情報伝達の手段が劇的に進化する中で、私たちが情報をどのように受け取り、共有してきたかを振り返ることは、未来を見据える上で重要です。
印刷機の発明に始まるオフラインメディアの歴史は、知識と情報の広範な普及を可能にし、社会に大きな変革をもたらしました。そして、この技術革新は後のメディア発展の基盤となり、新聞やラジオ、テレビなどの新たなメディアが次々と登場しました。
これらのメディアは、私たちの日常生活に深く根付き、今もなお影響力を持ち続ける情報源として機能しています。
しかし、時代が移り変わる中で、オンラインメディアの台頭がオフラインメディアの地位を揺るがしました。インターネットの普及により、情報は瞬時に広がり、誰もが発信者となることが可能になったのです。この変化は、情報伝達の手段を劇的に変え、社会の構造そのものに影響を与えています。
そして今、私たちは次の進化の段階である「メディア3.0」、つまりオンチェーンメディアの時代に突入しています。ブロックチェーンを活用したこの新しいメディア形態が既存のメディアとどのように異なるのか、そして現在の立ち位置と今後の発展可能性について、本記事で深掘りしていきます。
FarcasterやLensなどの分散型ソーシャルメディアが脚光を浴びる中、本記事が皆さんのメディア3.0への理解をより深める一助となれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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メディア1.0−2.0:オフライン/オンラインメディア
オフラインメディアの登場
オフラインメディア(メディア1.0)の歴史は、印刷機の発明に始まります。
15世紀にヨハネス・グーテンベルクが印刷機を開発したことで、本や新聞の大量生産が可能となり、情報の伝達が劇的に効率化されました。
この技術革新は、知識の普及と社会の変革において革命的な役割を果たし、後のメディア発展の基盤を築いたと言われています。
そして、そこから19世紀から20世紀にかけて、新聞・ラジオ・テレビといった新たなメディアが登場しました。
みなさんもご存知のように、新聞は日々の出来事を詳細に報じる媒体として機能し、ラジオはリアルタイムでの情報伝達を実現しました。そして、テレビは映像と音声を組み合わせた強力な情報伝達手段として登場し、それぞれのメディアが社会に与える影響力を飛躍的に高めました。
これらのメディアは、メディア1.0(オフラインメディア)の時代における主要な情報供給源として広く利用されてきたと同時に、現代においてもその重要性は失われていません。
しかし、最近ではテレビの視聴率が低迷しており、この流れを止めることができていないのが現状です。
オンラインメディアの登場と現在
コンピュータ技術やネットワーク技術の進化に伴い、インターネット上でテキストのみならず、画像や音声、動画などの多様なメディア形式を扱うことが可能となり、「オンラインメディア(メディア2.0)」が登場しました。
オンラインメディアの登場は、1990年代初頭から中頃にかけてのことであり、この時期はインターネットの普及が急速に進展した時代でもあります。
文字数などの制約がなく、かつ低コストで情報を広めることができるという利点が魅力となり、多くのメディア企業が印刷やディストリビューション(配布)にかかるコストを削減するため、積極的にデジタル化を推進しました。
ただ、オンラインメディアの誕生初期は、「新聞を写真に撮ってPDF化する」、あるいは「テキストをインターネットに載せる」といったシンプルなものでした。
しかしその後、インターネットの普及と技術の進化により、テキスト・音声・ビデオなどを制約なく自由に埋め込んだり、ハイパーリンクの導入によって情報の相互参照が容易になり利便性が高まったりしたことで、メディアの形態と影響力は飛躍的な進化を遂げることになりました。
こうした技術的進化を経て、個人や企業は許可を得ることなく、自らの考えや作品を世界中に発信できる時代が到来しました。まるで誰もがデジタルな印刷機を持つかのように、情報発信の民主化が実現されたのです。
つまり、オンラインメディアの創世記は「新聞を写真に撮ってPDF化する」「テキストをインターネットに載せる」といった単なるオフラインメディア情報の置き換えからスタートし、そこから全く新しい形式の情報提供を可能にした点で、革命を起こしたと言えます。
さらに、近年ではSNSの登場により、オンラインメディアはインタラクティブなものとなりました。SNSを通じて、誰でも記事に対してコメントを付けることができ、時にはそのディスカッションが元のコンテンツよりも重要になることもあります。
