今回は、Farcasterエコシステムについて包括的に解説していきます。ただし、普通に紹介するだけでは面白みに欠けるので、APIを使用したアプリやツールの開発方法、そしてFarcasterがなぜこれほどまでに流行っているのかについて、詳細なレポートを加えてご紹介します。
さて昨今、「分散型ソーシャルメディア」の文脈で話題沸騰中のFarcasterですが、『なぜこんなに流行っているのか?』について深掘りして調べてみると、なんと2021年にLootエコシステムが辿ってきた道と同じ軌跡を辿っていることが明らかになりました。
Farcasterが何故こんなに流行ったのかについて記事書いているんだけど、完全にLootと同じ道を辿っていました。
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) March 1, 2024
Lootの思想とか好きな人は、絶対好きな題材だと思います。
イーサリアムnaviを長らくご愛読して頂けている方はご存知の通り、LootというNFTコレクションは、クリプトの核となる要素を豊富に含んだテーマとして、多くのファンから認知されています。
そして、「コンポーザビリティ」「ボトムアップ」「相互運用」などの用語をNFTの文脈で耳にしたことがある方も多いでしょうが、Farcasterはこれらの概念を『ソーシャルメディアの世界に導入している』点が、特にユニークで魅力的なテーマだと言えます。
本記事を通じて、Farcasterエコシステムの全体像を把握し、FrameアプリやAPIを利用したbotの構築方法をステップバイステップで学べます。さらに、Farcasterがどうしてこれほど人気を博しているのか、その成長の背後にある要因を時系列に沿って詳しく解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、Farcasterの概要やその歴史をはじめ、公式クライアントアプリである「Warpcast」や、最近実装された『Frameアプリ』などについて、一通り概観します。
続いて、非エンジニアの方でも簡単にFrameアプリやツールを構築できるフレームワーク「Neynar」を使って、分散型ソーシャルプロトコルの強みの活かし方の一例をご紹介します。
最後に、「なぜFarcasterがこんなに流行っているのか?」「ボトムアップなアプローチ」「新しいムーブメントの発生源はどこか」というテーマを中心に、Farcasterについてさらに一歩踏み込んだ内容について解説します。
本記事が、FarcasterやWarpcast/Frame、その他Farcasterエコシステムの深掘り情報などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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Farcasterエコシステムを概観
Farcasterとは

Farcasterは、一言で言い表すならば、「開発者に創造性と自由を提供し、オーディエンスとの直接的な関係構築を可能にするソーシャルネットワーク」です。
Farcasterプロトコルは、開発者がスマートコントラクトを用いてさまざまな分散型SNSアプリを構築できるように設計されており、中央集権的な管理者の介入なくユーザー間での相互交流が可能なプラットフォームを提供することを目指しています。
web2の使いやすさと、web3の自由度・コンポーザビリティを兼ね備えたユーザー体験を提供し、従来のSNSプラットフォームが提供してこなかった「データの保有権」や「新しい形式の価値交換やコミュニティの形成」を促進することを目指しています。

執筆時点においてFarcasterは、可能な限りOpen/Permissionlessな仕様を心がけているため、誰でもFarcasterのデータと対話するSNSプラットフォームをFarcaster上に構築することが可能です。
では、『Farcaster上に構築する』とは、具体的にはどういうことでしょうか。
例えば、Ethereumチェーンをプロトコル層として見なすと、その上にはEtherscanのようなビジュアル層や、OpenSeaやBAYCのようなアプリケーション層が構築されています。
同様に、Farcasterを基盤として、公式に提供されているクライアントアプリ「Waprpcast」や、その上に構築されたアプリケーション「Frames」があります。

これにより、Farcasterはユーザーが自らのデータに対するオーナーシップを保持し、コンテンツクリエーターが自分のオーディエンスをアプリ間で移動させることが可能な、従来のSNSとは一線を画す「分散型ソーシャルネットワーク」を実現しようとしています。これがFarcasterを他のSNSプラットフォームと区別する特徴です。
まとめると、Farcasterは「開発者に創造性と自由を提供し、オーディエンスとの直接的な関係構築を可能にするソーシャルネットワーク」であり、これにより、新しい形のコミュニケーションやコミュニティ形成が可能になると期待されているプロダクトです。
アーキテクチャ

