最近、クリプト業界ではAIエージェントについての話題ばかりが目に入るようになってしまい、個人的に少し退屈しているところがあったのですが、noteの記事を漁っていたところ「NFTブーム」について論じられた記事を発見し、とても興味深かったのでご紹介します。
こちらの記事では、NFTアートのブームが終息し、個人NFTアートの販売者は新たなジャンルを開拓する必要があることや、クリプト/Web3/NFTの3ジャンルは明確に異なる未来像を持ち、各々の進化が進んでいることなどが指摘されていて、大変興味深い内容だったので、まだ目を通されていない方はぜひご覧になってみてください。
そういえば、2024年にも「NFTは終わった」といった類の記事がいくつか見られ、そのいくつかはDaily Stockなどでもご紹介してきましたが、こうした目を瞑りたくなるような指摘は大変意義深いものだと個人的に思っているので、意識的に目を通すようにしていたりします。
こうした昨今のNFT業界全体の状況を鑑みれば、クリエイターの立場では多くの時間やコストを割いて取り組む場ではなくなったのかもしれません。先ほどの記事にも記されている通り、NFTはあくまでツールの一つに過ぎないわけですから、モメンタムを欠いた現在のような状況に固執し続けるべきだという主張は、無責任であると個人的には思います。
一方で、かつてのNFTが「チェーンの半永続性」や「中〜高価格帯での販売モデル」に特徴づけられていたのに対し、最近では『L2を活用した低額ミントによるNFTムーブメント』が観測されつつあり、新たな萌芽が見え始めているようにも感じられます。
Rodeo is exploding in popularity right now 👀
— Matt O Brien (@mattob_eth) January 9, 2025
Yesterday, the “creative social network” recorded a record breaking 1.76 million mints
Here’s the details you need to know ⬇️:
About 8 months ago the same team that built @foundation (NFT art marketplace) came to a realisation…… pic.twitter.com/XqzoAsxjDd
詳細は後述しますが、RodeoはNFTアートマーケットプレイス「Foundation」のチームが開発を手がけるオンチェーンSNSアプリで、去年末あたりから急速にDaily Active MintersやDaily Active Postersが増加し、オンチェーン指標が盛り上がりを見せ始めています。
こうした背景や現在の状況を踏まえて、本記事では「Rodeo」の基本的な概要について分かりやすくまとめつつ、Rodeoが流行っている要因や低額ミントの潮流などについて、筆者の私見を交えながら考察していきたいと思います。
NFT市場が成熟する中で、Rodeoがどのようにして新たなムーブメントを生み出しているのか、そしてかつてのNFTの姿とは一線を画す「Rodeo」が何を目指し、どのようにして人気を集めているのかについて、順を追って探っていきます。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、Rodeoというプロジェクトの概要について簡潔に情報をまとめ、収益を得る仕組みや開発チームに関する情報、実際に使用する方法などについて解説します。
続いて、RodeoのDaily Active MintersやDaily Active Postersが増加している要因について、筆者の私見を交えながら考察します。
最後に、いいねに代わる新たな選択肢としてのミントボタンの可能性や、NFTの低額ミントの潮流がもたらす懸念について、ポジティブ・ネガティブ両面から本潮流について俯瞰しながら考察していきます。
本記事が、Rodeoの概要や流行っている要因、新しいNFT領域におけるムーブメントの萌芽などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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「Rodeo」について
概要
Rodeoは、BaseとFarcasterベースのオンチェーンSNSアプリで、「今この瞬間を共有する」というコンセプトに基づいて設計されています。
ユーザーが投稿をNFT化し、他のユーザーがそれを0.0001 ETH(約25セント)で収集できる仕組みを提供していることから、「低額ミント」の潮流を生み出した先駆けプロジェクトの一つであると筆者は認識しています。
また、通常のオンチェーンでのNFTミントが、価格設定やマーケット戦略など複雑な要素を伴うのに対し、Rodeoではシンプルさを追求し、ユーザーが気軽に「その瞬間をシェア」できる仕組みを提供しています。
例えば、投稿は24時間限定で閲覧・ミント可能であり、この時間ベースの希少性がRodeoの特徴的なポイントの一つであると筆者は認識しており、いわば「オンチェーンInstagram」みたいなものだと思っています。
このように、NFTコンテンツの売買ではなく、その瞬間を楽しむことに重きが置かれていることから、従来までのNFT売買モデルとは一線を画していると言えます。
収益を得る仕組み
Rodeoでは、ユーザーが投稿をミントすることや、他のユーザーのミント行動に影響を与えることで収益を得ることができます。
ミント費用の分配は、上図の通り作成者(投稿者)が収益の50%を受け取り、投稿をシェアしたコレクター(他のユーザーのミントを促した人)が25%を受け取る仕組みです。そして、残りの25%はRodeo運営の収益となります。
