今回は、2022年10月に$7Mの資金調達を行い、先日オンチェーン広告&分析プラットフォームの立ち上げを発表した「Spindl」というプロジェクトについて解説します。
Spindlは、web3スペースにおける広告効果測定(アトリビューション)の課題を解決するために設立されました。そんなSpindlが最近、DaylightやSerotonin、Collab.landとのパートナーシップを発表し、注目を集めています。
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web3マーケティングにおいて、「広告」というものはあまり機能しないのではないかという意見も見られる中で、なぜ彼らはこのタイミングで「オンチェーン広告」の領域に舵を切ったのでしょうか。
また、オンチェーン広告「Spindl」がどのような仕組みやアプローチで、web3スペースにおける「広告」システムを機能させようとしているのかについても、順を追って詳しく見ていきたいと思います。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、web2/web3スペースにおける「広告」の違いについて紐解きながら、web3スペースにおいて「広告」は悪なのかについて考えていきます。
続いて、オンチェーン広告「Spindl」の概要や仕様、誕生の背景などについて、図解を交えながら解説します。
最後に、「広告」以外にweb3プロジェクトを普及させるために必要な要素について、いくつか列挙しながら考察します。
本記事が、オンチェーン広告「Spindl」の概要や仕組み、web3領域におけるマーケティングなどについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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web3スペースにおける「広告」の意義
web3マーケとコミュニティに関する10のルール
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) May 25, 2024
🔸広告をやめる
🔸競争相手はインフルエンサー
🔸システム的アプローチ
🔸コミュニティへの投資
🔸主要アカウントでコミュニティコンテンツ共有
🔸知識よりも関連性
🔸戦略のコピー禁止
🔸質が量より重要
🔸スケールしないことを行う
🔸実際の人々を尊重 https://t.co/PJgM8Wzpio
この投稿では、一つ目のルールとして「stop posting ads(広告をやめる)」と言及されています。
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しかし、筆者個人の意見として、実際にはweb3スペースのほぼ全ての活動・事象が、何らかの形で「広告」の性質を帯びているのではないかと考えています。なので、まずはこちらについて説明します。
web3スペースでの活動・事象が「広告」の性質を帯びるとは?
例えば、FarcasterではFrameアプリを通じて、簡単にcast(投稿)内からワンクリックでミントを行うことが可能です。
このプロセスにおいて、紹介者にはミント手数料の一部が付与される訳ですが、これは実態としては「成果報酬型広告」の一形態だと言えます。
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これと同じ原理で、DeFiにおけるリファラルリンクも「広告」の役目を果たしています。
XなどでDeFiページのリンクを掲載している人には、自身が招待したユーザーが支払った手数料の一部を受け取ったり、少額の招待報酬を受け取ることができるというインセンティブがあります。
また、最近注目を集めているミームコインも、その価格が話題性によって左右されることから、「アテンションのバロメーター」として機能しています。
例えば、イーロン・マスク氏がDogecoinに関するツイートをすると、その価格が上昇することはよく知られています。実際、彼がX上でDogecoinのAI生成画像を投稿した際には、$DOGEの価格が8%上がったという報告もあります。
— Elon Musk (@elonmusk) May 24, 2024
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イーロン・マスク氏が$DOGEを保有しているかは不明ですが、もし仮に保有していた場合、自身のポートフォリオが向上するというインセンティブがあるため、広告案件として頼まれなくてもDogecoinを宣伝する動機が彼にはあることになります。
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こうした一部の事例からも分かるように、web3スペースでの活動・事象の多くは「広告」の性質を持っており、アテンション経済の重要な要素として考えることができます。
web3スペースにおいて「広告」は悪なのか?
