a16z cryptoなどから$10Mの資金調達をして話題|Mirrorの元運営チームが開発を手掛けるFarcasterクライアントアプリ「Kiosk」について

今回は、先日$10Mの資金調達をアナウンスして話題となった、web3ソーシャルプロジェクト「Kiosk」について解説します。

Kioskの1,000万ドルの資金調達では、Electric Capitalがリード投資家となっており、a16z cryptoやUnion Square Ventures、Variantといった著名なベンチャーキャピタルが参加していることから、その注目度の高さが伺えます。

しかし、FarcasterやLensを筆頭に「Web3ソーシャル系プロジェクト」への注目が集まる中で、なぜMirrorという老舗のWeb3ニュースレターを手放してまでKioskの開発に着手したのでしょうか。これについても、本記事の最後で考察します。

ということで本記事では、Mirrorの元運営チームが手掛けるFarcasterクライアントアプリ「Kiosk」の概要や、資金調達状況の詳しい解説などについて解説していきたいと思います。

でははじめに、この記事の構成について説明します。

STEP
Mirrorの買収と、「Kiosk」の資金調達の内容を整理

まず、資金調達アナウンスの内容をもとに、今回のParagraphによるMirrorの買収および「Kiosk」の資金調達状況について、事実に基づいて解説します。

STEP
「Kiosk」について紹介

続いて、「Kiosk」の概要や執筆時点のステータスを解説しつつ、さらに深掘りして「Farcasterとクライアントアプリの関係」についておさらいします。

STEP
MirrorとParagraphの合併が意味すること

最後に、MirrorとParagraphの合併が意味することや、SNSとオンチェーンの体験が断片化されている現状が改善されるとどのように状況が変わるのかなどについて、考察します。

本記事が、「Kiosk」の概要や資金調達状況、MirrorとParagraphの合併の詳細などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

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目次

Mirrorの買収と、「Kiosk」の資金調達の内容を整理

先日、web3ニュースレターアプリ「Mirror」が、競合するプラットフォーム「Paragraph」に買収されたことが話題となりました。

Mirrorは、記事をNFTとしてミントする機能を通じて、記事の著者が収益を得ることができるプラットフォームを提供しており、世界中で広く親しまれてきました。

今回のMirror売却をきっかけに、Mirrorを運営していたチームは独立した会社を立ち上げ、Farcasterプロトコルベースの新しいweb3ソーシャルアプリ「Kiosk」の開発に焦点を移すことを掲げ、$10Mの資金調達を行ったことを発表しています。

出典:https://icoanalytics.org/projects/kiosk/

このラウンドでは、Electric Capitalがリード投資家となっており、a16z cryptoやUnion Square Ventures, Variantといった著名VCが参加しています。

また、Paragraphの創設者によると、将来的にMirrorとParagraphは統合され、一つのプロダクトとして提供される予定になっているそうです。

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情報が多くてややこしいので、スライド1枚で視覚的に理解できるように、要点を絞ってまとめました。

上図をご覧いただくと分かる通り、今回資金調達を発表したのは「Kiosk」の$10Mに加えて、「Paragraph」の$5Mの方もあります。

Paragraphの方は、Kioskと同じくUnion Square Venturesが入っていて、あとはCoinbase Venturesも投資しています。

出典:https://icoanalytics.org/projects/paragraph/

今回の「ParagraphによるMirror買収」にあたっての条件などは、現時点では開示されていません。しかし、Coinbase VenturesのArmstrong氏曰く、以下のように語られています。

  • 「Mirrorの買収計画は、両社の投資家であるUnion Square Venturesから提案されたものである」
  • 「誰もがこの結果に満足している。Mirrorは新しいプロダクト(※Kioskのこと)を追求することができ、Mirrorはweb3ニュースレタープラットフォームに完全に特化している人たちの下で、運営を継続することができる」
  • 「いずれは両プロダクトを統合したいが、短期的、中期的には、両プロダクトのトップクリエイターと話をし、それぞれのプロダクトの何が愛されているのかを見極めたい」

以上を踏まえて次章では、Mirrorチームが今後開発を手がけていく新しいweb3ソーシャルアプリ「Kiosk」について、概要や注目ポイントなど要点を絞って解説していきます。

本章の参考資料:
https://www.coindesk.com/tech/2024/05/02/web3-publishing-platform-mirror-sells-to-paragraph-pivots-to-social-app-kiosk/
https://www.theblock.co/post/292221/paragraph-raises-5-million-from-usv-and-coinbase-ventures-takes-over-web3-blogging-platform-mirror
https://dev.mirror.xyz/_JH3B2prRmU23wmzFMncy9UOmYT7mHj5wdiQVUolT3o
https://www.bspeak.xyz/p/eigen-2fa

「Kiosk」について紹介

概要

出典:https://kiosk.mirror.xyz/iyIIjU14A2c50rK00-O8Ic0TR6kV8bsPxd9flWAsb_0

Kioskは、元Mirrorチームが今後開発を手掛けていく「サードパーティのFarcasterクライアントアプリ」です。

「SNS」と「オンチェーンの体験」が断片化されている現状を改善するために開発された、Farcasterの新しいクライアントアプリを標榜しています。

執筆時点において、プロダクトはローンチ前の状況ですが、公式発表によると「Kioskを通じて、ユーザーは画像を投稿し、1クリックでNFTにすることができる他、フィード内で友人が集めているNFTを直接発見・購入することが可能したり、チップできるようになる」とのこと。