Farcasterでは、ユーザーがメッセージを投稿する際、そのメッセージはユーザーのデバイス上で生成された秘密鍵によって署名され、その後「ハブ(Hubs)」と呼ばれるネットワークサーバーへと送信されます。
この仕組みは、ブロックチェーン技術によって『ユーザーが自分のデジタルアイデンティティを完全に管理できる』ように設計されており、またサインアップ後は追加費用なしでサービスを利用できるため、ユーザーは追加料金を気にせずFarcasterを自由に使いこなせます。

ちなみに上図の通りFarcasterでは、「ソーシャルメディアを構築するにあたって、全てをオンチェーンに載せることはデータ容量やユーザー体験、コスト的に現実的ではない」ことから、必要なところに絞ってオンチェーン実装しています。
そして、コアな部分は分散的でありながらも、エンドユーザーには使いやすい設計を重視して構築されています。例えば、万が一ユーザーがデバイスを紛失した場合でも、アカウントを安全に回復できるよう、パスワードリセット機能が組み込まれていたりします。
つまり、コアな部分をオンチェーン実装しながら、同時にユーザーフレンドリーで直感的な操作性を追求することにより、コアユーザーから一般ユーザーまで幅広く受け入れられる素質を兼ね備えているのです。
歴史
Ideas for building sufficiently decentralized social networkshttps://t.co/QLj0AXUXCH
— Varun Srinivasan (@varunsrin) January 13, 2022
Farcasterプロトコルは、2022年に共同創業者のSrinivasan氏によってそのアイデアがポストされていますが、当時は開発の大部分が非公開で行われており、静かにその存在感を増していきました。
web3ソーシャルメディアであれば、初期の段階からユーザーを集めておきたいと考えるのが一般的でしょう。例えば、Baseで展開されているfriend.techは多くのインフルエンサーを巻き込み、経済的インセンティブも付与することで拡大していったモデルですが、Farcasterはそれとは異なり、初期フェーズからあえて宣伝やトークン発行を行わず、水面下で徐々にユーザーを増やしていくことにフォーカスしていたのです。
2022年当時、Farcasterでは参加できるcap数がかなり少数に限られていて、ファウンダーのRomero氏が「数人入れるからDMちょうだい」といった趣旨のツイートをした後、何人かがDMを通して参加して締め切られる、といったことを何度も繰り返すという独特なアプローチにより、コミュニティはゆっくりと成長していきました。

筆者が参加できたのは2022年11月でしたが、この時もFarcasterはまだ比較的静かなコミュニティでした。


この当時は、Warpcastのユーザー数も今よりはるかに少なく、チップ機能や後述するFrameなどの機能もまだ実装されていませんでしたから、正直に述べると活発な交流の場とは言えない状態だったと思います。
ところが2024年に入ってから、状況が一変します。以下のDune Analyticsのデータを見れば一目瞭然ですが、2024年1月末頃になってから、DAUやcast数(Twitterにおけるツイート数)などが爆発的に伸びてきたのです。


この成長の背後には、Frameアプリ機能の実装や初期貢献者へのエアドロップイベントなどが要因として大きかったと考えていますが、これに関しては最終章で詳しく述べます。
ひとまずここでは、「立ち上げ当初は目立たない存在であったFarcasterが、2024年1月末頃から急成長し、多くのユーザーを引きつけるプラットフォームに変わっていった」ということを、押さえておきましょう。
創設者は元Coinbase
Since /r/nba has gone dark tonight, we decided to experiment with a dedicated Game 5 Farcaster channel.
— Dan Romero (@dwr) June 12, 2023
Farcaster channels are like decentralized subreddits organized around an NFT. pic.twitter.com/tOarMJyjGg
さて、多くの方がすでにご存知かもしれませんが、Farcasterの共同創設者であるDan Romero氏とVarun Srinivasan氏は、実はどちらもCoinbaseの出身です。
彼らは、ブロックチェーン技術を活用して「より公平で自由なソーシャルメディア」を作ることを目指し、Coinbaseでの勤務経験から得たユーザー体験、セキュリティ、スケーリングに関する深い知識を、Farcasterの開発に生かしています。
資金調達


