「HyperLoot Foundation」の概要|成長から成熟へ、競争から共生へ 〜思いやりや愛をベースにした利他の文明開花への布石〜

どうも、イーサリアムnavi運営のでりおてんちょーです。

今回は、HyperLootというNFTプロジェクトが設立した財団「HyperLoot Foundation」について紹介・解説していきたいと思います。

HyperLootについては以前別記事にまとめているので、ご存じない方は合わせてご参考ください。

昨今のNFTプロジェクトは、ユーザー(NFT購入者)に対してイニシャルで約10,000体をmintさせて資金調達をおこない、その後は緩やかに運転資金が減少していく、あるいは、IP・コラボ・別トークン発行などの線から資金調達を目指す動きが顕著です。

しかし後者に関しては、CC0 NFTのような『商用利用権利などを第三者に対して解放しているプロジェクト』にとっては取りづらい選択肢となっており、持続的な資金調達が難しいといった課題があるのではないかと言われています。

出典:後編|今さら聞けないCC0 NFTについて徹底解説します!

筆者は以前までこの課題に対して、上の出典元記事に記載の通り「NounsDAOの1日1体NFTオークションモデル」「多様な資金提供プログラム」が、有力な解決案になり得るのではいかという私見を述べていました。

しかし先日、同じCC0 NFTプロジェクトであるHyperLootから財団(以下Foundation)を設立し、『Lootにインスパイアされた潜在的なプロジェクトに対して、持続的に資金提供をおこなっていく』という旨の発表がなされ、注目が集まりました。

ということで本記事では、HyperLootというNFTプロジェクトが設立した財団「HyperLoot Foundation」についてご紹介することで、本プロジェクトの概要ならびに注目ポイント、NFTスペースにおける「成長から成熟へ、競争から共生へ」の意味などを理解していただくことを目的とします。

でははじめに、この記事の構成について説明します。

STEP
「HyperLoot Foundation」とは

まずは、HyperLoot Foundationという資金調達財団の概要について、設立背景とともに解説してまいります。

STEP
持続可能なFoundationにするための仕組み

続いて、HyperLoot Foundationをサステナブルに持続させていくためにどのような仕組みを用いているのか、またNounsDAOのモデルと何が異なるのかなどについて、解説してまいります。

STEP
筆者の考察・論考

最後に、HyperLoot Foundationが注目に値するポイントをいくつかピックアップして、筆者の私見を交えながら解説してまいります。

本記事が、「HyperLoot Foundation」の概要や注目ポイント、思いやりや愛をベースにした利他の文明開花への布石などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

Alpha Navigatorは、超アーリーなクリプトプロジェクトに特化して探知し、webサイト, discord, twitterで情報発信を行っています。

目次

「HyperLoot Foundation」とは

出典:hyperlootproject.com/foundation/

創設の背景について

2021年8月28日にdom氏がスマートコントラクトをデプロイし、Loot (for Adventurers)というNFTコレクションが創出されました。

黒い背景に文字だけが書かれたNFTコレクションというのは非常に斬新なアプローチだったため、当時のNFTスペースに対するカウンターカルチャーとして多くのクリプトコアな人々から評価されました。

Lootプロジェクトは先述の通り「文字だけ」のNFTコレクションなので、そこから多くの派生プロジェクトが、ボトムアップスタイルで創出されました。

出典:文字列だけのNFTプロジェクト「Loot」の概要ならびに『ボトムアップ型NFT』の解説と事例紹介

その中には、「HyperLoot」や「Realms」などの実績あるNFTプロジェクトも含まれており、LootというNFTコレクションは「ボトムアップNFT革命を引き起こすトリガー」になったと、筆者は認識しています。

しかしながら、この『Lootを用いたボトムアップNFTコレクション創出ムーブメント』には、欠点もありました。

まず一つは、「Lootバッグ内のアイテムを「視覚化」するための良い方法がなかったこと」です。

ちょうどLootがローンチされたあたりの時期は「Lootを使って視覚化に挑むプロジェクト」よりも「Lootそのものを代替する文字列NFT」に着手する人が多かったことから、Lootを視覚化するためのプロジェクトがなかなか出てこなかったという背景があります。

出典:Twitter

その解決案として打ち出された「HyperLoot」や「Realms」などが、LootエコシステムにおけるLayer2(視覚化層)として機能しつつあるため、Lootローンチから1年経った今では解決しつつある状況になりました。

特にHyperLootは、パブリックドメインの2次元および3次元アセットのライブラリーを提供することで、開発者たちが個々のNFTプロジェクトで使用できるように環境整備をおこなってきました。

出典:後編|今さら聞けないCC0 NFTについて徹底解説します!