この構造変化により、言論の自由が以前よりも担保される時代となり、限られたオフラインメディアが情報のディストリビューションを支配していた90年代に比べると、遥かに分散化された情報環境が実現したと言えます。
その一方で、最近のTwitterは以前よりもノイズが多く、またカルチャー戦争によって分断も目立つようになっていることから、公共の場ではなくプライベートなグループチャットで重要な議論や情報提供を行う傾向が強まっていると、個人的には感じています。
メディア3.0:オンチェーンメディア
オンチェーンメディアの登場
さて、前章で述べた通り、メディア1.0(オフラインメディア)では印刷機をはじめとする技術革新により、知識や情報の広範な普及が可能となり、社会全体の識字率向上や文化の発展に大きく寄与しました。
一方、メディア2.0は、オフラインメディア情報の単なる置き換えから始まりましたが、そこから全く新しい形式の情報提供を可能にし、情報伝達の革命を引き起こしました。
そして、この流れの次に訪れると期待されるのが、メディア3.0:オンチェーンメディアによる革命です。
ただ、現時点におけるメディア3.0は、メディア2.0でいうところの創世記フェーズに位置していると筆者は考えます。
つまり、現在のオンチェーンメディアは、「新聞を写真に撮ってPDF化する」「テキストをインターネットに載せる」といった、メディア2.0創世記における「オフラインからオンライン」というシンプルなデジタル化の段階にあると言えます。
メディア3.0の先駆けプロジェクトを概観
【ブログ】Mirror
Mirrorは、2020年に設立されたWeb3ニュースレタープラットフォームであり、分散型技術を活用してクリエイターに新たな可能性を提供しています。
このプラットフォームでは、クリエイターが作成したコンテンツを分散型ストレージに保存し、分散型ドメインを使用して公開することが可能です。加えて、NFTを活用したコンテンツの収益化も実現しています。
また、クリエイターがプロジェクトや作品の資金を集めるためのクラウドファンディングツールも提供しており、多くのDAOやweb3エンティティにとって重要な出版プラットフォームとなっています。
しかし、2024年5月、後述するParagraphがMirrorを買収し、将来的に両者を統合して一つのプロダクトとして提供する予定であることが発表され、話題となりました。
【ブログ】Paragraph
Paragraphは、2021年に設立されたweb3ニュースレタープラットフォームであり、その豊富な機能で注目を集めていることから、現時点では最も使用されているweb3ニュースレタープラットフォームと評されています。
このプラットフォームでは、クリエイターがコンテンツを作成する際にAIを利用した執筆支援機能を提供したり、暗号資産や法定通貨を用いた柔軟なサブスクリプションオプションを提供し、Mirrorにはなかった革新的な機能をいくつも備えていることが特徴です。
また、Farcasterコミュニティの作家やクリエイター、ブランドを上手く巻き込んで共に成長してきた点も、マーケティング力に長けていたと個人的には考えています。
【音声】Pods
Podsを一言で表現すると、オンチェーンPodcastのプラットフォームです。音声エピソードをNFTとしてブロックチェーンに公開し、コミュニティがそれを収集・保有することで、クリエイターの直接的な収益化を実現します。
利点として、音声クリエイターはPodsを利用することで従来の広告モデルに依存せず、コミュニティから直接収益を得ることが可能となります。一方、リスナーは収集したエピソードNFTを保有し、限定版のデジタルアイテムとして保持することで、クリエイターの作品に対する支持を表明したり、ステータスやコミュニティの一員であることを表明できます。
この仕組みにより、例えばトークンゲートされたチャットルームを作成したり、エピソードを収集したリスナーだけがアクセスできる限定コミュニティを構築できるなど、従来の音楽NFTが実現していたような特典やエンゲージメントを、Podcastという音声メディアで再現しようとしているのです。
【音楽】Music NFT
歴史的に「音楽」は、メディア(媒体)の形式に応じてその形態を変えてきました。
例えば、現代のストリーミング時代においてもアルバムの収録時間が40〜50分である理由の一つは、12インチ・33回転のビニールレコードの影響の名残だとされています。当時のレコードは片面約22分、合計で約45分の音楽を収録できたため、この物理的な制約がアルバムの標準的な長さとして現在も影響を与えているのです。
