今回は、先日開催されたETHGlobalによる「Autonomous Worldsハッカソン」でファイナリストに選出されたプロジェクトについて、紹介ならびに解説したいと思います。
さて、弊メディアではこれまで、事あるごとに「オンチェーンゲーム」「Autonomous Worlds(自律型世界)」について取り上げ続けてきました。
現在、世界中のクリプトコアな人々が注目している「オンチェーンゲーム」の領域。
オンチェーンゲームとは何なのか。既存のブロックチェーンゲームやGameFiとは何が違うのか。どの点で秀でているのか。
クリプトの文脈において多層的な含蓄を持ったゲームプロダクトについて、その魅力や可能性を探っていく。
というのも、近ごろa16zやparadigm、1kxなど、グローバルでの著名クリプトVCが「Autonomous Worlds」「オンチェーンゲーム」に注目したり、BanklessやThe Daily Gweiなどでも注目テーマとして取り上げられる機会が増えているものの、認知度としてはまだまだ低いフェーズだと思っていたからです。
「参加者が全然集まらなかったらどうしよう…」とすら思っていました。
ただ、そんな心配は杞憂に過ぎなかったようで、合計で110個ものAW関連プロジェクトがsubmitされ、またその質の高さ・発想力の豊かさにも驚かさせた次第です。
🌐 先日開催されたAWハッカソン 🌐
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) May 29, 2023
finalistsやsubmitされたプロジェクト群を見返していますが、とても発想力豊かで質が高いものが多いですし、あと思っていたより早くAWの認知度高まってきたなという所感。
なお、finalistsたちが構築したプロジェクトについては、今週分の記事でまとめる予定です📝 https://t.co/u0Dm3gWDB4 pic.twitter.com/9fMKYgzRbg
ということで本記事では、「Autonomous Worldsハッカソン」でファイナリストに選出されたプロジェクトについて紹介・解説しつつ、本ハッカソン全体を通しての筆者の所感などについても私見を述べていきたいと思います。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、「ETHGlobal」というものの概要や、今回のAWハッカソンの趣旨などについて概観していきます。
続いて、今回のAutonomous Worldsハッカソンでファイナリストに選出された10個のプロジェクトについてそれぞれ紹介しつつ、概要などについて簡単に解説していきます。
最後に、「参加者数の多さ」「多種多様なアイデアが創出され、時代が前に進んだ感」「現時点でのMUDの課題も浮き彫りに」といったテーマで、本ハッカソン全体を通した所感について、私見を交えながら述べていきます。
本記事が、ETHGlobalによる「Autonomous Worldsハッカソン」でファイナリストに選出されたプロジェクトの詳細、そしてAutonomous Worldsの具体的事例や今後の可能性・課題などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。
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「ETHGlobal」の概要や、今回のAWハッカソンについて
「ETHGlobal」とは
ETHGlobalは、世界各地で「Ethereumに関連するハッカソン」を主催している団体です。
2020年頃から、「数千人の開発者をEthereumエコシステムにオンボードする」というビジョンを掲げ、Ethereum Foundationの支援を受けながら活動を続けています。
2023年4月には、東京で「ETHGlobal Tokyo」が開催され話題になったため、名前くらいは聞いたことがある方がほとんどなのではないでしょうか。
クリプト業界では、このハッカソンへの出場をきっかけに、新しいプロジェクトが発足したり、資金調達を実施したりする事例が多数観測されています。
今回のAWハッカソンについて
そんなETHGlobalが、今回は弊メディアでも度々取り上げている「Autonomous Worlds(自律型世界)」をテーマにしたハッカソンを開催しました。
冒頭でも述べた通り、a16zやparadigm、1kxなど、グローバルでの著名クリプトVCが、Autonomous Worlds・オンチェーンゲームに注目したり、BanklessやThe Daily Gweiなどでも注目テーマとして取り上げられる機会が増えていることから、今回のハッカソンの開催に至ったのではないかと推測します。
また、ベアマーケットではゲームコンテンツが盛り上がりやすいという過去の傾向がありますが、「Next ブロックチェーンゲーム」という文脈からもAutonomous Worlds・オンチェーンゲームが注目され始めているように筆者は感じています。
審査員
今回のAWハッカソンで審査員を務めたのは、以下のメンバーです。(敬称略)
- karl.floersch.eth (OP Labs)
- Annie (OP Labs)
- justin glibert (0xPARC)
- gubsheep (0xPARC)
- ivan (0xPARC)