さらにもう一つ決定的な欠点として、「多くのビルダーが資金不足を理由にプロジェクトの継続を断念せざるを得なくなってしまったこと」が挙げられます。

今までのLootプロジェクトは、実際にはFoundation(財団)が存在しておらず、派生プロジェクトをサポートおよび資金提供するための明確なメカニズムがなかったのです。

2D/3Dアセット問題に関しては先述の通り、HyperLootアートワークのパブリックドメイン化により手が打たれましたが、資金難の問題に関しては早急な対応が必要でした。

そこで、Lootエコシステム内で多くのプロジェクトが直面する資金調達の課題を解決すべく、今回の主題である「HyperLoot Foundation」が設立されました。

次の章では、「HyperLoot Foundation」の概要について述べてまいります。

概要

出典:hyperlootproject.com/foundation/

HyperLoot Foundationは、Lootにインスパイアされた潜在的なプロジェクトに対して、資金提供をおこなうための機関です。

要は、HyperLootのビジュアライゼーションアセットを使用するプロジェクトに対して、金銭的な支援をおこなう財団のようなものです。

また、特定のNFTまたはガバナンストークンの保有者が提案に投票できるいわゆるDAOとは現状異なり、「ボード」の裁量で中心的な運営によりリソースを提供していく資金提供機関です。

「ボード」の仕事:HyperLootアセットを使用してプロジェクトを構築するための資金を探している、潜在的なビルダーを調査し、選別すること。

つまり、潜在的なクリエイターが提案を提出してNouns保有者がどのプロジェクトに資金を提供するかについて直接投票する「Nouns Prop House」のモデルとは明確に異なります。

HyperLoot Foundationのボードは、関心のあるビルダーを探し、彼らのプロジェクトを精査し、それらのアイデアを HyperLoot コミュニティにもたらすという役割を担います。

ちなみにHyperLootのNFTを持っている人は、特定のプロジェクトに資金を提供するかどうかを意思表明することができ、その情報はボードの最終的な資金決定の際に使用されるそうです。

なお、ボードの初期メンバーは、HyperLoot創設メンバーである以下の3名で構成されています。

  1. Herin Kim(@herinkc):フルスタック&バックエンド(Solidity)エンジニア
  2. Thanakron Tandavas(@tandavas):UIデザイン&フロントエンドエンジニア
  3. Wanchana Intrasombat(@VictoriorCG):デジタルアーティスト
出典:Discord

創設メンバー曰く、まずは土台を作ることが本プロジェクトの成功への大きなチャンスになるため、現在は中心的な運営をおこなっていますが、基盤がしっかりと整ったら将来的にはDAOに移行する可能性もあるとのことです。

持続可能なFoundationにするための仕組み

出典:hyperlootproject.com/foundation/

まず、執筆時点においてHyperLoot Foundationの資金は、以下2つの財源から充てられています。

  1. HyperLoot NFTの一次セール売り上げ
  2. OpenSeaなどを通した二次セールで発生したロイヤリティ料金のうち15%

これら資金を用いて、「ETH Funding」というかたちでHyperLootのアセットを用いたプロジェクトに対して支援をおこないます。

執筆時点では「CC0 Wars」や「HyperVenture」がこの対象となっており、HyperLoot Foundationの資金を用いて開発が続けられている状況です。

なお、後者のHyperVentureはHyperLoot Foundationが正式に設立する前のフェーズから取り掛かっているプロジェクトですが、最初の3年間は収益の15%をHyperLoot Foundationに寄付することになっています。