また、Spotifyのプレイリスト・アルゴリズムに採用されやすくするために、アーティストは曲の構成を調整することがあります。例えば、現代のリスナーが映画を倍速で視聴するような感覚で音楽を聴く傾向があるため、曲の序盤にフック(サビ)を配置し、リスナーの注意を引きつけ、プレイリスト内での優先順位を保つ工夫がされています。
さらに、TikTokを使った二次創作としてのUGC(ユーザー生成コンテンツ)文化が主流になってきたこともあり、アーティストは15秒の範囲に収まるようにサビの長さを調整するなど、メディアの形式に合わせて音楽を制作することが一般的になっています。
このように、メディアが1.0から2.0へと変化する中で、各プラットフォームの形式に合わせて音楽が制作されるようになり、その結果アーティストのクリエイティビティに直接的な影響を与えています。
では、NFTをメディアとして捉えたときに、どのように音楽を載せることができるのでしょうか。
例えば、オンラインメディア創世記において「新聞を写真に撮ってPDF化」する、または「テキストをインターネットに載せる」といった方法が一般的だったように、音楽の保有証明部分をオンチェーンに格納する事例が一般的です。
音楽データ自体は容量が大きいため、Ethereum L1に載せるのは非現実的なので、保有証明のみをオンチェーンに載せるのが通例です。
また、「オンチェーンで保持できるように単調な音だけを使用し、データ容量を少なくしてオンチェーンに格納する」という形での音楽NFT制作事例もありますが、いずれにせよ多くの人に受け入れられる音楽NFTのモデルはまだ見つかっていないと考えられます。
このように、執筆時点におけるメディア3.0は、メディア2.0の創世記に類似したフェーズにあると言えます。
当時、オンラインメディアは「新聞を写真に撮ってPDF化」する、あるいは「テキストをインターネットに載せる」といったシンプルなフェーズにありましたが、そこからオンラインメディアが技術的な進化を遂げて、無制限の長さと双方向性をもったこと、そしてハイパーリンクの革命が起きたことにより、誰でもメディアを立ち上げることが可能となり、情報のディストリビューション方法を劇的に変え、権力構造を一変させました。
では、オンチェーンメディアがもたらす進化の可能性として、どのようなケースが考えられるでしょうか。
オンラインメディアがもたらした革命、つまり、誰もが発信者になれる時代を到来させたことや、無制限の長さと双方向性をもったこと、そしてハイパーリンクによって他の情報同士を繋げ合わせることができたような革命は、オンチェーンメディアでは何に該当するのでしょうか。
メディア3.0(オンチェーンメディア)の潜在力
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まとめ
今回は、ブロックチェーンを活用した「メディア3.0」、つまりオンチェーンメディアが、既存のメディアとどのように異なるのか、そして現在の立ち位置と今後の発展可能性について解説しました。
FarcasterやLensなどの分散型ソーシャルメディアが脚光を浴びる中、本記事が皆さんのメディア3.0への理解をより深める一助となったのであれば幸いです。
また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。
🧵メディア3.0の未来を考える|オンチェーンメディア時代の革命とは
— イーサリアムnavi🧭 (@ethereumnavi) July 1, 2024
情報伝達の手段が劇的に進化する中で、私たちが情報をどのように受け取り、共有してきたかを振り返ることは、未来を見据える上で重要になってきている。… pic.twitter.com/8kPfVejmN5
オンチェーンメディア と AI で世界が変わる気しかしない
— oan (@nao09831256) July 17, 2024
メディア3.0の未来を考える|オンチェーンメディア時代の革命 https://t.co/DW4kvrrw3Q #イーサリアムnavi @ethereumnaviより
クリプト系分散型ソーシャルメディアとしてはSteemという先輩がいて
— 貫く剣 | 🪞➕🧬♦️ZEEK🎩 (@piercesword) July 1, 2024
今の盛り上がり(?)を見ると「早すぎたんだ」ってことなんだろうなと思っているhttps://t.co/f6uZ42Dkce
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