今回は、MUDゲームエンジンを使って構築された自律型世界(オンチェーンゲーム)、「Sky Strife」について紹介したいと思います。
先日(2023年4月13日)、Komorebi’s Hacker Houseによる「On-chain gameplay workshop」がETH Tokyoのサイドイベントとして開催され、筆者はそこに参加してきました。
開発者たちからは「これこそが次世代のブロックチェーンゲームだ!」という意気込みを感じました。
また、最近ではtier 1 VCからの注目度が高まっていることもあってか視察で訪れているような人も居たので、興味を持つ層が明らかに広がっているようにも感じられました。
さて、そんなワークショップイベントの中で個人的に特に印象的だったのが、今回ご紹介する「Sky Strife」です。
Sky Strifeは、MUDエコシステム上に構築されているオンチェーンゲームであり、開発母体はLatticeチームです。
ということで本記事では、Sky Strifeの概要やゲーム性などを紹介していくとともに、MUDを基盤にしていることのメリットや、将来的な発展可能性などについても触れていきたいと思います。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、Sky Strifeの概要や美学、開発者の情報から現在のフェーズなどについて概観します。
続いて、MUDとはそもそも何だったかをおさらいし、MUDエコシステム上で構築されるオンチェーンゲームとして、どのような特徴を有しているのかなどについて解説します。
最後に、執筆時点におけるSky Strifeのゲーム画面を用いながら、全体的なゲーム性やビジュアル、今後の発展可能性などについて見ていきます。
本記事が、Sky Strifeの概要や将来性、MUDを基盤として構築されるオンチェーンゲームの可能性などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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「Sky Strife」とは
- Webサイト (※coming soon)
- Discord (Lattice)
- notion
概要
Sky Strifeは、MUDゲームエンジンを使って構築されたオンチェーンRTS(リアルタイム戦略ゲーム)です。
プレイヤーは、軍隊を作ったり敵を倒しながら、Ember Crown(燃える王冠)を持って1番最初に脱出することが勝利条件となります。
マップごとに①Ember Crownが置かれている場所と②脱出口の位置は異なりますが、上のイラストでは①が中心になっていて、②が上下の直線上に配置されています。
詳しいゲームルールは次章で述べますが、プレイヤーは各ターンごとに自分の軍隊を生成しつつ、移動・攻撃を行いながらマップ中央のEmber Crownを奪い、最終的に両端の出口に運び出す必要があります。
もちろん、Ember Crownを奪って出口に向かえば良いというわけではなく、持ち出す過程で他のプレイヤーに妨害されることもあるので、そのあたりは戦略を練る必要がありそうです。
ちなみにこのようなゲーム性は、MUDと相性が良いと考えられている『ターン性ゲーム』の部類であり、MUDエンジンを使って作られたDark Seasやチュートリアルの題材であるEmojimonも、それぞれターン性のゲームモデルを採用しています。
このように、プレイヤーは各ターンの制限時間内に、軍隊の生成・移動・敵陣への攻撃などを行いながら、Ember Crownが置かれている場所へ辿り着き、それを獲得し、無事に出口まで運び切れば勝利となります。
Sky Strifeの美学
一般的にオンチェーンゲームは、ゲームとしてビジュアルが難しそうに見えてしまったり、操作性の難解さなどが参入障壁となってしまう傾向にあります。
しかし、Sky Strifeの開発者であるKooshaba氏は、『私たちは、人々がSky Strifeの上に構築するような世界を作りたいので、まずは楽しくて親しみやすいゲームを作ることから始めます。もし人々がゲームをプレイしたくないのであれば、その上に構築されることはないと思います。』と、以前筆者に言いました。
つまり、ゲームの裏側ではオンチェーンゲームとしてクリプトネイティブでコアな試みを行いつつ、表側となるビジュアル・ユーザー体験の部分にも、しっかり力を入れていきたいということです。
筆者は、コアなプロダクトこそ見た目やユーザー体験には力を入れるべきだという考えなので、Kooshaba氏やSky Strifeの美学には賛同します。
ちなみに、PhiやNounsも意識的にこのようなスタイルを採用していると思っています。
(中略)そういった意味ではPhiやNounsは根っこ(思想や実装など)の部分ではクリプトネイティブなものでありつつも、そのビジュアルは可愛さ・ポップさを兼ね備えていて取っ付きやすく、広義のクリプト初心者からも「純粋にほしい!」「遊んでみたい!」と思われるよう工夫がなされている印象です。
出典:Gearbox Protocolを概観|複雑なプロダクトでも迎合主義に捉われず「みんなに優しい作品」に昇華できる可能性と、その先に訪れるオンチェーンゲームの未来像
開発者について
現在の開発母体は、オンチェーンゲーム開発ツールMUDなどを手がけるLatticeです。
また、Latticeチームの中でもKooshaba氏とKooshaza氏が中心となり、Sky Strifeの開発を手掛けていると思われます。
余談ですが、Koosha”b”aとKoosha”z”aは一文字違いなので、筆者は最初、同一人物かと思っていました。lol
現在のフェーズ
執筆時点においてSky Strifeは、early alphaテストステージの状態です。
開発者のKooshaba氏によると、現在はメインネットローンチの準備期間として、Ethereumテストネットでプレイテストを実施しているとのこと。
しかし、このテストプレイにはいつでも誰でも参加できるわけではなく、以下の条件を満たす必要があります。
- Latticeの公式discordで
Sky Strife player
とplaytester
ロールを獲得する - 毎週金曜日の23時30分(JST)に集合し、都度共有される指定リンクからアクセスする
Sky Strifeは、1回のマッチで2~8人が同時対戦するオンチェーンゲームなので、ある程度の人数を同じ時間に集める必要があり、上記のような時間的制約を設けているのだと思います。