その見極めの効果なのか、Farcasterは2022年7月に、シードラウンドで3000万ドルの資金を調達しています。
この資金調達には、a16z crypto、Standard Crypto、1confirmationといった著名な投資家が参加しており、また、共同創設者たちの古巣であるCoinbase Venturesも、投資者として支援を表明しています。
Farcasterのクライアントアプリ「Warpcast」について


さて今日、ソーシャルメディアは私たちの生活に欠かせないコミュニケーションツールとなっています。FacebookやX(Twitter)などのプラットフォームは、世界中の人々をつなげ、情報の共有、意見の交換、コミュニティの形成を可能にしてきました。
しかし、これらのプラットフォームが中央集権的な管理下にあることは、プライバシーの懸念やデータの保有権についての問題を引き起こしています。このような課題に対処するために、ブロックチェーン技術を基盤とした新しいソーシャルメディアプラットフォームが登場しています。その中でも特に注目されているのが、Farcasterプロトコル上に構築された「Warpcast」です。


Warpcastは、Farcasterプロトコル上に構築された主要なアプリケーションの一つであり、既存のソーシャルメディアプラットフォームと似たインタラクティブな機能を提供しながら、ブロックチェーンの利点を活かした新しいソーシャルネットワーキングサービスです。
FacebookやX(Twitter)に似た機能を持つインタラクティブなソーシャルメディアプラットフォームで、ユーザーは短い投稿をシェアしたり、興味のある個人や公開チャネルをフォローしたり、アプリ内通貨「warps」やを使用して投げ銭することができます。
また、特定のコミュニティが作成した仮想通貨を使ってユーザー間で報酬を送り合うシステムも導入されています。特に$DEGENトークンは、投稿への反応やコミュニティ内での貢献に対する報酬として活発に取引されており、経済的インセンティブを提供しています。(※この話題は最終章で詳しく述べます。)


そして、Warpcastの最大の特徴の一つは、次節で紹介するプログラム可能な投稿「frames」を作成できる点です。
これにより、NFTのミント機能や、アンケート、NFTギャラリーの展示、メルマガ登録、ECサイトとの連携、テストネット通貨の入手など、従来のソーシャルメディアでは考えられなかった多彩な活動が可能になっています。


なお、Warpcastを利用するためには、現時点では招待リンクを介し、なおかつデータストレージの支払いのために「年間5ドルの費用」がかかります。この価格設定は、プラットフォームの運用コストをサポートし、スパムの問題を抑制するためのものです。



興味がある方は、こちらに招待リンク(https://warpcast.com/~/invite-page/6157?id=98c80758)を貼っておきますので、試してみてください。
ユーザーが支払うストレージ費用は、直接プロトコルに対して支払われますが、このシステムは『Warpcastが独立した開発者やプロトコルを支持する人々にとっての資金源』となることを目指して設計されているそうです。
Warpcastの「Frameアプリ」の台頭
200K sign ups!
— Dan Romero (@dwr) February 24, 2024
10x since going permissionless in October. pic.twitter.com/36mnUkFJco
ここまで述べてきた通り、Farcasterとそのクライアントアプリ「Warpcast」は、従来のソーシャルメディアの概念を超え、ユーザーに全く新しい体験を提供することを目指しています。そして、特に最近リリースされた「Frames」という機能が、この新しいソーシャルメディア体験の中核をなすものとして注目されています。
Framesとは、castに対して簡単なミニアプリを組み込むことができる機能です。この機能により、タイムライン上に直接「インタラクティブなアプリ」を埋め込むことを実現できます。
先述の通り、投票・ゲーム・ギャラリーなどの機能を自分の投稿に組み込むことができ、ユーザーは別アプリに遷移させられることなくWarpcast上でアクションを行うことができるので、これまでにないインタラクションを生み出します。
このFrames機能のリリースにより、多くの開発者が競って面白いソーシャル上のFrame(ミニアプリ)を作り出し、例えば以下のようなFramesがWarpcast内で話題となりました。
- タイムライン内からNFTをミントできるFrame
- ゲームをクリアするとNFTがミントできるFrame
- dappsを直接操作するFrame