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また、トークンによるグループチャット機能により、同じ興味を持つコレクターやコミュニティメンバーを繋げることで、「オンチェーン活動履歴を通したコミュニティ形成ツール」としての機能も果たそうとしています。

Kioskの開発チームは、「オンチェーンアセットが、基本的にはソーシャルなものである」と信じており、アセットとそれを支えるコミュニティ間の相互作用を強化するソーシャルメディアクライアントが、web3の世界を改善し、新たなユーザー層を引き込むことを期待しています。

具体的な例としては、以下のような場面で活用が期待されます。

  • 自分の友人がNFTをミントしたことをSNSで知り、自分も即座に同じものがほしい
  • 好きなアーティストが音楽NFTをリリースしたら、SNSに通知が届いて、そのままSNS上でミントしたい
  • 自分が普段見ているインフルエンサーが推したNFTを、即座にフィード内でミントしたい

執筆時点のステータス

出典:https://kiosk.mirror.xyz/iyIIjU14A2c50rK00-O8Ic0TR6kV8bsPxd9flWAsb_0

先述の通り、執筆時点では$10Mの資金調達アナウンスが出ているものの、Kiosk自体はローンチ前の状況で。

そのため、具体的にどのような機能を持ち合わせているのかなどの情報は表にほとんど出てきていない状況です。

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この理由については、あくまで筆者の推測に過ぎませんが、プロダクトローンチ前に機能を公開してWarpcastに真似されるリスクを懸念し、あえて情報を公開していないのではないかと考えています。

現在は、「Introducing Kiosk」記事内の末尾にあるNFTをミントしておくことで、Kioskのアーリーアクセス権が獲得できるようになっています。

上画像の通り、2024年5月13日時点では、30,000個近くのNFTがミントされていることから、その注目度の高さが伺えます。

Farcasterとクライアントアプリの関係をおさらい

既に他の記事でも何度か説明していますが、理解の促進を図るために、改めて「Farcasterとクライアントアプリの関係」についておさらいしておきます。

上図の真ん中にあるアプリ群が、いわゆる「クライアントアプリ」と呼ばれる層になります。最も歴史が長くメジャーなものとしては、一番左側に位置している公式クライアントアプリ「Warpcast」が挙げられます。

では、Warpcastがサーバーダウンしたり、何らかのエラーによって操作できなくなった場合、Farcasterにアクセスできなくなるかというと、そうではありません。例として、SupercastやHerocastといった「代替クライアントアプリ」が役に立ちます。そして、今回ご紹介している「Kiosk」も、この代替クライアントアプリに該当します。

このように、分散型ソーシャルメディアを標榜するFarcasterの仕様により、私たちエンドユーザーは特定のクライアントアプリに縛られることなく、自由にその選択を変えることができるのです。

これと対照的なのは、従来までのweb2型SNSです。例えば、Xの運営方針が気に入らないからといって、そのフォロー/フォロワーや投稿履歴などを他のSNSに移植することはできませんよね。

こうしたweb2型SNSの仕様への不満などの背景もあり、2024年に入ってからFarcasterで活動するユーザー数は右肩上がりに増え続けている状況となっています。

出典:https://dune.com/pixelhack/farcaster
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ただ、一点補足すると、現状のFarcasterエコシステムでは、様々な理由によりWarpcast一強の状態が続いており、お世辞にも分散型SNSとは呼べない状況にあると個人的に考えています。

この課題については以下の記事で解説しているので、興味がある方は併せてご参考ください。

ということで、現在のように「公式クライアントアプリWarpcastが一強の状態にある」という状況を打開し、Farcasterが分散型SNSという名に相応しいソーシャルサービスとなるためにも、今回の新たなクライアントアプリ「Kiosk」の構想と資金調達の発表は、一つの大きな可能性を見せてくれたと言えます。

先述の通り、投資家にはElectric Capitalやa16z crypto、Union Square Ventures、Variantといった名実ともに申し分ない面々が参加しています。また、開発チームも元Mirrorチームであることから、「彼らなら、今後Web3ソーシャル領域で注目を集めるアプリケーションを構築するのではないか」という期待が集まっており、今後の動向には目が離せません。

以上を踏まえて、最後に次章では、MirrorとParagraphの合併が意味することや、SNSとオンチェーンの体験が断片化されている現状が改善されるとどのように状況が変わるのかなどについて、マニアックな考察を「定期購読プラン」登録者向けにまとめています。ご興味があればぜひご覧ください。

本章の参考資料:
https://kiosk.mirror.xyz/iyIIjU14A2c50rK00-O8Ic0TR6kV8bsPxd9flWAsb_0
https://twitter.com/KioskSocial/status/1786062025275437348

MirrorとParagraphの合併が意味すること


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まとめ

今回は、Mirrorの元運営チームが手掛けるFarcasterクライアントアプリ「Kiosk」の概要や、資金調達状況の詳しい解説などについて解説しました。

本記事が、「Kiosk」の概要や資金調達状況、MirrorとParagraphの合併の詳細などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。

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