イーサリアムnaviのサポーターの方で興味ある方は連絡ください🫡 pic.twitter.com/kQoOOBpR9e
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) April 28, 2023
MUDの仕組みをおさらいしながらSky Strifeを深掘り
まず前提として、本記事ではMUDの基本概要についての解説は省略し、要所となる部分にフォーカスして解説していきます。
MUDの基本的な概要や詳細についてご存知ないという方は、以下の記事をご一読いただくことを推奨します。
MUDでは「ECSパターン」を採用しており、その名の通り『エンティティ』『コンポーネント』『システム』の3つが基本的な構成要素となっています。
- エンティティ(空箱)
- 単なるID(uint型)であり、ロジックやデータを格納していない
- コンポーネント(データ)
- データを格納し、「エンティティにアタッチ(添付)」することが可能
- 「プロパティ」と考えることもできるが、データはクラスのプロパティとは異なる方法で構造化されている
- システム(ロジック)
- ロジックを実行する
- コンポーネントだけを扱い、エンティティは扱わない
そして、開発者目線での重要なポイントは、『パーミッションレスなMUDエコシステムでコンポーネントやシステムを共有できる』、そして『エコシステム全体としてコンポーザビリティの高い設計になっている』という点です。
先述までの通り、Sky StrifeはMUDエンジンをベースに構築されているオンチェーンゲームです。
そのため、Sky Strifeで展開されているコンポーネントやシステムは、他のMUDベースのオンチェーンゲームで再利用することが可能です。逆に、他のMUDベースで展開されたコンポーネントやシステムをSky Strifeで利用することもできます。
つまり、MUDを使ってオンチェーンゲームを構築するビルダーたちは、ゲームをフォークしているわけでも、自分たちの独立した世界を作っているわけでもありません。
実態として、ビルダーたちは既に存在しているAutonomous Worlds(自律型世界)に対して「新しい機能を追加している」ことになるです。
また、ユーザー目線での注目ポイントとしては、現在はアーリーαテストステージのため「シンプルな複数人参加型ターン性ゲーム」となっていますが、今後はさまざまなアップデートが予定されていることです。
例えば、資源やロジック、経済を自由に構築できる自律型世界へと進化させたり、オンチェーンゲームやルールセットのMODを開発できるようになることが計画されています。
さらに、現時点で詳細は言えないらしいのですが、さらなるテクニカルなアップデートが随時盛り込まれていくそうです。
L2スケーリングに繋がるEIP-4844のProto-Dankshardingや、MUD2.0の構想など、MUDエコシステムを取り巻く環境は2023年に大きく変わっていくと思われるので、今後のSky Strifeの進展には期待しておきたいと思います。
全体的なゲームの流れを概観
では上記までの内容を踏まえて、執筆時点におけるSky Strifeについて実際のゲーム画面を見ながら、全体像を外観していきます。
まずゲーム開始時、各プレイヤーは1つの集落、1人の剣士、そして1,000ゴールドを持っている状態でスタートします。
20秒ごと(画面上部に示される金色バー)に新しいターンが始まり、各剣士は1ターンに1回ずつ移動および攻撃を行えます。
また、ゴールドはプレイヤーが占領した集落や鉱山の数に応じて毎ターン増えていき、溜まったゴールドを使って新しい剣士を生成することができます。
実際にやってみた感想としては、手当たり次第に剣士を増やしていくと20秒間で操作するユニット数が増えてしまい、考えることや操作量が多くなるので扱いが難しかったです。
このあたりも、戦略やゲームの駆け引きとなる要素で面白いなと思いました。
初期スタート時には、プレイヤーの集落は1ターンあたり200ゴールドを生成する状態になっています。
ここから各プレイヤーは、他の集落(+50g / 1ターン)や鉱山(+100g / 1ターン)を占領していくことで、1ターンあたりのゴールド生成量を増やすことができるシステムとなっています。
このように、2〜8人で戦略性の高さやスピード感のある操作性を競い合いながらも、そのデータやロジックがオンチェーンに格納されておりMUDエコシステム上で使い回せたりする点が、Sky StrifeがAutonomous Worlds(自律型世界)たる所以です。
ただし再三述べている通り、現時点ではアーリーアルファステージのゲームなので、先手必勝のゲーム性・戦略性の少なさなど、ゲームとしての改善余地は多分にあるでしょう。
これらは今後、ランダム性の追加・試合ルールの追加などを実装することで、改善されていくのではないかと思います。
最後になりましたが、ゲーム画面が動いている様子を見て理解を深めたいと思われた方は、下記のツイートに添付された動画をご覧いただくと良いでしょう。
4/ Here’s an example of a battle from a recent playtest—every action you see here is a player’s transaction! pic.twitter.com/F4Hwd70YBQ
— Sky Strife (@skystrifeHQ) April 17, 2023
なお、来週もしくは2023年5月中にSky Strifeのハンズオン動画を作成して、YouTubeチャンネルで公開する予定です。
本記事を読んで実際に遊んでみたくなったけど、やり方がイマイチよく分からない…ゲーム性の解説は動画の方が理解が深まるかも…
という方は、ぜひそちらも併せてご活用ください。
まとめ
今回は、Sky Strifeの概要やゲーム性などを紹介していくとともに、MUDを基盤にしていることのメリットや、将来的な発展可能性などについて解説しました。
本記事が、Sky Strifeの概要や将来性、MUDを基盤として構築されるオンチェーンゲームの可能性などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。
「Sky Strife」について
— イーサリアムnavi🧭 Called "Ethereumnavi" (@ethereumnavi) April 29, 2023
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