さらに、Frameのロジックは『Farcasterプロトコル(Hubs)』と『Frameを実行するサーバー(frame server)』に分割されており、特定のクライアント(例えばWarpcast)に依存しない設計となっています。そのため、開発者は作成したFramesを異なるクライアントに容易に移植できる(つまり、相互に運用可能である)点も、重要な特徴の一つとなっています。
また、ユーザーとしては、自分の投稿を通じてインタラクティブな体験を提供できるため、より豊かなコミュニケーションが可能になります。
さらに、事業者の視点から見ると、マーケティングの側面では特に、ユーザーがどのクライアントアプリを利用しているかにかかわらず、Farcasterエコシステム全域で「どのユーザーがどのFrameに関心を示したか」を容易に把握できる点が大きなメリットです。これにより、事業者はユーザーの行動をより効果的に追跡できるようになります。
ということで、最後に本章の内容をまとめます。
- Farcasterとそのクライアントアプリ「Warpcast」は、従来のソーシャルメディアを超えた全く新しい体験を提供を目指している
- 「Frames」という新機能は、ユーザーがタイムライン上にインタラクティブなミニアプリを埋め込めるようにするもの
- Framesを用いることで、ユーザーはWarpcast上で直接、投票やゲームなどのアクションを行うことが可能になり、別アプリへの遷移が不要になる
- FrameのロジックはFarcasterプロトコルと実行サーバーに分割されており、これにより開発者は異なるクライアント間でFramesを容易に移植できる(相互運用可能)
- 「開発者」「ユーザー」「事業者」にとってユニークな活用ができそうな余地があり、今後の発展可能性に期待できる
以上を踏まえて次章では、非エンジニアの方でも簡単にFrameアプリやツールを構築できるフレームワーク「Neynar」を使って、分散型ソーシャルプロトコルの強みの活かし方の一例をご紹介します。なお、開発に興味がないという方は、最後の『Farcasterについてさらに深掘り』章まで読み飛ばして頂いて結構です。
本章の参考資料:
What Is Farcaster and How to Get Started With Warpcast
Farcaster’s Big Moment with Founder Dan Romero
🔎The hot new crypto app
2 Ready-to-Use Farcaster Frames
What is Social Proof-of-Work? w/ Dan Romero – The Chopping Block Ep 608
How Decentralized Social Network Farcaster Hopes to Eventually Get to One Billion Users – Ep. 607
Truth About Farcaster’s Growth – The Chopping Block Ep 605
2 Farcaster -分散型Socialの未来- (1/2)
Farcaster/warpcastの歩き方
Farcasterのミニアプリ #319 Bspeak! 2024年1月29日号
twitter.com/a16zcrypto/status/1757835575682609204
twitter.com/BanklessHQ/status/1752412878194487559
Frameアプリ構築やキャスト/ユーザー情報の取得を試みる


さて本章では、「Neynar」というFrameアプリやFarcaster APIツールを構築できるフレームワークを用いて、以下2つについてステップバイステップで解説していきます。
- 簡単なFrameアプリを構築してデプロイしてみる
- 特定のキャストやユーザー情報を取得してみる
① 簡単なFrameアプリを構築してデプロイしてみる