- alvarius (Lattice)
- kooshaba (Lattice)
- frolic (Lattice)
- biscaryn (Lattice)
- guiltygyoza (Topology)
- Arb (Moving Castles)
- Austin Griffith
- rafael_morado
- lermchair
- Jason Morton
- @dantecamuto
グラント提供者
今回のAWハッカソンのグラント提供者(団体・プロジェクト)は以下です。
ファイナリスト及びプロダクト紹介
ETHGlobalによる今回のAutonomous Worldsハッカソンでは、全部で110個のプロジェクトがsubmit(提出)され、その中から10個のプロジェクトがファイナリストに選出されました。
We are proud to announce ─
— ETHGlobal (@ETHGlobal) May 26, 2023
the 10 Autonomous Worlds finalists! 🌐
🧱 OPCraft2
🤑 Coin Race
🧬 Autonomous Game of Life
🍩 Netherscape
🎲 MUDVRF
🗺️ Realm of Pepe
🎨 Isle of Colors
💎 Garnet
⚔️ PFP WAR
🚢 Trade Wars
👇/🧵 This is the first hackathon of its kind. More info below
ついこの前までは、「Autonomous Worlds」という言葉を誰も知らない時期であったことを思うと、ここまで多くの人が関心を持ち集まるほどになったことに、筆者としては感慨深く感じています。
なお、以下イラストで『どの地域からプロジェクトがsubmitされたか』を確認してみると、アメリカやヨーロッパ、あとはインドからの参加が多いことが見て取れます。日本からも、参加者がチラホラいらっしゃったことも分かります。
では、この中から見事ファイナリストとして選出された10個のプロジェクトと開発者情報などについて、次節から概観してきたいと思います。
🧱 OPCraft2
- Tl;DR
- ユーザーが作成した新しいブロックで、OPCraftを拡張
- 第一弾は、Minecraftの「レッドストーン」のようなもの
- ユーザーはブロックが他のブロックにどのように遷移するかを指定し、それを世界に配置することができる
- Submitメンバー
「OPCraft2」は、従来のOPCraftゲームに「ユーザーが作成した新しいブロック」を追加できるようにし、OPCraftを拡張することを目的としたプロジェクトです。
既存の標準的なECSデザインパターンを用いた「MUD」の上に構築されており、ユーザーは新しいブロックをバックエンドのコンポーネントとして登録することができます。
第一弾は「Redstone(レッドストーン)」という名のプロジェクトが進行しており、ユーザーは「特定のブロックがどのように他のブロックへとトランジション(遷移)するか」を指定したり、それをOPCraftの世界に配置できるようになる予定です。
これにより、OPCraftの自律型世界の中でよりMinecraftに近いゲームプレイを可能にしたり、Minecraftの緊急脱出装置(※上写真青ブロック部)のような機能が実装できることを目指しています。
要は、オープンに開かれたOPCraftの世界に対して、ユーザーが利便性を高めたり、世界を拡張するための機能を追加実装しようとする試みの一つですね。Autonomous Worldsの仕様を活かした、素晴らしい発想のプロジェクトだと思います。
各ブロックは、「色」と「トランジション(遷移)ルール」のリストで記述されています。
ユーザーがブロックを配置すると、そのブロックのトランジションルールが処理され、ルール(ex: 隣のブロック==○○)が満たされた場合、別のブロックに変化するといったものです。
詳しい実装内容は、こちらからソースコードをご覧ください。
🤑 Coin Race
- Tl;DR
- NFTを使ったブラウザベースの対戦型Web3ゲーム
- MUD 2フレームワークとreactプラグインを使用
- ゲームはdegen文化に焦点を当て、ゲームデザインはゼロからオリジナルに作られた
- Submitメンバー
Coin Raceは、NFTを使ったブラウザベースの対戦型オンチェーンゲームです。
このプロジェクトは、MUDの進化版である「MUD 2フレームワーク」と「Reactプラグイン」を駆使して作られています。また、ゲームデザインはオリジナルであり、0から作り上げられたものとなっているようです。
このゲームはdegenカルチャーに焦点を当てたものとなっていて、ざっくり言い表すと「プレイヤーは架空のコインの採掘と取引を行う」といったゲーム性のオンチェーンゲームとなっています。
上写真のように、プレイヤーはマップの特定の場所からスタートし、スタミナ・時間・コインを管理しながら最適な行動を選択し、勝利を目指します。
1ゲームは5分程度で終了しますが、その間にプレイヤーは「できるだけ多くの鉱山を採掘する」、「特定の種類のコインを最も多く生成するように各鉱山を構成する」など、勝つためのいくつかの戦略を模索しながら競い合うといった楽しみがありそうです。
なお、Coin Raceのデモ版はこちらからプレイできるので、興味がある方はお試しください。