web3マーケとコミュニティに関する10のルール
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) May 25, 2024
🔸広告をやめる
🔸競争相手はインフルエンサー
🔸システム的アプローチ
🔸コミュニティへの投資
🔸主要アカウントでコミュニティコンテンツ共有
🔸知識よりも関連性
🔸戦略のコピー禁止
🔸質が量より重要
🔸スケールしないことを行う
🔸実際の人々を尊重 https://t.co/PJgM8Wzpio
さて、冒頭で「stop posting ads(広告をやめる)」と書かれたツイートを紹介しましたが、ここで投稿者が言いたいのは、web3スペースにおいて「広告」が必ずしも悪いものであるとは限らない、ということだと個人的に解釈しています。
要するに、web3スペースでプロダクトを宣伝する際には、従来のような直接的な広告ではなく、自然な形で宣伝することが重要だということです。
例えば、web3での活動の多くが実質的に広告的な性質を帯びていることを活用したり、最終章でも述べるようにKOL(キーオピニオンリーダー)や共生マーケティングを利用することで、広告に対する抵抗感を減らしつつ、web3カルチャーに適した形式で、より効果的にプロダクトを宣伝することができます。
web2/web3スペースにおける「広告」の違い
ところで、web2スペースにおける「広告事業」で成功を収めている代表例として、Google(Alphabet)やMetaが挙げられます。
GoogleやMetaのような大企業は「広告」に依存しており、広告収入から莫大な利益を得ています。実際、Googleの売上の約4分の3は広告事業によるものであり、Metaの売上の約96%は広告収入から得られています。
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これらの企業は、何十億ものユーザーを抱えており、そのユーザーデータを活用して非常に精密なターゲティング広告を提供することが可能です。そのため広告主にとっては、正確なターゲティングができるため、投資対効果が高くなります。
また、Googleの検索エンジンやGmail、MetaのFacebookなどは、基本的にエンドユーザーが無料で利用できます。そのため、事業者側としては、運営費用を広告収入で賄わなければならないというビジネスモデルになっています。
一方、執筆時点におけるweb3プロジェクトの多くは、既存の「広告システム」に頼らないアプローチを取っています。一体なぜなのでしょうか。
考えられる要因はいくつかありますが、まず現状では「精密なターゲティング広告を提供することが難しい」ということが挙げられます。
また、それに加えて、web3スペースではユーザーと開発者の多くが「トークンホルダー」としてネットワークの成長に参加するという、web2スペースとの構造上の違いが挙げられます。
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「トークン」の誕生による構造の変化により、広告に依存せずともトークンがセルフマーケティングの役割を果たすため、既存の「広告システム」に頼る必要性がそれほどないのです。
要するに、コミュニティがトークンを保有して、web3プロジェクトとの利害関係を持つことで、それを自ら広めたいと思うインセンティブがはたらき、web2スペースで繰り広げられているような「広告」に頼らないモデルが確立されていると考えられます。
「web3×広告」領域で資金調達
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2022年10月、Spindlというweb3マーケティング企業が、「web3スペースにおける測定とアトリビューションのための新しいプラットフォーム」として、シード資金調達を発表しました。この資金調達ラウンドで、Spindlは総額$7Mを獲得しています。
この投資ラウンドを主導したのはDragonfly CapitalとChapter Oneで、さらに、Multicoin CapitalやPolygon Ventures、Solana Ventures、元Coinbase CTOのBalaji氏、FarcasterのDan Romero氏など、多くの著名な投資家もこのラウンドに加わりました。
この資金調達により、Spindlはweb3の世界で重要なアトリビューション問題を解決し、持続可能なユーザー獲得経済の実現を目指しています。
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そして先日(2024年5月22日)、DaylightやSerotonin、Collab.landとのパートナーシップを発表し、オンチェーン広告プラットフォームの立ち上げをアナウンスしました。
web3領域において「広告は必要ない」という風潮がある中で、なぜ彼らがオンチェーン広告システムを構築しようとしたのか、そしてそれが既存のweb3スペースをどのように変革していくのかについて、本記事では詳しく探ります。
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オンチェーン広告「Spindl」について
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概要
