どうも、イーサリアムnavi運営のでりおてんちょーです。
二次流通価格が絶対にmint価格を下回らないNFT
突然ですが、そんな魔法のようなNFTがあったら、mintしてみたいとは思いませんか?
Twitterでもアンケートを取ってみましたが、『思う』派の方が明らかに多かったです。
二次流通価格が『絶対に』mint価格を下回らないNFT(Ethereumチェーン発行)があったら、mintしてみたいと思いませんか?
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) December 3, 2021
一般的にNFTというものは、その唯一性から二次流通の価格が安定しづらいといった性質を帯びています。

NFTを決まった価格で買い取ってくれる仕組みやサービスがあれば良いのになぁ
そんなときに、今回ご紹介する「Burnables NFT」に備わっているburnの仕組みが役立つと思い、このNFTをピックアップして解説したいと考えました。
今後、このような仕組みを兼ね備えたNFTが主流になったりブームになる可能性は十分考えられるので、今のうちに先取りして理解しておくといずれ役立つ時が来るのではないかと思います。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、Burnables NFTの概要について分かりやすく解説していきます。
次に、概要を理解した上で、どのような部分が優れているのかについて一つずつ解説していきます。
最後に、Burnables NFTのような一見すると開発者にメリットがなさそうなNFTについて、どのようなメリットがあるのかを試験も混えて考察していきます。
本記事が、Burnables NFTやその画期的な仕組みについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
また、今回この記事を執筆するにあたり、Burnables NFTの開発者である@zeroxjakeさんに、何点か直接インタビューさせていただきました。



以後、お答えいただいた箇所については、分かりやすくするためにこのような形で表記いたします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。


「Burnables NFT」とは?


Burnables NFTは、2021年10月13日に事前告知なしでローンチされたNFTプロジェクトです。
後ほど「コントラクトを覗いてみよう」の節で解説しますが、このNFTの肝となる画期的な部分は「mintした価格分のETHを、NFTをburnすることでいつでも取り戻せること」にあります。
当然ながら「いつでも」ということは、運営がその作業を担うという意味ではなく、コントラクトに記述したSolidityのコードに沿って任意のタイミングでETHを取り戻すことが可能でということ。
このような面白い仕組みを備えたBurnables NFTですが、Etherscanの履歴を追ってみると、リリースから58分ほどで総発行量である999個すべてがmintされていました。
Well, that escalated quickly
— Burnable Labs (@BurnableLabs) October 13, 2021
過去のTwitterやDiscordなどをリサーチしたところ、海外のNFTインフルエンサーや高額NFT保有者のみ入れるDiscordなどで拡散されたことを契機に、事前告知や宣伝広告なくとも58分という驚異的な速さで完売したみたいです。
ではここからは、Burnables NFTの特徴的な点について順に解説していきたいと思います。
アートワークについて
Burnables NFTのアートワークはピクセルアートですが、こちらはフルオンチェーンではなくIPFS保管型となっています。


ちなみに、なぜIPFS保管型でありながらピクセルアートを選択したのか尋ねると、以下のように回答されました。



私がピクセルアートを楽しんでいるという、ただそれだけです!
そして、ピクセルアートは私が最もよく知っていることでした。
traits/raritiesについて
traits(属性)やraritiesに関しては以下のようになっています。
以下は、総発行量999個のBurnables NFTに対して、「3つのtraitsがそれぞれ何個存在するか」という種類及びレア度の情報を表しています。
{
"Traits": {
"3": 999
},
"background": {
"blue": 9,
"red": 13,
"indigo": 28,
"gray": 134,
"black": 322,
"white": 493
},
"flame": {
"dragon": 12,
"redhot": 12,
"campfire": 22,
"ice": 58,
"grayscale": 96,
"torch": 296,
"og": 503
},
"size": {
"large": 9,
"small": 37,
"medium": 953
}
}
コントラクトを覗いてみよう