執筆時点において、NeynarのFrame Studioにはいくつかのテンプレートが用意されています。これを使うことで、画面遷移型の簡易ゲームや、ノーコードのNFTミントツールなどを簡単に構築することができます。
今回は、左から2番目のMemeテンプレートを用いて、英語圏の方に対して『寿司と天ぷら、どっちが好きかを問うアンケート』という簡素なFrameアプリを構築してみたいと思います。


作業はとても簡単で、「ユーザーに表示する画像とテキスト、選択式のボタンを、それぞれ入力していくだけ」です。



今回筆者は簡素なアンケートアプリを構築しましたが、全体のページ構成としては、以下のような感じです。


完成したら、 画面右下にある「Publish」ボタンをクリックし、再度タイトルリンクをクリックして編集画面に入ると「Preview Frame」ボタンが表示されるようになるので、テスト画面で実装したものを確認することができます。


エラーが表示された場合は、画面右側で×印になっている箇所を修正してみてください。例えば、画像下に表示される文字数(ここではWhich do you prefer?
部)が32 bytesを超えていたりするとエラーが返されるので、文字数を少なくする等の対応が必要です。
完成したら、Warpcastの投稿画面にリンクを貼り付ければ、自動的にFrameアプリとして認識し、埋め込んでくれます。


以上で完成です。このように、Neynarを使えば簡単なFrameアプリを誰でもすぐに構築し、デプロイすることができます。



他にも面白そうなテンプレートが何個か用意されているので、時間があるときに触ってみたいと思います。
② 特定のキャストやユーザー情報を取得してみる
Warpcastで、特定のアカウントリストの最新キャスト(投稿)や、フォローしている人のリストを拾ってくるbotを作って動かしてみているが、感触としては結構良い感じ🤖
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) February 29, 2024
Lensもpermissionlessになったから、それと併せてTwitter に勝る情報収集ツールとして活用していきたい。 pic.twitter.com/wBo1nItudz
続いて、「Warpcast上の特定のキャストやユーザー情報を取得する」という、簡易的なデータ取得ツールを構築してみたいと思います。
今回行う具体的なプロセスは、以下の通りです。ステップバイステップで見ていきましょう。
- Neynar APIキーの取得
- SDKのインストール
- APIクライアントの初期化
- APIリクエストの送信
作業に行き詰まった際は、公式ドキュメント(https://docs.neynar.com/docs/getting-started-with-neynar)を見ながら進めると良いでしょう。なお、筆者の作業PCはMacです。
① Neynar APIキーの取得


まずは、Neynarのウェブサイトにアクセスし、「Subscribe now」ボタンをクリックします。そして、「Get Started」ボタンを押すと下の方に自動スクロールされます。今回は、一番安い『スターターパック』に課金します。


支払いが完了すると、ログインページにAPIキーが表示されます。これは後で使うので控えておきましょう。
② SDKのインストール
SDKをインストールするために、ターミナルを開いて以下のコマンドを実行します。今回筆者はneynar
というディレクトリを作成し、その中で以下コマンドを実行しました。
npm install @neynar/nodejs-sdk


dotenvパッケージをインストールしていない場合は、ターミナルまたはコマンドプロンプトで次のコマンドを実行し、dotenvパッケージをプロジェクトに併せてインストールしておきましょう。
npm install dotenv
③ APIクライアントの初期化
neynar
ディレクトリ内にneynarClient.js
という名前のファイルを作成し、以下の「クライアントの初期化のためのコード」を追加して保存します。(ファイル名はお好きなものをご使用ください。)
import { NeynarAPIClient } from "@neynar/nodejs-sdk";
import 'dotenv/config'; // 環境変数を読み込む
// 環境変数からAPIキーを取得
const client = new NeynarAPIClient(process.env.NEYNAR_API_KEY);
export default client;
プロジェクトのルートディレクトリに.env
ファイルを作成し、その中に上にあるNEYNAR_API_KEY
を格納し、引っ張ってきます。なので、先ほど取得したAPIキーは、この.env
ファイル内に入れておきます。