Spindlは、web3スペースにおける広告システムを提供し、さらにアトリビューション(※)やアナリティクス、顧客基盤などを、全て一箇所で管理することができる、オールインワンのプラットフォームです。
Spindlでは、従来のCPM (cost per mille / 1,000インプレッションあたりのコスト)モデルとは異なり、オンチェーンでのコンバージョン(NFTのミント・トークンスワップなど)に対してのみ広告費用を支払うモデルを採用しています。
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つまり、「オンチェーン×成果報酬型広告」の位置付けのプロダクトになります。
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また、広告をオンチェーンで出稿できるだけではありません。
「Spindl」を使うことで、広告主・紹介者・アトリビューションプロバイダーを結びつけ、以下をはじめとする測定ができる分析ツールとしても活用することができます。
- web3プロダクトのユーザーが、どの流入経路からやってきたのかを追跡する
- 流入したユーザーがプロダクト内でお金を使ったのか、ヘビーユーザーとして定着しているのか調べる
- 過去24時間にNFTをミントしたユーザーや、特定の価格で取引を行ったユーザーを絞り込む
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このように、web3スペースにおける広告システムを提供することに加え、アトリビューションやアナリティクス、顧客基盤などを全て一箇所で管理することができる、web3事業者向けのオールインワンSaaSを提供します。
なお執筆時点では、Spindl社が唯一のアトリビューションプロバイダーとなっていますが、将来的には他のアトリビューションプロバイダーもネットワークに参加できるように開放予定となっています。
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ちなみに、Spindlは現在トークンを発行する計画はないそうですが、将来的には考慮する可能性があると言及しています。
使用チェーン
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Spindlは特定のブロックチェーンに依存しておらず、広告主がイベントの追跡・支払いを希望するブロックチェーンを選択することが可能です。
執筆時点ではEthereumやBaseなどを含め、多くのEVM互換チェーンに対応しています。
メリット
Facebookの元社員で、現SpindlファウンダーのAntonio Garcia Martinez氏は、Spindlを採用することで、広告収益が発生してから着金に至るまでの資金の流れを透明かつ公平にしながら、プライバシーも保護できると述べています。
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例えば、web2スペースにおける広告システムのように個人情報を使用する必要がなく、公開されているオンチェーン取引データのみを利用するため、ターゲティング精度を向上できると主張しています。
なお、広告自体は従来通りオフチェーンで提供されますが、広告主はスマートコントラクトを通じて資金を送金し、アトリビューションプロバイダーがオンチェーンデータを確認して販売に結びついた場合にのみ、資金が公開される仕組みになっています。
この続き: 6,056文字 / 画像5枚
まとめ
今回は、オンチェーン広告「Spindl」がどのような仕組みやアプローチで、web3スペースにおける「広告」システムを機能させようとしているのかなどについて解説しました。
本記事が、オンチェーン広告「Spindl」の概要や仕組み、web3領域におけるマーケティングなどについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。
📝オンチェーン広告|元Facebook社員が立ち上げ、シードラウンドで$7Mを調達。web3スペースにおける広告効果測定の課題を解決する「Spindl」を紹介
— イーサリアムnavi🧭 (@ethereumnavi) May 28, 2024
"web3スペースにおいて「広告」は必要ない"… pic.twitter.com/EEJ3bi8jty
仕組みを見た感じだと冒険者ギルドっぽいと思った∈(・ω・)∋
— 貫く剣 | 🪞➕🧬♦️ (@piercesword) May 28, 2024
依頼作成>請負者登録>依頼料入金>成果測定>報酬支払
今は広告特化だろうけど発展していけば汎用的依頼請負プロトコル的なものになる可能性https://t.co/AH9fDxelaB
つまり必要なのはギルドの受付嬢!(くたびれ系おっさんでも可)
面白そう。
— フェニックス (@FrozenPhenixx) May 28, 2024
けどあまり高度なアドテックが入ってくると色々変わりそうだなってのと、名前が。。。全く別物なのは理解してるんだけど名前が😖
※参加はしてませんでした https://t.co/RJwu3aN5Tn
スピンドル
— yamapyblack | Baratie🧑🍳🌍 (@yamapyblack) May 28, 2024
うっ、頭が… https://t.co/7JIHYYGEJs
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