burnメソッドの中身を実際に見て、どんな処理を実装しているのかを確認してみます。
- まずはrequire文で、burnメソッドを呼ぶETHアドレスが、対象のBurnables NFTのownerであるかを確認しています。
- 次に、requireを通過したら、ゼロアドレスに対して対象のBurnables NFTをtransferしてburn。
- 最後に、burnされたBurnables NFTのカウントを+1して、_widthdrawメソッドによりMINT_PRICE分(0.08ETH)を.callソッドを使って送信しています。
「Burnables NFT」の秀逸な点
以上の概要を踏まえた上で、ここからは「Burnables NFT」の優れている点について解説していきます。
ラグプルなどのリスクから解放される
ラグプルとは、「足元にあるカーペットを突然引っ張る」という意味で使われる用語で、運営などがプロジェクトの暗号資産をすべて換金して、その価値を低下させるような詐欺全般のことです。
Burnables NFTには、先述したようなburnメソッドが備わっていることにより、floor price(最低価格)が仕組み的に設定されることになります。
この仕組みのメリットとしては、例えば
- NFTプロジェクトの運営がある日突然いなくなってしまいロードマップ遂行が困難になった
- プロジェクトがOpenSeaなどマーケットプレイスから消されてしまった
- 法律的にNFTを保有/転送することが禁止された
など、有事の際にもちゃんと機能することです。
NFTを保有するユーザーとしては、例えばmint時に思い描いていたビジョンと違うと感じた際などに、burnすることで必ずmintの際に支払ったETHが戻ってくることになります。
運営が手動でmint価格分のETHを返すわけではなく、スマートコントラクトにmintされた分の全ETHが常に保管された状態になっているので、NFT保有者は任意のタイミングでburnしてmint分のETHを取り戻せるところが味噌
仮に公式Webサイトが閉鎖されたとしても、EtherscanのようなEthereumネットワーク用のブロックチェーンエクスプローラーを使用して直接コントラクトからburnすれば良いでしょう。


これは、NFTをmintするかどうか迷っている人の背中を押すという意味でも、非常に強力かつ効果的な仕組みと言えます。
NFTであることの意味を体現している



NFTって右クリック一つで簡単にコピーできますよね?



ただのJPEGじゃないですか〜
NFTに対するこのような批判はしばしば散見されますが、これに対してBurnables NFTは仕組みの部分が強みとなっているため、簡単にコピーできるものではありません。
またこの実装は、NFTに交換したことで生じるETH値上がり時の機会損失を防ぐことができると考えられます。
例えば、ETHの法定通貨建て価格が上がった際によく見られる意見として、以下のようなものがあります。



NFTじゃなくてETHのまま保有しておけば良かった…
NFTのモノによっては、ETH価格が例えば2倍に上昇してしまったことで、floor priceが1/2倍になってしまうこともあります。
しかしBurnables NFTの場合は、いつでもmint価格分のETH、つまり0.08ETHに戻すことがコントラクトによって保証されているので、ETH価格が例えば2倍に上昇したとしてもその恩恵を授かることが可能です。
これはDeFiにおけるステーキングの仕組みにも似ていると考えられ、要はmint価格分のETHをロックして新たにNFTをmintするという方式であり、ステーキングを解除する際は逆の手順を踏めば良いというわけです。
このようなトラストレスな仕組みをコードで実証し、かつそれを誰でも閲覧することができるという意味で、個人的には「NFTでやる意味がある」を果たしているのではないかと考えます。
プレゼントとしても使える
誰かにNFTをプレゼントする際に、この独自のburnメソッドを備えたNFTを送ることは喜ばれるのではないかと思います。
受け取った人がそのNFTを必要ないと感じれば、いつでもmint価格分のETHにいつでも換金することが可能です。



プレゼント?こんなゴミみたいなNFTいらないよ。。
と思ってしまう、人の思いを踏み躙るような方も一定数この世界には存在します。
そういった思いを受け取り手にされないためにも、このburnメソッドを備えたNFTは役目を果たすでしょう。
このように、手軽にいつでもETHに換金できる機能を備えているという意味で、現実世界におけるギフト券のような使い方もできるのではないかと思います。



お金をプレゼントするのは直接的すぎるけど、ギフト券であればOKみたいな風潮もありますからね
開発者のメリットは何?
Burnables NFTのアイデアは、NFTをmintしようか検討するユーザーにとって非常にポジティブな要素となりえます。
しかし一方で、開発者へのイメリットとしては何があるのでしょうか?
広い意味では、NFTを無料でmintさせていることと同義のため、開発者に対してmint分のETHは全く収入として入らないことになります。
ということでここからは、この仕組みを実装する開発者へのメリットについて考察していきたいと思います。
メリット1 ロイヤリティ収入がある


