ブロックチェーンゲームの新たな生存戦略とメディア集客装置としての可能性を探る

昨今のクリプト関連プロダクトは、時間の経過とともにますます複雑化しつつあります。

DeFiなどでその傾向が特に顕著ですが、ブロックチェーンゲーム領域でも同様の傾向が見られます。特に、他との差別化を図るために、複雑なゲーム性やトークンモデルを採用するケースが増加しているように感じます。

また、ブロックチェーンゲーム単体での持続可能なマネタイズモデルも依然として未完成であり、さらに長期的に成功を収めている事例としては、Axie InfinityやSTEPNなど数える程度しか存在しないのも事実です。

そんな「複雑化しながらも単体での収益化が実現できないブロックチェーンゲーム」へのカウンターとして、最近では「ブロックチェーンゲーム×ポイ活」の事例が、Telegramから派生したTONエコシステムで台頭してきていることをご存知でしょうか。

出典:https://x.com/Delphi_Digital/status/1810736751490527309

後述する「Hamster Kombat」が代表例ですが、MetaMaskやトークンの送金などが一切必要なく、Telegramのアカウントさえあれば誰でもすぐに始められるカジュアルブロックチェーンゲームとして、今話題となっています。

また先日、Pixelverseという有名なブロックチェーンゲームも、TelegramベースのTap to Earnゲーム「PixelTap」を立ち上げ、200万ドルの資金を調達を行い話題となりました。

ちなみに、執筆時点でTONの時価総額は9位に入っており、Telegramは世界で4番目に人気のあるメッセージングアプリで、月間アクティブユーザーは9億人を超えています。

出典:https://www.coingecko.com/
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こうした背景には、昨今の複雑化しすぎたブロックチェーンゲームに対するカウンターとして、より多くの人にリーチできるプラットフォーム上でカジュアルゲームを構築しようという流れがあると個人的には考えています。

出典:カウンターカルチャーの意義と重要性|Daily Stock #32

また、Hamster Kombatでは、ブロックチェーンゲーム単体として持続可能なマネタイズを実現しようとするのではなく、外部メディアにユーザーを上手く誘導することで、メインの収益源をゲーム以外のところから引っ張ってこようとしている点も斬新だと思います。

このあたりの独自の戦略についても、詳しく述べていきます。

でははじめに、この記事の構成について説明します。

STEP
ブロックチェーンゲームのビジネス上の課題

まずは、現行のブロックチェーンゲームが抱える収益面と体験面での2つの課題について解説します。

STEP
「Hamster Kombat」について

続いて、TONエコシステムのブロックチェーンゲーム「Hamster Kombat」の事例を見ていき、外部メディアに誘導するための入口としてゲームを活用する事業アイデアについてご紹介します。

STEP
メディア集客装置としてのゲームを考える

最後に、メディア集客装置としてゲームを活用する戦略とその具体的な事例について詳しく取り上げながら、マニアックな考察をまとめます。

本記事が、Hamster Kombatの概要やブロックチェーンゲームの課題・新たなマネタイズ手法などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

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目次

ブロックチェーンゲームのビジネス上の課題

さて本記事では、様々な呼ばれ方をしているweb3ゲーム、オンチェーンゲーム、NFTゲームなどを一括りにして「ブロックチェーンゲーム」と呼ぶことにします。

それを踏まえて、現行のブロックチェーンゲームには、大きく分けて以下の2つの共通課題があると考えます。

  1. 収益的課題
  2. 体験的課題

1. 収益的課題

まず一つ目は、事業者が抱える収益面での課題です。

ブロックチェーンゲームの開発には多大なコストがかかりますが、トークン(NFT/FT)価格の維持のためには、収益(売り上げ)の一部をエコシステムに還元する必要があります。

また、エコシステムにはバケツの穴も存在します。例えばPlay to Earnモデルでは、ゲームをプレイして稼いだユーザーがトークンを売却するため、それによる売り圧力が生じやすくなります。

さらに、VCなどの投資家から資金調達を行っている場合、彼らのトークン売り圧も考慮しなければなりません。投資家は利益を優先するため、ゲームが盛り上がるほど収益を回収するインセンティブがはたらき、エコシステムから持ち出す傾向があります。

こうした要因から、トークンの買い圧力を生み出すための施策として「モメンタムの維持」や「ナラティブの形成」が必要になりますが、現状これらの施策は確立されたモデルがない曖昧なものが多く、収益的課題のソリューションとして有効打にならないケースがほとんどです。

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また、ブロックチェーンゲームなどのアプリレイヤーは、チェーンなどのインフラレイヤーと異なり、ユーザーにコストを負担させることが難しいとされています。

そのため、収益面での課題するためには、支出を抑えるか、トークンの販売などを通じて売り上げを最大化する必要がありますが、これもまたトークンの希釈化という新たな問題を引き起こす要因となります。

そして、一度トークン価格が暴落すると一気にユーザー数減少に拍車がかかり、ゲームの持続可能性が失われる「負のスパイラル」に陥る危険性があります。

これらの要素から、トークン価格の維持と運営の収益確保のバランスが、中長期でのブロックチェーンゲーム事業の運営において、非常に難しい課題だと言えます。

出典:そのコストを誰が負担するのか|Daily Stock #29

以上の事業者が抱える収益面での課題から、ブロックチェーンゲーム誕生初期に掲げられていた「Play to Earn(稼げるからプレイする)」というモデルは、すべてのステークホルダーが利益を求める状況では、サービスの持続が困難だということが明らかになりつつあると言えます。

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この打開策としては、ユーザーにとっては儲けるのが難しく、また投資家にとってはエコシステム外への持ち出しが難しい、長期間にわたる緩やかなロックアップデザインなどが必要です。しかし、このような設計にすると、いずれかのステークホルダーからの評判が悪くなり、人や資金が集まらないリスクが生じるでしょう。

こうした構造上の矛盾も、ブロックチェーンゲームのビジネスにおける課題の大きな要因となっていると考えられます。そのため、さらに抜本的なマネタイズモデルの転換が必要であるように思いますが、その点については次章以降で解説します。

2. 体験的課題

そして、ユーザーにとっての体験面での課題についても触れなければなりません。

現在、世界人口の半分以上がインターネットを利用し、その多くがSNSやYouTube、TikTokなどを通じて可処分時間の奪い合い競争に巻き込まれています。

例えばNetflixも、自身の最大のライバルはAmazonプライムやDisney+などの競合ストリーミングサービスではなく、それ以上にFortniteやTikTokなどのユーザーの可処分時間を奪うサービスだと言及する程です。

また以前、ナカイドさんの動画で、ゲームユーザーの過処分時間(自由に使える時間)が頭打ちになり、1本のゲームに絞って長時間を費やす傾向が強まっていることや、古いタイトルのアップデートや長期間遊べるゲームの開発が今後の生き残りの鍵となると指摘され、話題になりました。

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