【前編】Warpcastはweb3時代における「スーパーアプリ」になり得るか|Farcasterエコシステムで誕生する多種多様なオンチェーン機能群を概観

このシリーズでは、「Warpcastはweb3時代における『スーパーアプリ』になり得るか」のテーマについて詳しく解説していきたいと思います。

さて先日、Farcaster開発企業Merkleが、ユーザー急増でユニコーンバリュエーションで資金調達し、話題となりました。

$DEGENを筆頭に、ミームコインによる独自の文化や経済圏が確立されていたり、Frameアプリの台頭などによるユーザー体験の向上などが要因となり、今年に入ってからその勢いを急速に増しています。

また、アクティブユーザー数やキャスト(投稿)数、リアクション数なども、2024年に入ってから右肩上がりの状況が続いています。より具体的には、2〜3月にかけて一度は落ち込んだものの、$DEGENトークンのローンチなどを皮切りに、再び盛り返しているといった状況になっています。

出典:https://dune.com/pixelhack/farcaster

FarcasterやWarpcast, Farmeアプリなどに関する基本的な情報は、以下の記事で詳しく解説しているので、ご存知ない方は先にこちらをご参考ください。

さて本記事は、「Warpcastはweb3時代における『スーパーアプリ』になり得るか」シリーズの第1弾としてお届けします。

第1弾となる今回は、「Farcasterエコシステムで誕生する多種多様なオンチェーン機能群を概観」をテーマに、その概要から詳細な情報に至るまで、幅広く解説していきます。

Farcasterエコシステムで誕生したオンチェーンショッピングの概要や、オンチェーンファッションブランド、そしてSNS上でのDAOのコミュニティ活動や投票機能の実装などの事例を見ていきながら、Warpcastの全能アプリ化の可能性について探索していきます。

でははじめに、この記事の構成について説明します。

STEP
Frameアプリの活用事例:ファッション領域

まずは、近ごろ目にする機会が増えつつある「ファッション領域」での事例として、オンチェーンショッピングの概要や、オンチェーンファッションブランドについて概観します。

STEP
Frameアプリの活用事例:DAOのコミュニティ活動や投票機能の実装

続いて、Frameアプリの活用事例として「DAOのコミュニティ活動や投票機能の実装」について取り上げます。FrameアプリがDAOの一つの機能としても使われている現状や、DAOがFarcasterとどのように連携しているか、およびその将来性について言及していきます。

STEP
考察:静から動へ|SNSの進化とユーザーエンゲージメントの未来

最後に、静的な投稿からダイナミックなモジュールへの変化による「ユーザーエンゲージメントの質の向上」というテーマについて、筆者の私見を交えながら考察を展開します。

本記事が、Farcasterエコシステムにおけるファッション、DAOでの取り組み事例や、将来的なWarpcastの発展可能性などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

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目次

Frameアプリの活用事例:ファッション領域

最近、Frameを活用してキャスト(投稿)の価値を拡大している事例がいくつか見受けられますが、最近これがとても興味深いと感じています。

ちなみにFrameという機能は、以前Farcasterの解説記事で触れたように、ザックリ言うと「ユーザーがタイムライン上にインタラクティブなミニアプリを埋め込むことを可能にする」というものです。

これにより、開発者は別アプリへの遷移が不要になるプロダクトを構築・提供することが可能となり、それによってユーザーは、Warpcast上で直接「投票」や「ゲームのプレイ」、「購買」などのアクションを行うことが出来るようになったのです。

本章では、その事例の一つとして、近ごろ目にする機会が増えつつある「ファッション領域」から見ていきましょう。

イーサリアムnaviでも過去には、フルオンチェーン時計NFT「Watchfaces」や、NounsDAOでのファッション製品事例を取り上げてきましたが、筆者は優れたプラットフォームには必ずと言っていいほど「センスの良いファッション関連のプロダクトが登場する」という持論を持っています。

ということでここでは、Farcasterエコシステムにおける「ファッション×Frame」の取り組みを、2つだけ見ていきます。

①Frameアプリ内ショップ「Warpshop」

出典:https://warpcast.com/warpshop/0xec2a4226

さて先日、Frame機能とCoinbase Commerce APIを使った「Frame内ショップ:Warpshop」がローンチされました。

Warpshopでは、ユーザーがFrameアプリ内でショッピングできるようにし、新しいオンラインショッピング体験を創出しています。また、Coinbase Commerce APIを利用していることで、クリプトでの決済(※ $HIGHERなどミームコイン含む)が可能となっています。

