「The Mesh」の概要|パブリックブロックチェーンの社会的側面を視覚化する小規模で実験的なNFTプロジェクト

今回は、パブリックブロックチェーンの社会的側面を視覚化する小規模で実験的なNFTプロジェクト「The Mesh」について紹介・解説していきたいと思います。

以前、「The Metagame」というNFTプロジェクトについて紹介いたしましたが、今回ピックアップする「The Mesh」もそれと同じように『オンチェーンアクティビティを視覚化する』ことをテーマにしています。

執筆時点ではEthereumエコシステムの歴史が比較的浅いこともあり、オンチェーンアクティビティの重要性というのは認識されづらい段階ではありますが、長い目で見たときに必ず注目されるテーマであると筆者は考えています。

ということで今回は、オンチェーンアクティビティの視覚化に取り組む「The Mesh」についてピックアップしてご紹介することで、本プロジェクトの概要、延いてはオンチェーンアクティビティの重要性や可能性など理解していただくことを目的とします。

でははじめに、この記事の構成について説明します。

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「The Mesh」とは

まずは、「The Mesh」というNFTプロジェクトの概要について、細かくテーマ分けした上でそれぞれの注目ポイントを詳しく掘り下げながら、解説していきたいと思います。

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コントラクトの扱い方を一部ご紹介

続いて、本プロジェクトのスマートコントラクトについて注目し、その意味や扱い方などについて解説していきたいと思います。

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考察:オンチェーンアクティビティの視覚化の意味と可能性

最後に、本プロジェクトが訴えかける「オンチェーンアクティビティの重要性とその可能性」について、筆者の私見を混じえながら考察していきたいと思います。

本記事が、「The Mesh」の概要や注目ポイント、オンチェーンアクティビティの重要性などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

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目次

「The Mesh」とは

出典:Medium

概要

出典:the-mesh.eth.link

The Meshは、パブリックブロックチェーンの社会的側面を視覚化する、小規模で実験的なダイナミックフルオンチェーンNFTプロジェクトです。

先に『小規模』ついて触れておくと、本NFTは以下5つの歴史あるNFTプロジェクトの保有状況によって、アートワークなどが決定づけられる仕様となっています。

  1. CryptoKitties (2017)
  2. KnownOrigin (V2, 2018)
  3. Cryptovoxels (2018)
  4. Avastars (2020)
  5. Art Blocks (V2, 2021)

これら5つのNFTプロジェクトの保有状況から、各ウォレットアドレスの

  • 経済活動
  • NFT保有傾向
  • 所属するNFTコミュニティ

などを明らかにし、Ethereumチェーン上のデータを用いてソーシャルネットワークを視覚化しようとする、いわゆる『オンチェーンアクティビティの重要性を視覚的に訴えかける類のNFTプロジェクト』になります。

The Meshプロジェクトで視覚化されたそれぞれの情報は「Node(ノード)」と呼ばれるため、以降ではThe Mesh NFTの呼称をNode(ノード)と記載します。

Node(ノード)は、保有者のウォレットと各コントラクトの状態から得られる情報をもとに組み立てられており、以下のようなプロパティを表示します。

  • Node(ノード)保有者が保有するNFTの数(背景サイズ・色のバリエーションによって違いを視覚的に表現)
  • 他のNode(ノード)保有者と、対象NFTを保有した時期(トークン間の関連性として視覚的に表示)

また、詳細は後述しますが、Node(ノード)保有者は自分の作品に「メッセージ」と呼ばれるシンプルなコミュニケーションシグナルを、Etherscanを使ってオンチェーンに投稿することができます。

メッセージを投稿すると、自身を含むNode(ノード)保有者全員のメタデータが更新され、色の分布や配置が変化するという面白ポイントを備えています。

Node(ノード)の配分

出典:OpenSea

Node(ノード)の総発行数量(上写真items部)は、72個となっています。

こちらは、同じクリエイターさんの別先行NFTプロジェクト(IndivisualsGaussian Timepiecesthe_coinEthstory)保有者に対してオファー権限(リザーブプライス:0.1ETH)が与えられてファーストセールがおこなわれたので、現在はOpenSeaなどNFT二次流通マーケットからしか入手できません。

ちなみに、この72個という数字はコントラクトのソースコード内でMAX_SUPPLYとしてハードコードされているので、今後もこれ以上に増えることはありません。

出典:Etherscan

また、これほどまでにNFTの総発行数が少ない理由としては、データの読み込みでの計算が制限されるからだとしています。

要は、Node(ノード)保有者の72個全てのNFTに対して影響を及ぼし、③でオンチェーンでアートワークを読み込み再構築することから、総発行数が多すぎる設計には無理があるのだと考えられます。

アートワークについて

先述の通り、Node(ノード)のアートワークは、5種類の歴史あるNFTプロジェクトの保有状況によって動的に変化する仕様です。

各アートワークは、各点がNode(ノード)のトークンIDを表しており、その大きさはNode(ノード)保有者がどれだけ対象NFTプロジェクトのNFTを保有しているかを表現しています。

例えば、上写真は執筆時点におけるNode #13・Node #24のアートワークです。

まず、上写真の左側(Node #13)のアートワークは左上から数えて13番目に点がプロットされており、右側(Node #24)のアートワークは24番目に点がプロットされています。