このように、Rodeoでは「他者へのインフルエンス力」や「共有行動」を報酬化することで、従来のSNSの価値観を刷新し、新しいソーシャルエコノミーの形を示しています。
開発チーム
実は、Rodeoの開発・運営を行っているのは、NFTアートマーケットプレイス「Foundation」のチームです。
2020〜2021年には、Beepleの事例などを契機に、1/1デジタルアートNFTが盛り上がりを見せていましたが、時間の経過とともにその需要は減速し、Foundationは損益分岐点に達するのに苦労していたそうです。
そこで、彼らはチームの規模を大幅に縮小し、新しいビジョンの実現に取り組み始め、それがRodeoの開発の開発に繋がりました。
Rodeoでは、従来のようにアーティストが1/1 NFTを販売するのを支援するだけでなく、アーティストが低価格のオープン・エディションを鋳造できるInstagramのようなアプリとして構築されています。
次章で詳述するように、洗練されたUIUXによってオンボーディングを簡素化したり、クレジットを購入するためのApple Pay統合など、より広い層の人たちに使われるクリプトアプリにすることに力を注いでいることが印象的です。
使用方法
Rodeoを使用するためには、まず公式サイトメールアドレス登録かウォレット接続を行い、ウォレットにETHを送金し、ガス代として利用できる準備を整えます。
NFTの作成自体はとてもシンプルで、画像や動画をアップロードし、タイトルやキャプションを付けるだけです。なお、投稿をNFTとしてミントする際には、トランザクションを承認することで、ERC-1155規格のNFTとして発行されます。また、Farcasterに投稿を自動的に共有する機能が用意されており、視認性を高めることもできます。
収集したい投稿があれば、フィードを選んで「Collect」ボタンからNFTをミントすることで、自分のプロフィールにコレクションとして表示されます。ミントした投稿にはコメントを残すことができ、他のユーザーとの交流を深めることも可能です。また、複数の投稿を集めた場合には、お気に入りの投稿をまとめてSNSで共有することもできます。
このように、RodeoはNFTの作成と収集をシンプルかつ効率的に行えるプラットフォームであり、従来までのNFT収集とは異なる「低額ミント」の潮流を生み出しながら、今を楽しむことに焦点を当てた新しいタイプのソーシャルサービスだと表現できます。
ちなみに、この『今を楽しむ』という要素は個人的にAI時代に重要なコンセプトの一つになると考えていて、類似プロジェクトには「Moshicam」や「zora」などが挙げられます。
こちらに関しては本題から逸れるので本記事では詳述しませんが、以前キリフダ社の2025年予測レポートの中で詳しく書いたので、興味がある方は以下をご参考ください。
📝記事寄稿のお知らせ
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) December 25, 2024
キリフダさんの年末レポートを一部執筆させていただきました(30,000字レポートが無料公開…👀)
derioパートでは、2025年のクリプトは何が流行りそうかについて、気合を入れて『10,000字』書かせていただいております✍️
年末年始の読み物として、ぜひご一読ください!🎍 https://t.co/ZGmE01b5vk pic.twitter.com/BqngTvcyss
Rodeoが流行っている要因
2024年には、『NFTは終わった』という意見も多く見られた中で、、「低額ミント」や「24時間限定で閲覧・ミント可能」といった新たなモデルを提唱することで、ソーシャル性を持たせたNFTプラットフォームとしての地位を獲得しつつある印象を抱いています。
では、なぜこれほどまでにRodeoが多くの人に受け入れられ、2025年初頭になってもアクティブユーザーが多い状況を維持できているのでしょうか?
本章では、こちらについて筆者の私見を交えながら、詳しく掘り下げていきたいと思います。
要因1:新しいNFTの役割を提唱
まず、Rodeoが注目される理由の一つは、XやFarcasterなどのSNSと連携し、既存のソーシャルグラフを活用することで、「Rodeo内での活動が友人や知人の目に触れやすくなり、NFTを通じたつながりが強化される」点にあると考えられます。
例えば、ユーザーがRodeoでコンテンツを投稿すると、彼らの既存のソーシャルグラフを基に関連性の高い人々にその投稿が表示され、その結果、投稿者の友人・知人がNFTを収集しやすくなり、コミュニティ全体でのエンゲージメントが促進されます。
また、従来のプラットフォームでは、NFTは匿名的な取引の対象として扱われることが多かったのに対し、Rodeoではユーザー同士がより親密なコミュニケーションを築ける仕組みが整っていたり、ソーシャルグラフを基盤としたコミュニティ指向のアプローチにより、ユーザー間のつながりを重視しています。
こうした点から、RodeoがNFTを単なる資産としてではなく、ソーシャルな交流の一部として位置づけていることにより、ソーシャル要素の高いサービスとしての地位を確立しつつあり、これが一定のニーズを生み出し始めたのではないかと推測しています。
なお、近年のNFTの資産としての役割の変化については、以下の記事でも言及しているので、興味がある方は併せてご参考いただけると幸いです。
要因2:多様な利用者層へのアプローチ
ちなみに、RodeoではPFPやアート作品といった従来のNFT市場でよく見られる題材にとどまらず、日常生活の瞬間や人生の一大イベント(趣味、イベント、結婚など)といった場面にもミント機能が活用され始めています。
