筆者が半年以上前に書いたNounsDAOの記事ですが、今だに一番多くのPV数を集めていることは嬉しい一方で、昔の自分を越えられないことに対して歯痒い気持ちを抱き続けている今日この頃です。
さて、この所ありがたいことに「どうやってNounsDAOから資金調達するんですか?」といった旨のご質問・ご相談をいただく機会が増えてきました。
まず前提として、NounsDAOはNFTの非保有者をも巻き込んでエコシステムを拡大させているプロジェクトの代表事例ですが、その一つの要因として「retroactive(遡及)な報酬を含めた豊富な資金調達機能」を備えていることが大きいと筆者は考えています。
保有権の文脈の外でコミュニティを成長させ続けるためには、非NFT保有者をDAO(コミュニティ)の関係人口として巻き込んでいくことが重要であり、その一つのモデルがNounsDAOのSmall Grants (retroactive含む)制度ですが、これはボトムアップ如何を問わず各所大いに参考になる事例であると考えています。
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) June 8, 2022
NounsDAOから資金調達するためには、プロジェクトの規模・タイムラインなどに応じて、執筆時点では主に以下3つの方法から選択して資金調達をおこなう流れになります。
- Small Grants
- Prop House
- Proposals
しかし、これだけ見てもそれぞれ何が違うのか、そしてどういった手順を経て資金調達に至るのかが全く想像できないかと思われます。
ということで本記事では、実際にNounsDAOから資金調達をおこなうための具体的な方法、そしてどのような流れで資金調達を完了させるのかについて述べていき、NounsDAOから資金調達をおこないたい方がスムーズに作業に取り掛かれるようにすることを目的といたします。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、おおよそ0.1ETH〜10ETHを必要とする小規模なプロジェクト向けの制度である「Small Grants(少額助成金)」について、概要や実際の申請手順などを解説いたします。
続いて、おおよそ2ETH〜10ETHを必要とする中規模なプロジェクト向けの制度である「Prop House(Nouns Proposal Auction House)」について、概要や実際の申請手順などを解説いたします。
最後に、おおよそ10ETH〜600ETHを必要とする大規模なプロジェクト向けの制度である「Proposals」について、概要や実際の申請手順などを解説いたします。
本記事が、NounsDAOから資金調達する方法やその概要、また具体的な手順などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
イーサリアムnaviの活動をサポートしたい方は、「定期購読プラン」をご利用ください。
資金調達方法①:Small Grants
Small Grants(少額助成金)は、おおよそ0.1ETH〜10ETHを必要とする小規模なプロジェクト向けの制度です。
これから活動をおこないNounsDAOからgrantを受けるか、もしくはNounsを広めるための活動を既におこなっており、retroactiveに(遡及して)grantを受けることになったクリエイター向けのプランとなります。
この委員会が設けている「柔軟な資金プール」は、例えば以下のようなケースで機能することを目的としています。
- プロジェクトの資金調達が一刻を争うものである場合(正規の手順を踏んでいる時間的猶予がないなど)
- 正式な提案(Proposals)をおこなうには請求する資金が少なすぎる場合
- 既に終了したプロジェクトであるため過去に遡って資金を提供する必要がある場合(retroactive rewards)
ここまでで勘の良い方は察しがついているかと思われますが、Small Grants委員会では柔軟な資金提供を実現するために、「ある程度トラストな形式」でSmall Grantsの資金が管理・運営されています。
「ある程度トラストな形式」とは、Small Grants用の一部の予算があらかじめ一部のNounsホルダーに割当されている状態のことです。
そしてイニシャルでは、Small Grants委員会は以下のメンバーで構成されています。
Small Grantsの資金は「Gnosis Safe」というマルチシグウォレットによって管理されており、この資金を移動させるためには上写真4名(Noun 12, 16, 22, 32)のNounsホルダーのうち2名の署名を必要とし、Nouns DAOは主に象徴的なオーナー・バックアップ機能として位置付けられています。
また、委員会メンバーに対して直接提案して説得することで、少額のETHを貰うことなども可能です。
さらに、自分で提案・説得せずとも、他薦によってSmall Grantsが与えられるといったパターンも存在します。
例えば筆者は以前、Nounsの存在を広めるためにおこなった過去の活動に対して、retroactiveに評価していただきSmall Grantsを付与してもらった経験があります。
NounsDAOからretroactive rewardsとして1.42ETHいただきました🙏
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) March 10, 2022