そして、Node #13のアートワークは散らばったような印象を受けますが、Node #24のアートワークは密集しているような印象を受けます。

よって、Node #13は対象NFTをあまり持っておらず、逆にNode #24保有者はたくさん持っていることが視覚的に分かります。

その他、アートワーク中で表現されている主な構成要素となる「焦点」「色」「白い点と線」について、以下に順に解説してまいります。

焦点

Node NFTのtokenIDが焦点となり、そこを起点に半透明のハイライトが施され、保有するトークンが多いほどハイライトは大きくなります。

また、焦点の黒四角部には0〜9(n〜ⅸ)のローマ数字が書かれていますが、こちらの意味は後述いたします。

5つのNFTプロジェクトの保有状況の多様性を表しており、ウォレットがこれらプロジェクトのNFTを多く保有すればするほど作品はよりカラフルになり、より派手で目立つ存在になります。

白い点と線

5つのNFTのプロジェクトの内、同じ種類のNFTを1つ以上保有する他のNode(ノード)保有者との相互関連性を表しています。

また先述の通り、これらの構成要素から成り立つNode(ノード)のアートワークは、あらかじめ決められたimageで固定されているのではなく、ダイナミック(動的)です。

そのためNode(ノード)の保有者は、Ethereumチェーン上で非常にシンプルなツイートや投稿のような”シグナル”を送り、それが自分のNFTに投稿されるとNFTのメッシュ全体に波及し、アートワークを変化させるといった体験もおこなうことができます。(※詳細は後述)

以上の要素から、The Meshはオンチェーンソーシャルネットワークの一種とも言えるでしょう。

寄付について

本NFTプロジェクトは慈善事業であることを謳っており、販売収益のほとんど(80%以上)は UkraineDAOをはじめとするチャリティー団体に寄付されています。

そして、メッセージを投稿するためには同時に、The Mesh DAOの投票メカニズムによって決定される「チャリティ団体への少額の寄付」が必要になる仕様です。

こちらも詳しくは後述いたしますが、要は先ほど述べた「メッセージを投稿してアートワークを変化させる遊び」を体験するためには、それと同時かつ自動的にチャリティー団体への寄付がおこなわれる仕様であり、そのチャリティー団体はNode(ノード)保有者で構成されるThe Mesh DAOの投票により決定されるというものになります。

一般的には、売上の数%を寄付することをロードマップで掲げ、目標に達したら寄付をおこなうといったケースが多いですが、この場合 売上額によっては寄付がおこなわれないこと、また運営が本当に寄付をおこなったかの検証が難しいケースがあることなど、いくつかの懸念点が挙げられます。

それに対して、本プロジェクトの売上の如何にかかわらない『自律』寄付モデル、そして寄付先をNFT保有者の投票で選択可能であるという意味で『分散』が重要視された寄付モデルは、非常にクリプトネイティブな発想と実装であると筆者は感じます。

コントラクトの扱い方を一部ご紹介

出典:Etherscan

本章では、Etherscanを用いたMESHTT1(The Mesh)コントラクトの操作方法などを、以下参考リンクの記事をもとに一部ご紹介してまいります。

参考:https://takenstheorem.medium.com/welcome-to-the-mesh-b19d2f8653a2

read関数

本プロジェクトのコントラクト内にあるread関数には、データを読み込むための関数がいくつか含まれています。

まず、tokenURI()関数はすべてのメタデータと作品そのものを表示します。

出典:Etherscan
出典:Etherscan

また、reveal()関数から作品を生データとして直接「取り出す」こともできます。

出典:Etherscan
出典:Etherscan

index単位でチャリティ団体を表示したり、現在の投票数を確認するには、viewCharity()関数を使用します。

出典:Etherscan
出典:Etherscan
チャリティ団体のindex一覧はこちら:

write関数

投稿をおこなう(※NFT保有者のみ可能)

Etherscanのwrite関数のリストからmakePost()関数を呼び出すことで、保有するNode(ノード)に対して「投稿」をおこなうことができ、自身含む全72個のNode(ノード)に対して影響を与えることができます。

出典:Etherscan

makePost()関数を呼び出すためには、以下3つの入力値(引数)が必要になります。

出典:Etherscan

1つ目(makePost)はチャリティー団体に対するETHでの寄付額であり、この数値は「0.001以上0.05ETH以下」の範囲内で任意選択する必要があります。

2つ目(tokenId)は、自身の保有するNode(ノード)のIDです。

3つ目は、The Meshネットワークに投稿したいメッセージ(0~9のいずれ以下の数字)を入力します。

  1. (n)gm
  2. (ⅰ)gn
  3. (ⅱ)wagmi
  4. (ⅲ)probably nothing
  5. (ⅳ)lfg
  6. (ⅴ)hey fam
  7. (ⅵ)ngmi
  8. (ⅶ)rekt
  9. (ⅷ)hodl
  10. (ⅸ)not great

これらの数字は正式な意味づけはなされておらず、それらはNode(ノード)保有者に委ねられ、彼らの解釈次第であらゆる意味をもち得るという扱いだそうです。

これは一種の暗号でありクリプトのカルチャー的要素を多分に含んでいますが、このような身内にしかわからないような用語の使用・メッセージの伝達手法は特にクリプト界隈の人から好まれる傾向にあるため、NFT保有者間で一体感を生み出す一つのトッピングとして上手く機能しているものと考えられます。

また余談ですが、この概念のイメージとして似ているのはLootというNFTが挙げられます。

Lootには戦利品の名称が書かれているだけであり、そのアートワークやパラメータなどがどのように解釈されるのかは、ユーザーによって自由に(ボトムアップ式に)意味づけがなされています。

考察:オンチェーンアクティビティの視覚化の意味と可能性

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まとめ

今回は、「The Mesh」の概要や注目ポイント、オンチェーンアクティビティの重要性などについて紹介・解説しました。

本記事が、「The Mesh」というNFTプロジェクトの概要、延いてはオンチェーンアクティビティの重要性や可能性などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。

また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。

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