🧬 Autonomous Game of Life
- Tl;DR
- MUD 2を活用して構築された、オンラインでのマルチプレイが可能な「ライフゲーム」
- チェーンはOptimismを使用
- オープンソース化されたAW用の「Onchainセルオートマトン・テンプレート」も提供している
- Submitメンバー
Autonomous Game of Lifeは、MUD 2を活用して構築された、オンラインでのマルチプレイが可能な「ライフゲーム」です。
ライフゲーム (Conway’s Game of Life) は1970年にイギリスの数学者ジョン・ホートン・コンウェイ (John Horton Conway) が考案した生命の誕生、進化、淘汰などのプロセスを簡易的なモデルで再現したシミュレーションゲームである。
出典:ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0
要は、ブロックチェーン以前から存在する「ライフゲーム」という概念を、MUD 2を使いながら完全分散型・フルオンチェーン仕様・マルチプレイ版として仕上げ直し、それをOptimismチェーン上で再構築したプロダクトとなります。
以前ご紹介した「Words3」などもそうですが、既存のゲームモデルや概念を『自律型世界/オンチェーンゲーム時代の仕様』に作り直して、アップデートするという発想は非常に面白いなと思います。
また、それに加えてAutonomous Game of Lifeでは、オープンソース化されたAW用の「Onchainセルオートマトン・テンプレート」を提供しているため、このテンプレートを使って誰でも任意のモデルのセルオートマトンを、オンチェーンで簡単に構築することが可能になります。
なお余談ですが、セルオートマトンを使用した最初のオンチェーンgenerative NFT事例には「Pixelglyphs」というコレクションがあるので、興味がある方は併せて以下の記事もご参考ください。
🍩 Netherscape
- Tl;DR
- 自律型のオンチェーンRPG世界を構築するオンチェーンゲームプロジェクト
- MUDエンジンを使用
- コンポーザビリティの高さと、解釈可能なルール性が魅力
- Submitメンバー
Netherscapeは、PCs (playable characters)を基本要素とした自律的なオンチェーンRPG(ロールプレイングゲーム)で、MUDをベースに構築されています。
PCs (playable characters)とは、ECSフレームワークの一種の「エンティティ」としてモデル化されたものであり、多くのコンポーネント(データ)とシステム(処理内容)が組み込まれています。
- エンティティ(空箱)
- 単なるID(uint型)であり、ロジックやデータを格納していない
- コンポーネント(データ)
- データを格納し、「エンティティにアタッチ(添付)」することが可能
- 「プロパティ」と考えることもできるが、データはクラスのプロパティとは異なる方法で構造化されている
- システム(ロジック)
- ロジックを実行する
- コンポーネントだけを扱い、エンティティは扱わない
こちらのデモ画面をご覧いただくと分かる通り、ゲームモデルとしてはポケモンやドラゴンクエストのようなRPGライクなものとなっています。
PCsはゲーム内のフィールドを散策し、資源を消費したり、敵と出会って戦ったり、資源を獲得したりしていきます。
これだけだと一般的なRPGと同じですが、「Netherscape」はそのコンポーザビリティの高さと解釈可能なルール性といった要素が、自律型世界として魅力的に見えます。
まず、ゲーム参加者はPCsに対して様々なオンチェーンメカニズム(処理関数)を作り出したり組み合わせることで、簡単にカスタマイズしながら独自のモデルを構築することができます。このあたりは、MUDをベースにAutonomous Worldsを構築することの大きな利点と言えるでしょう。
また、Sky Strifeと同じくバトルの待機時間などにはブロックタイムが用いられるそうです。
こういった仕様や設計に関しては、個人的に「ブロックチェーンゲーム」らしい設計だと思うので好印象です。
Netherscapeのエコシステムに参加する人々は、自分たちで様々なメカニズムを創り出して導入したり、既に誰かがデプロイしたメカニズムを自由に拾ってきて組み合わせたり、またはルールを自由に解釈して新たなプレイスタイルを生み出すことが可能です。
Netherscapeについて深掘りして知りたいという方は、こちらからゲームのデモ画面やソースコードをご参考ください。
🎲 MUDVRF
- Tl;DR
- 開発者が簡単にランダム性にアクセスできるようにするためのもの
- 直接的なオンチェーンゲームやAutonomous Worldsではなく『セキュリティツール』を開発した事例
- MUDVRFを使った「BlackJackゲーム」のデモも構築
- Submitメンバー
MUDVRFは、MUDを用いて構築された『開発者が簡単にランダム性にアクセスできるようにするためのモジュール』です。
「安全なランダム性にアクセスすることは、楽しくて公正なオンチェーンゲームを構築するための重要な要素」であるとして、直接的なオンチェーンゲームやAutonomous Worldsではなく『セキュリティツール』を開発した事例となります。