WarpshopのファウンダーであるColin(@colinm)によると、ローンチからわずか2ヶ月で150以上のショップが誕生し、なおかつWarpshopを通じた購入のコンバージョン率は「6〜8%」と、通常のソーシャルコンバージョン率である「2〜5%」を上回る数値を叩き出しているそうです。

出典:https://www.warpshop.xyz/setup

出店するまでのステップは非常に簡単で、Coinbase Commerce API Keyの取得を除けば、10分程度で完結します。

最近の事例としては、EIP-4844のアップグレードが成功されたとき、Nouns Factoryがその日のBasePaintシャツをプリントアウトし、出品していたことが挙げられます。

出典:https://warpcast.com/leoclark.eth/0x1599c1f2

この他にも、自分好みのTシャツに辿り着くまでの導線を、アプリ内で選択ボタン式で提供する(https://warpcast.com/warpshop/0xfbff0f3c)など、サイト遷移なくソーシャルアプリ内で完結する購入体験ができる点が強みとなっています。

なお、ポジショントークの側面もあると思われますが、CoinbaseのBrian Armstrongも激推ししていました。

出典:https://warpcast.com/barmstrong/0x9019b218

Warpcastのスーパーアプリ化に向けて、こういった事例創出がボトムアップに試されている現象はとても興味深く、2021年のLootエコシステムを彷彿とさせるようです。

②オンチェーンファッションブランド「HERE」

また、Farcaster発のファッションブランドを標榜するプロジェクトも発足しています。オンチェーンファッションブランド「HERE」は、『自然からインスパイアされ、テクノロジーによって可能になった』というコンセプトで、Warpcast内で商品概要スライドを閲覧できます。

一般的に、SNSから商品販売ページへの遷移ではコンバージョンレートが下がる傾向にありますが、Frameアプリを使ってユーザーが「興味・関心から購入意思決定に至る」までの一連の流れをアプリ内で完結させることが可能であれば、これはデジタル上での購入体験を一新する大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。

出典:https://439cfc-c5.myshopify.com/products/node?variant=48007045546299

最近では(特にコロナ明けあたりから)、新しいメディアの形成には「デジタルとリアルの融合が不可欠である」という主張を唱える人も増えていることから、「デジタル×リアルでの新しい体験」を生み出そうとする流れは、業界を問わず今後要注目であると個人的には考えています。

Farcasterエコシステムがさらに成熟していくにつれて、プロのファッション関係者などの新たな参入者が見込まれますが、将来的にはこのプラットフォームが、革新的なファッションの発信地としての地位を確立することも考えられるでしょう。

Frameアプリの活用事例:DAOのコミュニティ活動や投票機能の実装

本章では、Frameアプリの活用事例として「DAOのコミュニティ活動や投票機能の実装」について取り上げます。FrameアプリがDAOの一つの機能としても使われている現状や、DAOがFarcasterとどのように連携しているか、およびその将来性について言及していきます。

まず、「Farcaster×DAO」の事例で触れておくべきテーマの一つに、NounsDAOが挙げられます。

実は2023年あたりから、一部NFTプロジェクトが中央集権的なDiscordサーバーから離れ、web3ネイティブのコミュニケーションツールへの移行を模索する機運が高まっていました。NounsDAOもその一例で、Discordサーバーを実質的に閉鎖し、現在はFarcasterをコミュニティの活動中心としています。

元々、NounsDAOのDiscordで情報が集中化してしまうことに対する懸念からクローズの決定がされましたが、その結果、グループ間で情報がサイロ化し、コミュニティ全体で情報を集約する場が失われてしまいました。これにより、コミュニティ内での分断が生じる課題が明らかになりましたが、これらの課題を解決するために、プロポーザル #498で提案されたFarcasterでの実装が可決され、現在開発が進められている状況です。

最近だと、Warpcastの「/nouns チャンネル」が、Nounsコミュニティの新たな集合場所として急速に成長しており、活発なディスカッションや最新ニュースの共有、NFTのミントなどが行われています。このNounsコミュニティによる戦略的な変更は、Farcasterエコシステムを「Nounsコミュニティの理想的なホーム」として確立することに成功し、同時に中央集権的なプラットフォームへの依存を減らす方向へと大きく貢献していると言えます。