この点に関してはNounsDAOのモデルと異なりますが、Nounsに半永久的なNFT発行による資金調達メカニズムが備わっているのに対して、HyperLootには備わっていないことが要因だと考えられます。

このあたりは、Dope Warsと近いやり方を採用していると言えます。

Dope NFTなどをはじめDOPEエコシステムを利用した派生/拡張プロジェクトを構築した際、そのプロジェクトの売り上げの5%分のトークン(ETH・独自トークンなどの形式)を直接Dope DAOのトレジャリーに送ってもらうように、「規範」として促しています。 DOPEエコシステムを成長させるための新しいアーティストやビルダー、コミュニティのメンバーに対してDAOトレジャリーから資金を提供し、その一方で彼らがお金を稼いで成功したら、その資金が他の人を助けられるようにトレジャリーに還元することを可能にするモデルであると謳っています。 これは、コントラクトベースで資金流入源が担保されているNounsDAOと比較すると真逆のモデルとも言え、中長期で機能するかどうかに注目しています。

出典:新進気鋭かつ野心的なLootインスパイア |Optimism・StarkNetでも展開するフルオンチェーンNFTプロジェクト「Dope Wars」について解説

HyperLoot Foundationでも、財団の資金が枯渇してしまわないためにこのような寄付モデルを採用することで、サステナブルに機能し続ける仕組みとして確立させようとしているのです。

出典:前編|今さら聞けないCC0 NFTについて徹底解説します!【「CC0」とは?】【NFTをCC0ライセンスにするのは何故?】

もともとFlipmapやTounsで見られていた「派生先からオリジナルプロジェクトに還元するムーブメント」を、Foundationの仕組みとして取り入れたとも言えます。

これによりHyperLootの運営チームは、Lootエコシステムで課題となっていた資金調達問題の解決を図るとともに、HyperLootの2D/3Dアセットのマスアダプションを加速させようとしています。

HyperLootのビジュアライゼーションレイヤーを、1つのスタジオで沈めたり泳いだりできるようにするのではなく、web3全体の素晴らしい才能を活用して成功のチャンスを増やしたいと考えています。私たち以外の誰かが、増すアダプションを加速する”より魅力的なエクスペリエンス”を構築できるのであれば、それでいいのです!彼らの成功はHyperLoot全体の成功につながり、より多くのビルダーに資金を提供して魅力的なプロダクトを作成する道を開くことに繋がるでしょう。したがって、HyperLootビジュアライゼーションレイヤーを自社のスタジオ内で垂直方向に拡張することを検討している一方で、HyperLoot Foundationによって魅力的なプロダクトを構築している他の多くの仲間が、エコシステムを水平方向に拡張していけると感じています。この拡大を促進することで、HyperLootがデジタル文化に根付く成功の全体的な機会が増加するのです。

出典:hyperlootproject.com/foundation/

執筆時点では実証実験の段階ではありますが、ボトムアップ型NFTにおける課題を解決するための取り組みとして非常に興味深く、今後の動向に注目が集まる事例であると思われます。

筆者の考察・論考

ここで一度おさらいしておくと、Lootエコシステムにおいて中長期での派生プロジェクト事例が出てこなかった要因は、大まかに以下の二点であると考えられています。

  1. Lootバッグ内のアイテムを「視覚化」するための良い方法がなかったこと
  2. 多くのビルダーが資金不足を理由にプロジェクトの継続を断念せざるを得なくなってしまったこと

①に関しては、「HyperLoot」や「Realms」などがLootエコシステムにおけるLayer2(視覚化層)として機能しつつあり、さらにHyperLootは2D/3DアセットをCC0ライセンスで提供しています。

これにより、「HyperLoot Card」のような事例を創出しやすくしただけでなく、Lootバッグ内のアイテムを「視覚化」するための良い方法をスペース全体に対して授けるという功績を残しました。

そして今回は②に関しての課題解決を図るため、本記事の主題であるHyperLoot Foundationが設立されました。

初期フェーズではHyperLootの創設メンバーが中心的にFoundationを運営していますが、これは私服を肥やすための施策ではなく、Lootエコシステム全体を発展させるための明確な「利他的活動」であると、筆者は考えています。