④ APIリクエストの送信
最後に、main.js
のようなファイルを作成し、APIリクエストの送信をテストしてみます。今回は例として、特定のキャストやユーザー情報を取得するリクエストを記載し、実行してみます。
※コード部分は「定期購読プラン」にご登録いただくと表示されます。
以下のようにリターンされれば成功です。指示通り、特定のキャストやユーザー情報を取得することができました。


- キャスト情報:
- キャスト(メッセージや投稿)のハッシュ値、投稿者、テキスト内容、タイムスタンプなどの詳細が表示されている
- 「We’re permissionless!」というテキスト内容が含まれており、その他のメタデータ(埋め込み、リアクション、リキャストなど)に関する情報がある
- ユーザー情報:
- ユーザーの固有ID(fid)、カストディアドレス、ユーザーネーム(dwr.eth)、表示名(Dan Romero)、プロフィール写真、フォロワー数(140841)、フォロー数(2500)、アクティブステータス(active)などの詳細が表示されている
これを応用することで、今までTwitterで使われていたような分析ツールなどを構築することができます。
現在、TwitterのAPI制限が厳しくなっている状況なので、クリプト領域の有益情報を効率的に取得したい場合には、このようなツールを活用することでリサーチが捗ることが期待されます。
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【中編】Warpcastはweb3時代における「スーパーアプリ」になり得るか|ETHGlobal Frameworksの舞台裏:革新を牽引するファイナリストたちの紹介
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【後編】Warpcastはweb3時代における「スーパーアプリ」になり得るか|Warpcastが拓く未来:次世代スーパーアプリへの野心的な挑戦
Farcasterについてさらに深掘り


なぜFarcasterがこんなに流行っているのか?
Farcasterが急速に成長し、多くのユーザーを引きつけている理由は何なのでしょうか?
本節では、その背後にある要因を掘り下げ、特に「memeコインに関する投機」と「Frames機能のローンチ」による相互作用に焦点を当てて考察します。


現時点でFarcasterが人気を集めている主な理由としては、以下の二点が挙げられています。
- アクティブユーザーへのエアドロップ
- 「Frames」機能の導入
これを詳しく理解するために、まずは時系列順に確認してみると、Farcasterの立ち上げからFrames機能が導入されるまでの間には、大きく分類して以下の9つのキーファクターがあったことが分かります。
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- 最初期は超スロースタート
- 2022年の構想から、Farcasterチームはプロトコル、ネットワーク、Warpcastクライアントを開発し、徐々にコミュニティを築いていく
- 2023年夏、Warpcastは「チャンネル」機能を導入
- 2023年10月までに、WarpcastはオフチェーンポイントシステムとWarpと呼ばれるゲーム内通貨を開始
- なおかつこれらを譲渡不可とし、投機を意図的に防いだ
- memeコインの台頭
- 間もなく、memeコインが Solanaエコシステムで人気を集めるにつれ、Farcasterコミュニティ(ユーザー)は独自のmemeコインを作ることに興味を示し始めた
- Rainbowウォレットのオフチェーンポイントシステムが開始し、Farcasterコミュニティ(ユーザー)は$pointsをローンチ
- わずか24時間で$pointsの価格変動が起こり、Crypto Twitter(CT)の主要人物やインフルエンサーがFarcasterに再び参加するようになる
- 他にも$WOWOW、$SPAMなど、いくつかのmemeコインが続いた
- $DEGENが誕生
- 様々なmemeコインの中で、$DEGENがより強固なデザインとチームを持って登場し、Farcasterのトップmemeコインとなる
- 急速な成長を遂げる土壌が整う
- その後、Modチームがミニアプリを埋め込むデモを行ったことで、FarcasterチームはFrames機能を開発することになり、Warpcastを『ユーザーがWarpcastフィードで直接サードパーティーのアプリとやりとりする潜在的なスーパーアプリのプラットフォーム』へと変貌させ、爆発的な成長の舞台を整えた
- $DEGEN価格が上昇
- 投機筋が$DEGENをFarcasterのトップトークンと見なしたため(Warpはオフチェーンで譲渡不可だから)、価格が上昇した
- 価格の上昇は、より多くの影響力、開発者、ユーザーを惹きつけ、新しいFrames機能を試す機会を与えた
これを見ると、memeコインの人気の高まりや$pointsのローンチなど、Farcasterコミュニティで発生した複数のイベントが成長を加速させ、なおかつFrames機能の導入と相まって大ヒットに繋がったことが分かります。
つまり、「memeコインに関する投機」や「Frames機能のローンチ」という単一の要因ではなく、これらの要素が複雑に絡み合って相乗効果を生み出し、結果として大きな動きを生むことに成功したということができます。
ボトムアップなアプローチ


