ということで本記事では、「Stack」の概要や資金調達情報などを紹介しながら、web3がもたらすポイントエコシステムの新時代というテーマで考察を展開していきます。

でははじめに、この記事の構成について説明します。

STEP
「Stack」の資金調達の内容を整理

まずは、シードラウンドで$3Mの資金調達を行った事実についてまとめ、なぜ「ポイント」に特化したチェーンが注目されたのかについて解説します。

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「Stack」について紹介

続いて、「Stack」の概要や詳細について取り上げながら、創業者に関する情報や、Base上のL3チェーンとしてローンチした理由などについて解説します。

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web3がもたらすポイントエコシステムの新時代

最後に、「web3×ポイント制度」について、既存産業におけるポイント制度の動向と比較しながら、今後どのように発展を遂げていくのかについて、筆者の私見を交えて解説します。

本記事が、「Stack」の概要や「web3×ポイント」の新潮流などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

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目次

「Stack」の資金調達の内容を整理

シードラウンドで$3Mの資金調達

出典:https://icoanalytics.org/projects/stack/

2024年3月、「Stack」はオンチェーンポイントのインフラを開発するための資金として、シードラウンドで$3Mを調達したことを発表しました。

このラウンドのリード投資家はArchetypeであり、その他にもCoinbase Ventures、Scalar Capital、A.Capitalなどが参加しています。

さらに、個人投資家としてCoinbase元CTOのBalaji氏や、同じく元Coinbaseで現在FarcasterのCEOであるDan Romero氏なども参加しました。

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詳しくは次章で述べますが、Stack(L3)はCoinbaseが開発するBase(L2)の上に構築されているため、通称”Coinbaseマフィア”と呼ばれる人々が投資家として名を連ねているのではないかと推測されます。

なお、今回の資金調達の発表に際して、リード投資家であるArchetypeの創設者Ash Egan氏は、The Blockに対して次のように語っています。

「Stackは、クリプトのアプリケーション時代の幕開けにおいて中心的な存在です。このサイクルのフェーズに入るにつれて、Archetypeはコンシューマー向け製品とインフラに対して引き続きコミットしており、非常に興奮しています。」

出典:https://www.theblock.co/post/280173/archetype-leads-3-million-seed-round-for-on-chain-points-startup-stack

このコメントから、Stackがクリプトのマスアダプションにおいて今後キーの一つになり得るプラットフォームであり、エコシステム全体の発展に寄与すると期待されていることが分かります。

なぜ「ポイント」に特化したチェーンが注目された?

冒頭でも少し触れた通り、昨今「ポイント」がweb3業界で注目を集めています。記憶に新しいところでは、Rainbowがポイント制度を展開して利用者数の増加に繋げたり、Lensがポイント制度を予告するなど、その取り組みを加速させています。

その他にも、例えばRabby Walletではスワップを行ったり他の人を招待することで「Rabby Points」が得られるようになっていたり、最近ではEigenLayerのエアドロップが「ポイント」で行われて、賛否両論が巻き起こるなどしました。

また、Solanaエコシステムにおける多くのDeFiプロジェクトにおいて、「ポイント」が触媒的な役割を果たしているなど、「ポイント」がクリプトエコシステム全体を席巻している状況です。

その勢いは凄まじく、The Blockの調査によれば、2024年2月17日までに『web3スペース全体で1150億ポイントが配布されている』といった結果も出ている程です。

こうした経緯を経て、現在ではWhales MarketPendleなどを通して、ポイントがトークンに変換される前段階から「ポイントを売買・取引」できる市場まで誕生しています。

出典:https://whales.market/

このように、web3スペース全体において、ポイント制度を採用することで、コミュニティのエンゲージメントを促進したり、プロジェクトにゲーム性を加えたり、TGE(Token Generation Event)を後ろ倒しにできる等のメリットがあるとされており、端的にいうと「ポイント」がめちゃくちゃ流行っています。

ただ、そうした中でも、ポイントが中央集権的にオフチェーンで管理されることへの懸念や、ポイント間での相互運用性の無さに対する疑問の声も出始めています。web3領域におけるポイント制度が普及してきたことによる新たな課題も見え始めつつあります。

そうした背景・現状の課題を踏まえて、本記事ではポイントに特化したL3チェーン「Stack」についてご紹介したいと思います。

ポイントをオンチェーン化することは、オフチェーンポイントやERC-20トークンと何が異なるのか、また、ポイントをオンチェーン化することで、どのようなweb3技術の恩恵を得ることができるのかなどについて、解説していきます。

「Stack」について紹介

出典:https://www.stack.so/

概要

出典:https://x.com/stackdotso/status/1770958415155671495

Stackは、EthereumのL3「Stack Chain」上に存在するポイントプロトコルであり、ポイントプログラムを管理するためのシンプルなツールとともに、ロイヤリティポイントをオンチェーンのプリミティブとして導入しています。

Stackの主な構成要素としては、「ポイント管理ダッシュボードのUI」と、SDKに統合されたスマートコントラクト「ポイントプロトコル」の2つから成り立っています。

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Stackチームは、Base(L2)上に独自のL3チェーン「Stack Chain」を構築し、その上に「Stack」というオンチェーンポイントを実行・管理するためのプロトコルを配置しています。

Ethereumチェーンを用いることで、「ロイヤリティポイントプログラム」を高いセキュリティで安全に管理し、なおかつ、L3「Stack Chain」で処理を実行することで、安価に運用することを目指しています。

『Base(L2)上の独自L3チェーン』という構造をビジュアル化すると、以下のように表せます。

ポイントプロトコルがEthereum L3上にあることで、コスト削減やプラットフォームリスクの低減、信頼性とセキュリティの向上を実現し、オンチェーンでのポイントプログラムの作成・管理を可能にしています。

このように、L3で処理の実行を行い、L1でデータの検証を行うことでオンチェーンポイントの運用・管理を実現していますが、ユーザーが獲得したポイントに応じて特典を交換できる機能も提供されています。

従来は、オフチェーンでポイントを管理していたり、最初からトークンを発行してユーザーに配布する選択が主流でしたが、Stackによって、「まずはオンチェーンでポイントを配布して、使い道はその後で決められる」ようになると期待されています。

既存プロジェクトのポイントも移植可能

ちなみに、0からプロジェクトを立ち上げる場合だけに限らず、既にオフチェーンで管理しているポイントの移植も行えるようになっている点も、特徴的です。

具体的には、任意のポイントデータをCSV経由でアップロードし、StackのSDKを使用することで、既存アプリ上で管理しているポイントを、オンチェーンでを発行することができます。

出典:https://www.stack.so/

つまり、既存のポイント事業者やロイヤリティポイントを活用したマーケティングを行っている企業も取り込むことができるため、Stackの営業力次第では、大規模なプロジェクトとのコラボレーションも実現可能だと考えられます。

こうした特徴を持ち合わせていることから、今後さまざまなweb3プロジェクトの間でStackの活用が進んでいくと期待されています。

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特に、Baseチェーンのエコシステムに参画することで、Coinbaseのウォレットや取引所運営で獲得したユーザー層にリーチすることができるため、新規web3プロジェクトにとって大きな課題の一つである「ディストリビューション」の面で大きな恩恵が得られそうです。

スマートコントラクト「ポイントプロトコル」について


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まとめ

今回は、「Stack」の概要や資金調達情報などを紹介しながら、web3がもたらすポイントエコシステムの新時代というテーマで考察を展開しました。

本記事が、「Stack」の概要や「web3×ポイント」の新潮流などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。

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