出典:https://warpcast.com/~/channel/nouns

では、Nounsコミュニティの活動の主戦場を、WarpcastのようなFarcasterエコシステムに移管したことで、何ができるようになったのでしょうか。

例えば、NounsDAOのNFTは、Ethereumチェーンが安定稼働し続ける限り「半永久的に1日1体ずつ増えていき、それを毎日オークション販売して収益を得る」ことで、DAOの活動資金に充てています。

これまでは、このオークション情報などNFTに関する情報をウェブサイトで確認していましたが、最近はFarcasterエコシステムを通じてこれらの活動を一元化し、Warpcastを通して全てのアクションを一箇所で確認・実行できるように、実験的に実装を進めています。また、ユーザーはキャストから直接NFTのデイリーオークションに入札できたり、情報をリフレッシュして最新状況を確認したりすることが可能です。

出典:https://warpcast.com/spencerperkins.eth/0xe55a5412

そして、この延長線上には、将来的に「フィード内で直接ガバナンス活動が行えるようになる可能性」があるのではないかと考えています。

これまでは、Prop Houseを通じて資金を調達したり、ガバナンスのためにDiscourseなどのフォーラムツールを使ったりするなど、様々なツールを駆使して組織を運用していました。

しかし、FarcasterネイティブのDAOとして確立することによって、ソーシャルグラフやフィード、さらにはチャネル機能などを通じたコミュニケーションを図りながら、ユーザー体験を向上させると期待されています。また筆者個人の意見としては、最終的に「DAOの投票率の低さを改善することに繋がる」のではないかとも考えています。

ポイントとしては、「いかにクリプトネイティブな手法に基づきながらユーザー体験を高められるか」であり、これがFarcasterネイティブのDAOによって実現されるのであれば、質の高いアクティブユーザーを増やすことに繋がり、現在DAOのコミュニティ部分が抱えている様々な課題を解決することに繋がるのではないかと期待しています。


現在、Farcasterエコシステムには多くの開発者が参加しています。その一例として、次の記事で触れる予定ですが、ETHGlobalが「Farcaster Frameアプリに特化したハッカソン」を開催するなど、機能改善や新たなプロダクト開発を促進する動きが活発化しています。

今回取り上げたファッション・DAO以外にも、Farcasterネイティブなプロダクトや機能実装、ミームコインの実験など様々な活動が行われているため、今後も要注目の領域だと思います。

最後に次章では、静的な投稿からダイナミックなモジュールへの変化による「ユーザーエンゲージメントの質の向上」というテーマを中心に、マニアックな考察を「定期購読プラン」登録者向けにまとめています。ご興味あればご覧ください。

考察:静から動へ|SNSの進化とユーザーエンゲージメントの未来

出典:https://www.comnico.jp/we-love-social/snsbook202008

SNSの歴史は、情報共有の手段として進化してきた歴史でもあります。初期はテキストベースの投稿が主流でしたが、現在では動画やインタラクティブなコンテンツも加わり、よりリッチな体験へと変わってきています。

そんな中、web3型SNSの代表例として「Farcaster」が現れました。Farcasterはユーザーエンゲージメントとインタラクションの枠組みを再定義し、SNSの進化に新たなフェーズをもたらしていると、今注目を集めています。

先に紹介した「Warpshop」をはじめとするアプリケーションは、Frame機能を利用してユーザー同士の相互作用を促進し、ショップを即座に設定することができる能力を通じて、eコマースの統合の可能性を広げています。また、NounsDAOもSNS上での「NFTのミント」や「ガバナンスへの参加」を通じて、DAO(≒コミュニティ)での個人の活動機会を拡大しようと試みている代表例の一つです。

このようにFarcasterは、情報共有の場を越え、実際の価値交換や有意義なインタラクションが行われる場へと、SNSの役割そのものを拡大しています。そして、この進化の背景には、「静的な投稿」から「ダイナミックなモジュール」への変化による「ユーザーエンゲージメントの質の向上」という大きな要因があると考えています。


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まとめ

今回は、「Warpcastはweb3時代における『スーパーアプリ』になり得るか」シリーズの第1弾として、「Farcasterエコシステムで誕生する多種多様なオンチェーン機能群を概観」をテーマに、その概要から詳細な情報に至るまで、幅広く解説しました。

本記事が、Farcasterエコシステムにおけるファッション、DAOでの取り組み事例や、将来的なWarpcastの発展可能性などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。

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