もちろん、回り回ってHyperLootというNFTプロジェクトにリターンが返ってくるとは思いますが、その道のりは長く、自プロジェクトの売上や潜在売上(OpenSeaなどの二次流通手数料の15%)を寄付している点で、思いやりや愛なしでは成し得ない所業でしょう。

さて、筆者はこの事例を見た際に、稲盛和夫氏の「生き方」という本に書かれた一節を思い出しました。

(前略)これ以上、経済的な富のみを追い求めるのはやめるべきです。(中略)つまり私欲はほどほどにし、少し不足くらいのところで満ち足りて、残りは他と共有するやさしい気持ち。あるいは他に与え、他を満たす思いやりの心。甘いといわれようが、絵空事といわれようが、私はそのような考え方が必ず日本を救い、大きくいえば地球を救うと信じています。(中略)そのようなあり方が実現できたとき、私たちは成長から成熟へ、競争から共生へという、現在はやや画餅に近いスローガンを現実のものにし、調和の道を歩き出すことができるのではないでしょうか。さらにそのとき、利他という徳を動機にした新しい文明が生まれてくるかもしれません。(中略)新しい時代においては、もっと相手を良くしてあげたい、もっと他人を幸せにしてあげたいという、思いやりや「愛」をベースにした利他の文明が花開くかもしれないのです。

出典元:稲盛和夫 『生き方 – 人間として一番大切なこと』(サンマーク出版、2004年)204ページ

この本は2004年に書かれたものですが、ブロックチェーン技術が確立されつつある現在では「利他という徳を動機にした新しい文明」が技術の力を借りて築けるのではないかと、朧げながら筆者は考えています。

例えば、「Gitcoinでの寄付活動」「dom氏のwagmigotchiプロジェクト」などは示唆に富む事例です。

ただ、Gitcoinに関してはオンチェーンの情報では「寄付した」という出口しか見えないため、もちろん「エアドロップ(給付金)目的」という動機で入った人も多々いるでしょう。

しかし、中長期で『経済的インセンティブなどの外発的動機→内発的動機』へと緩やかにユーザーの意識がシフトしていけば良いと、楽観的に捉えています。

経済的なインセンティブという「外発的動機」からスペースに参入・アクション(トランザクション生成)をおこない、最終的には利他の心が芽生え「内発的動機」へとシフトしていくことで、稲盛氏が「絵空事」「画餅に近いスローガン」と表現していた世界も近づくのではないでしょうか。

また、利他的な行動履歴が視覚化されることによる新たな意味づけもあるでしょう。

例えば人気ゲーム「フォートナイト」では、戦い以外の遊び要素の一つとして豊富なスキン(見た目)やエモート(動き)を提供しており、これに対して課金する若者が多いという話もあったりします。

つまり、本来無課金でもゲームプレイに支障がない「自己表現」「コミュニケーション」の部分に多くの需要があるという点においても『利他的な行動履歴の視覚化』には可能性が秘められており、「共生」「協力」などのオンチェーン履歴は「利他という徳を動機にした新しい文明」への足掛かりとなるのではないかと、筆者は感じています。

そして、今回ピックアップしたHyperLoot Foundationのような利他的な取り組みは、「共生」「協力」という思いをもったプロジェクトが今後たくさん創出され持続していくポテンシャルがあるという視点からも、非常に興味深いものでしょう。

出典:hyperlootproject.com/foundation/

成長から成熟へ、競争から共生へ。

思いやりや愛をベースにした利他の文明開花への布石は、NounsDAOエコシステムやCC0 NFTムーブメント、そしてHyperLoot Foundationの取り組みなど、NFTスペースでの実証実験を通して模索されていくのかもしれません。

まとめ

イーサリアムnaviの「今まで」と「これから」

今回は、HyperLootというNFTプロジェクトが設立した財団「HyperLoot Foundation」について紹介・解説しました。

本記事が、「HyperLoot Foundation」の概要や注目ポイント、思いやりや愛をベースにした利他の文明開花への布石などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。

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