ここまで、Farcasterの流行の背景を詳しく見てきましたが、これに似た現象が過去に「Loot」というNFTコレクションでも起こっていたことをご存知でしょうか?
実は、Lootエコシステムの初期段階では、「$AGLD」や「$MAGIC」のようなトークンがコミュニティによって生み出され、古参メンバーにエアドロップされるなどして、経済的価値を生んでいました。さらに、Loot NFTは10~20ETHという高価格で取引され、当時大きな注目を集めていたのです。
Lootエコシステムの初期段階では、特定のLoot NFTの特性(traits)を持つユーザーを集結させるコミュニティ形成の試みが行われていましたが、全体的には明瞭なインセンティブが不足していたと言えます。そういった背景の中で、Syndicateの共同創設者であるWill Papper氏は2021年9月2日に「Loot保有者専用のガバナンストークン」としてAGLDを立ち上げ、1 Lootあたり10,000 AGLDをエアドロップしたという経緯があります。(中略)家のような「完成品」のNFTではなく、いわば『レンガ』のようなパーツとしてのNFTを売るモデルを採用したことで、LootをベースにしたDAOやNFTプロジェクト、特定の特性(traits)を持つLoot保有者のための通貨「Adventure Gold(AGLD)」など、新たなプロダクトやアプリケーションがボトムアップに生まれ、これらのエコシステムを総じてLootverseと呼称するようになりました。
出典:Lootエコシステム拡大の触媒となるか|先日メインネットローンチが行われた「Loot Chain」と、Lootの過去/現在/未来について徹底解説
そして、Lootはその後、プロトコルの基盤のようなものとして使用され、コミュニティによってLootのメタデータを活用した可視化サービスや、NFTコレクション、ゲーム、イラストなどが次々と展開されることになります。


これを見ると、Farcasterエコシステムにおける「memeコインに関する投機」や「Frames機能のローンチ」などの動きは、Lootエコシステムで見られたボトムアップの開発と共通する部分が多いことが分かります。
Lootがメタデータをオンチェーンに公開し、情報や権利をオープンにしたのと同様に、FarcasterもRSSのようなオープンプラットフォームを提供し、開発者やユーザーにクリエイティブな自由を与え、多彩なソーシャルネットワーク体験の創出を可能にしています。
もしかしたら今後は、2Dにとどまらず、3Dグラフィックを取り入れたFarcaster/Frameアプリがコミュニティによって開発されるなど、ソーシャルメディアの利用方法に革新をもたらす可能性もあるでしょう。
新しいムーブメントの発生源はどこか


近年、クリプトの領域では、様々な新しいムーブメントが次々と誕生しています。新しいムーブメントの誕生は、予期せぬ場所から始まることが多いですが、ではこれらは一体どこから生まれるケースが多いのでしょうか。
新しいムーブメントを探る上でまず注目すべきは、「コアな人たちが集っている場所を見つけること」です。例えば、現在ではFarcasterエコシステムやオンチェーンゲーム、AWなどがホットな領域で、コアな人たちが多く集まっています。
そして、これらの領域は、新しい技術やアイデアが集まりやすくなるため、革新的なムーブメントが生まれやすい土壌を整えていきます。そして、そこに集う人々の視点や彼らが関心を持つ情報、生み出される成果に対してアンテナを張っておくことが重要なポイントとなります。