全くもってお金目的ではなく活動していましたが、このようなかたちで評価していただけて非常に嬉しい気持ちです😭
今後も日本でNounsを盛り上げていけるよう精進してまいります🇯🇵
Thanks, @lastpunk9999 .🙇♂️https://t.co/H50ii0iwOV https://t.co/ZOhl0XZ4sZ pic.twitter.com/IGignYRU4q
本件は、Nounder(NounsDAOのファウンダー)の一人である9999氏が、Small Grants委員会メンバーに対してアプローチしてくれたことにより、遡及報酬の発生へと至りました。
◨-◨ New Grant ⌐◨-◨
— Nouns: Small Grants (@NounsGrants) March 10, 2022
✨ Japanese Noun Community Work by Derio
🌐 Retroactive payment
💰 1.42069 ETH ($3,706) pic.twitter.com/GO2GhKbo5G
最後に、申請から調達までの具体的な手順は以下です。
ログインが完了したら、画面右上に表示される「New Topic」ボタンをクリックします。
ログインが完了したら、以下のような必要事項を記入して、完了したら「Create Topic」で投稿します。
- 申請するプロジェクトの内容
- それがどのようにNounsを広めるか(または既に広めているか)
- プロジェクトが完了した場合、委員会が遡及資金を提供するかどうか、またどの程度の遡及資金を提供するか
他の人がリスト全体に目を通した際にproposalリクエストであることがわかるように、タイトルの前に「Small Grants: 」を付けてください。
STEP3の後しばらくしたら委員会メンバーから連絡がきますが、公式Discord(#grants-and-retro-funding チャンネル)にDiscourse投稿のリンクを投稿して、委員会メンバーの目に留まりやすくすることも可能です。
STEP3の内容と、委員会メンバーからの質問に対する返答をもとに、Small Grantsを付与するにふさわしい内容であると判断されたら資金が提供されます。
NounsDAOJAPANのDiscord(#💰|日本prophouse チャンネル)で、日本語で提案することが可能となっていますので、もしよければこちらも合わせてご活用ください。
資金調達方法②:Prop House
Prop House(Nouns Proposal Auction House)は、おおよそ2ETH〜10ETHを必要とする中規模なプロジェクト向けの制度です。
プロジェクト側は、定期的に(毎週)開催される資金調達ラウンドに提案を提出して応募し、「コミュニティ投票」で選ばれ勝ち上がることができれば、あらかじめラウンドに指定されたETHを受け取ることができます。
「コミュニティ投票」での投票権は、Nounsホルダーだけでなく一部NounsデリバティブNFTホルダーに対しても与えられています。(各Houseごとに異なる)
「一部NounsデリバティブNFTホルダー」とはどういうことか、まずは説明いたします。
執筆時点では、上記7つのコミュニティProp Houseが運営されていますが、例えば上段左から2番目の「Lil Nouns」を見てみましょう。
現在Round1の投票がおこなわれている状況ですが、このLil NounsのコミュニティProp Houseでは、NounsホルダーだけでなくLil Nounsホルダーも投票に参加することができるようになっています。
本来のProposalsであればNounsホルダーにのみ投票権利が与えられていますが、Prop Houseではもう少し裾野を広げて、一部NounsデリバティブNFTホルダーに対してもそれぞれのハウスで投票権利を与えているのです。
この独立したそれぞれのハウスを通じて、Nouns DAOは外部のNouns派生コミュニティハウス(およびその対応する資金調達ラウンド)に対して、資金を効率的に提供することができるようになりました。
本家のNouns NFTは発行数が少ない且つ単価が高いため、NounsDAOの投票に参加したいと考えている人にとっては非常に参加ハードルが高く、課題となっていました。
申請から調達までの具体的な手順は以下です。
オレンジ部分の「Propose」ボタンをクリックします。
マークダウン形式で、以下を記入して提出します。
- Title
- 提案のタイトル
- tl;dr
- 可能な限り簡潔に、提案を一文で要約
- Proposal description
- プロジェクトの詳細:何を構築しているか
- ロードマップ:いつ構築が完了する予定か
- チーム:誰が構築しているか
- リンク:チームとプロジェクトに関するリンクを共有
STEP3を経て見事コミュニティで勝ち上がればETHが支給されます。
そのために、TwitterやDiscordで投票を促すための施策をおこなうと良いでしょう。
ちなみに、NounsDAO JAPANメンバーが中心となって進めている「Nouns Japan」のハウスも、近いうちにラウンド開始予定となっています。
NounsDAOJAPANのDiscord(#💰|日本prophouse チャンネル)で、日本語で提案することが可能となっていますので、こちらも合わせてご活用ください。
このハウスでの投票権は一体何になるのでしょうか?