こうした使われ方によって、従来のSNSのような単なる「いいね」ではなく、その価値を認めたユーザーが金銭的な支援を行うという新しい形のエンゲージメントが生まれているところが、個人的に興味深い現象だと考えています。
こうした現象を紐解くと、中額〜高額のアート市場だけに依存するのではなく、誰でも気軽に参加できるRodeoの設計が、多様なユーザー層を引き付けているのではないかと筆者は考えています。
ユーザーに対して、「NFTを作って販売するのであれば、それなりの価格にしなければならない」といった類のプレッシャーから解放し、「敷居の低さ」を提示したことが要因として大きかったのではないでしょうか。
そして、このような「敷居の低さ」というのは、ブームを巻き起こすために必要な要素の一つだと思っています。
以前、上のDaily Stock記事で詳述しましたが、漫才やHIPHOP、格闘技などの既存産業においても、「ブームを巻き起こすためには、まずは何よりも母数を増やすことが大事」という教訓があります。
そして、これが現在のクリプト業界には足りていないのかもしれないと思っています。例えば、以前からRWAやZK, DePINなどは流行りそうだと言われているものの、一般層からすると敷居が高いですし、お金もかかり、調べるコストも高いです。
そんな中、pump.funのようなプラットフォームが多くの著名人などから注目を集めたように、Rodeoも「NFT発行」の敷居を下げたことで、多様な利用者層を巻き込むことに成功しつつあるのかもしれません。
要因3:洗練されたUIUX
実際に使用してみると分かりますが、Rodeoのインターフェースは、Instagramに似た直感的で視覚的に優れたデザインを採用しており、ユーザーは気軽にNFTを投稿・収集できます。
このように、既存SNSのようにUIUXが洗練されていることで、NFT初心者でも簡単に操作でき、これが参加のハードルを下げる一因となっていると考えられます。
というのも、クリプトサービスの多くはオンボーディングが長年の課題とされており、その結果として裾野を広げることの難しさが一層助長されていると指摘されてきました。
web3ゲーム領域においては、2024年に「Hamster Kombat」を始めとするTelegramベースのゲームなどが初心者層を取り込み目覚ましい成長を遂げましたが、Rodeoにおいてもこうした敷居の低さが敷居を下げる一因になったと思われます。
また、Rodeoが提唱する「ソーシャルファースト」の設計思想を通じて、投稿が即座に収益に結びつく仕組みを提供している点や、24時間限定の投稿システム、「楽しさ」を重視した設計なども、体験価値として優れています。
ユーザーがコンテンツを投稿し、それを他のユーザーが収集することで、投稿者は経済的なリターンを即座に得られますが、こうした仕組みが従来のNFTプラットフォームが提供する単純な売買モデルを超えた新しい体験として、一定のユーザーから支持される要因になっているのではないかと考えています。
まとめ
このように、「Rodeo」はNFT市場における新しい可能性を切り拓くプロジェクトとして、従来の枠組みにとらわれないアプローチを示した事例だと言えます。
「低額ミント」や「ソーシャルグラフの活用」、さらに洗練されたUIUXを通じて、NFTを単なるデジタル資産ではなく、”瞬間”を共有し、”楽しむ”ためのツールとして再定義したところが、興味深いポイントだと考えています。
その結果、『NFTが終わった』と言われる状況下においても、新たなモデルを構築しながらNFT市場への参加ハードルを下げ、多様なユーザー層を取り込むことで強固なコミュニティの形成に成功しているのではないでしょうか。
- いいねに代わる新たな選択肢としてのミントボタン
- NFTの低額ミントの潮流がもたらす懸念
低額ミントの潮流のプラス面・マイナス面は何か
いいねに代わる新たな選択肢としてのミントボタン
この続き: 3,815文字 / 画像5枚
まとめ
今回は、「Rodeo」の基本的な概要について分かりやすくまとめつつ、Rodeoが流行っている要因や低額ミントの潮流などについて、筆者の私見を交えながら考察しました。
本記事が、Rodeoの概要や流行っている要因、新しいNFT領域におけるムーブメントの萌芽などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。
◤ Rodeoについて ◢
— イーサリアムnavi🧭 (@ethereumnavi) January 14, 2025
*️⃣NFTアートマーケットプレイスFoundationのチームが開発を手がける、Base上のオンチェーンSNSアプリ
*️⃣低額ミントの潮流を生み出し、『NFTは終わった』という意見を覆す
*️⃣流行っている要因や、プラス面・マイナス面について考察
詳細はこちら👇https://t.co/cgIM4iZ800
Rodeoいいですよね https://t.co/ijgFtaCfZg
— 左だけなで肩 (@ndgtlft) January 14, 2025
Rodeoは最近推しの人が使い始めて俺も使うようになった∈(・ω・)∋
— 貫く剣🧩 | ∈(ai16z)∋ (@piercesword) January 15, 2025
初期の頃(夏)に比べてUXがかなり良くなってる印象
チェーンはBaseだけどいい意味でBase感がうすい気がする(Zora比較)
投機性もある👀👀https://t.co/t4u7OTAmuh
ちなみに俺も大葉さんのnote読んでてまさにこれじゃね感を覚えたw
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