また、かつてのBitcoinがそうであったように、クリプト領域における新しいムーブメントというものは、往々にしてカウンターカルチャーから生まれることが多いです。つまり、メインストリームからは外れた、あるいはメインストリームに対して異議を唱えるような人たちの間で育まれるため、そういった人たちが「どこで何をしているのか」を知ることで、新しいムーブメントを見つける可能性を高められるでしょう。
例えば、NFTコレクションやDAOの分野では、メインストリームに対するカウンターカルチャーとして、LootやNouns, MathcastlesのTerraformsなどがクリプトコアな人たちが集まる場から生まれてきました。
そしてこれらに共通するのは、誰かが提起した「解く意義のある問い」に対する解決策を見つけるために人々が集まり、そこから自発的な開発が進むというパターンを経ていることです。


Lootの場合も、創業者dom氏がローンチした『テキストしか書かれていないフルオンチェーンNFT』という問いが、異なる分野の人々を引き寄せ、コミュニティの形成、memeコインの誕生、価値向上、新しい派生プロダクトの創出へと繋がりました。
そして、現在のFarcasterも、「ソーシャルネットワークは、Twitterのような中央集権的な形式ではなく、もっとオープンで自由な形であるべきではないか」という問題提起を行った後、Lootと同様の道を辿っています。
逆に、クリプトに限らず、ボトムアップ型アプローチに失敗するケースの大半は、この「解く意義のある問い」を立てることに失敗していることが多いとも言えます。


この文脈で、Farcasterが提起した問いは、クリプト愛好者を中心に広く共感を呼び、多様なバックグラウンドを持つ人々のアイデアが集結し、これらが組み合わさることで、社会に新たな価値をもたらすムーブメントが生まれようとしています。
現在、ビルダーやクリエイターの多くは、Farcasterコミュニティから質の高いフィードバックを受けながら開発を進めているので、クリプト領域で関心の高いプロジェクトの多くは、Farcaster起点で立ち上がっていると言っても過言ではない状況です。
そして、この問いを掲げた旗はまだ立てられたばかりであり、今後「クリプト×ソーシャルメディア」という分野でのさらなる発展が期待されています。



個人的には、AWとのつながりも深いこの領域に注目しているため、Neynarなどを利用してツールを構築したり、コミュニティの中に入ったりしながら、今後の進展に注目していきたいと思います。
本章の参考資料:
Thoughts: on Farcaster growth, innovation, speculation
まとめ
今回は、Farcasterエコシステムの全体像や、FrameアプリやAPIを利用したbotの構築方法、さらにFarcasterがどうしてこれほど人気を博しているのか、その成長の背後にある要因を、時系列に沿って詳しく解説しました。
本記事が、FarcasterやWarpcast/Frame、その他Farcasterエコシステムの深掘り情報などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。
◤ Farcasterエコシステム ◢
— イーサリアムnavi🧭 (@ethereumnavi) March 2, 2024
🟣Farcaster周りの歴史や、Warpcast/Frameアプリについて概観
🟣APIを使ったFrameアプリやツールの開発手順も解説
🟣『なぜこんなに流行っているのか?』について深掘りすると、2021年にLootが辿った軌跡と同じことが判明
詳細はこちら👇https://t.co/sU3D02OrBl
Farcasterの全体像が網羅された記事!
— あつまれ クリプトの森 cryptonomori (@news_no_mori_) March 2, 2024
ユーザーもそうでない人も読んでほしい
Farcasterコミュニティが醸成された背景(現在進行形)や、frameの作り方まで! https://t.co/DK5BlqP3kg
Farcaster(Warpcast)関連で読んだ記事の中で一番わかりやすかった https://t.co/MWdfOKWFE5
— Omanju (@0xomanju) March 2, 2024
わかりやすかった😭✨ https://t.co/4jRPaoO1Av
— スズリエ (@SuzuRie10) April 3, 2024


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