Nouns DAO Japan公式のNFT MINT開始
— NounsDAO JAPAN (@NounsDAOJAPAN) June 9, 2022
WLメンバーオンリー。今後のあるプロジェクトの投票権になります!https://t.co/gAN8HDYPhh
資金調達方法③:Proposals
Proposalsは、おおよそ10ETH〜600ETHを必要とする大規模なプロジェクト向けの制度です。
こちらは一般的に広く知られているNounsDAOからの資金調達方法ですが、正規の手順を踏む必要があることなどを含め非常にハードルが高い手法になります。
また、Nouns NFTホルダーのみが投票権を有しており、加えて資金額が大きいだけに、慎重なディスカッションや修正が頻繁におこなわれている印象を筆者は抱いています。
これらの事例をはじめ、Proposalsを通してexecuteされたものには、大きく以下の特徴があると示唆されます。
- 有名な人や企業・実績のあるエンティティが関わっている
- Nounsの存在を広めていくための策として、非常に質の高い提案となっている
- 既に質の高いプロジェクトが仕上がっていて、あとは調達するだけのフェーズである
このことから、巨額の資金調達をおこなうために裸一貫でProposalsを通して資金調達に挑むことは非常に難儀であり、それであれば先述までのSmall GrantsやProp Houseを活用した方が実現可能性が高いと、筆者は考えています。
以上を踏まえて、申請から調達までの具体的な手順は以下です。
ログインが完了したら、画面右上に表示される「New Topic」ボタンをクリックします。
以下のような必要事項を記入して、完了したら「Create Topic」で投稿します。
- プロジェクトの内容
- どのようにNounsを広めるのか
- どれくらいの資金が必要なのか
- 資金の内訳
- 成功の指標は何か
また、TLDRセクションを設けておくことも推奨されていたりするので、他の原案を参考にしながら作成してみてください。
他の人がリスト全体に目を通した際にproposalリクエストであることがわかるように、タイトルの前に「Proposal: 」を付けてください。
先述の通り、Proposalsは資金額が大きく正規の手順を踏む必要があることもあり、慎重なディスカッションや修正が頻繁におこなわれている印象です。
そのため、どんなに優れたアイデアであっても二つ返事でOKになることはほとんどなく、フィードバックをもらって修正・改善を求められるケースが多いです。
STEP4を経て、Nouns保有者の一人でも正規のProposalにアップしてくれたら、こちらのサイトからホルダーによる決議がおこなわれ、可決された場合は資金が提供されます。
つまり、ロビー活動としてTwitterやDiscordなどでNounsホルダーとのネットワークを構築しておくことも、一つの手段になりえます。
ご覧の通り、Proposalsは正規の投票機能なだけあって、かなり長期スパンかつ慎重な過程を経ることが求められます。
最後に、Nounsホルダー含むコミュニティメンバーからのフィードバックがほしい場合は、公式Discord(#proposal-ideas チャンネル)にポストしてみると良いかと思います。
まとめ
今回は、実際にNounsDAOから資金調達をおこなうための具体的な方法、そしてどのような流れで資金調達を完了させるのかについて述べていき、NounsDAOから資金調達をおこないたい方がスムーズに作業に取り掛かれるようにすることを目的とした記事を執筆いたしました。
本記事が、NounsDAOから資金調達する方法やその概要、また具体的な手順などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。
🆕記事をアップしました🆕
— イーサリアムnavi (@ethereumnavi) June 10, 2022
今回は、NounsDAOから資金調達する具体的な方法について解説しました✍️
それぞれの方法から、具体的な資金調達の流れまで”徹底的に”まとめました!
調達を検討していた方を始め、ぜひご参考ください💡@NounsGrants @nounsprophouse @nounsdao https://t.co/nQMWdNLVnm
イーサリアムnaviを運営するSTILL合同会社では、web3/crypto関連のリサーチ代行、アドバイザー業務、その他(ご依頼・ご提案・ご相談など)に関するお問い合わせを受け付けております。
まずはお気軽に、こちらからご連絡ください。
- 法人プランLP:https://ethereumnavi.com/lp/corporate/
- Twitter:@STILL_Corp
- メールアドレス:info@still-llc.com