まず分かりやすい開発者のメリットとしては、OpenSeaなどNFTマーケットプレイス上の二次流通手数料が受け取れることです。



この仕組みを備えていないNFTでもロイヤリティは貰えるよ
と突っ込まれそうですが、そもそもの話、このロイヤリティ収入を受け取るためには、最低限以下の2つを満たす必要があります。
- ユーザーにmintしてもらう
- OpenSeaなどで活発に取引される(≒多くの人が手に入れたいと思う)
ということで、仕組みの部分で面白いと思ってもらったり、かつ儲けを目的としていないということがコードで証明されていることからクリプト的な正当性を満たしていることで、認知と需要を高めることに成功したと考察しています。
ちなみに、2021年12月4日時点におけるBurnables NFTのOpenSea総取引額は131ETHとなっており、このうち3%を開発者がロイヤリティとして受け取るよう設定されています。


つまり現時点では、約4ETHほどがロイヤリティによる収入となっている計算になりますね。
ということで、収入を増やすという意味に限ると、いかに二次流通で取引してもらうかが大切になるので、Burnables NFTを保有していないとできないこと(ユーティリティ・ガバナンス等)を増やしていくことが重要になりそうです。
ちなみにBurnables NFTの開発者は、これについて以下のように回答されました。



私は単にクールだと思うアイデアを思いついて、それを作っただけです。
お金のためにやったわけではありませんし、プロジェクトを立ち上げたときには将来の計画もありませんでした。
なるほど、確かにお金目的のNFTであれば、burnと同時にmint価格分のETHを返還する実装に至ることは難しかったでしょう。
ちなみに、将来的なロードマップもないことを前提としてリリースされたBurnables NFTですが、今後もし何か面白いアイデアなどを思いついたら、試してみたいとおっしゃっていました。



私はコミュニティに対して何の約束もしていませんが、やってみたいアイデアがあればトライしたいと思います。
メリット2 開発者の存在を世界中にアピールできる
また他のメリットとして、一つのNFT作品が多くの人に受け入れられたことで、次の作品への期待度が高まることも挙げられます。
✅公共物
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) December 2, 2021
✅個人の作品(or利益を追求したい)
NFT作品でどちらを実現したいかでやり方は全く異なるし、そのあたり主語を狭めて話されていてとても分かりやすかった。
前者の場合は囲い込まない方が良かったり、CC0の方が良かったり。後者の場合は世界観を大切にしたり、時に著作権ガチガチにしたり。 https://t.co/K3knbrj8pW
最近では、著作権を放棄する「NFT×CC0」の話題も活発に議論されていますが、例えば1作品目を公共物としてのNFTをリリースして多くの人に認知してもらい、次の作品でマネタイズを考えるという方法も、1つのやり方だと筆者は思います。


Burnables NFTはCC0ではありませんし、アートワークもフルオンチェーンではなくIPFS保管型なのでNounsほどコンポーザビリティが高くないため公共物とは表現できませんが、それでも儲けを目的としていないNFTというのは正当性の面でクリプト長者から好まれる傾向は高く、認知を高めるという意味では非常に効果的な実装方法だと考えられます。


そして最近、Burnables NFTと同じ仕組みの「Ethernal Flames」をリリースされていたので、興味のある方はチェックしてみてください。
メリット3 クリプトイノベーター層にNFTを持たせられる
一般的には、何事も最初に人を集めなければならず、いわばそれが最も大変な部分でもあると考えられますが、いつでもmint価格分のETHを取り戻せるNFTであればそれを保有する障壁もほとんどありません。
そのため、NFTを多くの人に持たせたい、かつその多くの人というのはクリプト的な知識がある人やイノベーター層に限定したいなど、ある特定の層にリーチした何かを実現したい際に有効な手段となりそうです。
例えばこの開発者さんが、DAOをつくりたいと考えたり、クリプトイノベーター層に限定して面白いイベントを開催したいと閃いた時に、即座に行動に移すことが可能になりますよね。
NFTを販売して収益を得るという短期的な目線ではなく、長い目でみるとこのように一見儲からなさそうなNFTをリリースしてmintしてもらうことは、とてもメリットとして大きいのではないかと筆者は考えます。
まとめ


Nouns DAO JAPANは世界で一番Nounsを広げるコミュニティを目指します。Discord参加はこちら
本記事では、「Burnables NFT」というNFTプロジェクトの概要と仕組み、及び開発者のメリットなどについて解説しました。
本記事が、Burnables NFTやその画期的な仕組み・メリットなどについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
最後に、Burnables NFT開発者@zeroxjakeさんに



Solidity初心者に何かアドバイスをください!
と質問したところ、非常に有難いお言葉をいただいたので、こちらを共有してこの記事の締めとさせていただきます。



私からのアドバイスは、とにかくモノを作ろうということです。
私は、自分が作りたいと思ったものを作ることが、一番の学習方法だと思っています。


最後まで読んでくださってありがとうございました。


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