MUDVRFの開発者曰く、「ランダムネス」のセキュリティ上の前提は、『VRFプロバイダーとチェーンそのものが結託しないこと』だそうです。
筆者はこの領域への知見に乏しいので詳細は割愛しますが、将来的にはVRFに「VDF」や「MPCプロトコル」を搭載させることで、『遅延を犠牲にして、よりセキュリティを高めることができる』みたいです。
ハッカソンでは、MUDVRFの上に「BlackJackゲーム」のデモが構築されているので、興味がある方はこちらもご覧になってみてください。
🗺️ Realm of Pepe
- Tl;DR
- Superfluidを利用した斬新な資源管理メカニズムを持つ、協力型アドベンチャーRPG
- 資源を集め、交易を行い、ステージを進行して悪役のPepeを倒すゲーム性
- 所持しているアイテムが、静的ではなく動的なものとして存在することが特徴的
- Submitメンバー
「Realm of Pepe」は、Superfluid(リアルタイムでのトークン転送を可能にするアセットストリーミングプロトコル)を利用した資源管理メカニズムを持つ、協力型アドベンチャーRPGです。
このゲームでは、リソースの収集・トレード・クラフトが「一回限りの取引」ではなく、「ストリーム」形式で表現されていることが特徴的です。
要は、所持しているアイテム(Inventory)が静的ではなく動的なものとして存在していて、時間経過ごと(おそらくブロックタイムが関係する)にその所持量が増えていく仕組みになっています。
また、Realm of Pepeの世界では、資源が全てSuperfluidの仕組みを用いた「カスタムスーパートークン」として実装されています。
このストリームされた資源の総量が増加するにつれて、NFTが形態を変化させる「evolving(進化型)」の仕組みを採用しているそうで、このあたりはフルオンチェーンNFT「the metro」の発想と近しいなどと思いました。
その他にも、ゲーム性や経済圏などで面白い要素がいくつかあったので、興味がある方はこちらのデモをご覧になってみてください。
🎨 Isle of Colors
- Tl;DR
- 色に関するユニークな社会実験を目指すアイソメトリック3Dマルチプレイヤーゲーム
- 都市を建設し、自分の都市をペイントするための色を他のプレイヤーと争う
- MUDフレームワークとOptimism chainを使用している
- Submitメンバー
Isle of Colorsは、「色に関するユニークな社会実験」を提供することを目的とした、アイソメトリック3Dマルチプレイヤーゲームです。
プレイヤーは都市を構築し、その都市をペイントするための色を獲得するべく、他のプレイヤーと戦っていくというゲーム性です。また、他のプレイヤーから建物の色を盗まれることを防ぐこともポイントになるようです。
アイソメトリックとは、立体の製図法のひとつである「等角投影法」のことで、わかりやすく表現すると、対象物を「ななめ上」から見下ろすような視点で描かれた図のことをいいます。
引用:mtame.jp/design/isometric/
アイソメトリックなイラストを用いたクリプトプロジェクトとしては、例えば「Phi」が有名事例として挙げられますね。
ゲーム開始時、すべてのプレイヤーは、何もない状態からスタートします。そして、地上に建物を建てることができますが、上写真のように建物の色は白色となっています。
プレイヤーは、Isle of Colorsの世界を歩き回り、他のプレイヤーの都市を見つけたり、他のプレイヤーの建物から色を盗んだり、木霊を見つけたりしながら、より多くの色を手に入れることを目指します。
また、Isle of Colorsがオンチェーンで構築されている理由として、開発者は『他のプレイヤーから珍しい色を売ったり買ったりすることができ、ゲーム内に面白い経済効果を生み出すことができるようにしたいから』と言及しています。
なお、フロントエンドにはReactJSとReact Three Fiber(ThreeJSのラッパー)を組み合わせたものやBlenderなどが用いられており、ジオメトリだけでテクスチャもUVもない『非常に軽量なモデル(~100kb)』を構築したと述べられています。
なお、バックエンドにはMUDが用いられており、モデルの位置や色、マルチプレイやプレイヤーの位置なども全てオンチェーンに保存されています。
現時点ではMVPとして提出されていますが、オンチェーンに保存するために軽量モデルの開発に取り組んでいたり、また色の経済圏というコンセプトも斬新なので、もし今後も開発が続けられていくのであれば面白いAWになるのではないかと、個人的には思いました。
💎 Garnet
- Tl;DR
- オンチェーンベースのターン制戦術ゲーム
- MUD 2、Solidity、GoLangを組み合わせて構築
- プレイヤーは3人のヒーローを選択し、ASCIIグラフィカルインターフェース上で行われるバトルを通して、城を守る
- Submitメンバー
Garnet(Eternal Legends)は、ブロックチェーンを基盤としたターン制の戦略ゲームで、MUD 2、Solidity、GoLangを組み合わせて構築されています。
「Eternal Legends」のルールは、以下の通りです。
まず、下写真の通り盤面が10×10のマス目となっており、各プレイヤーは10ポイントの体力を持つ基地を持ちます。
ゲーム開始時にプレイヤーは5マナを持ち、その後毎ターン1マナが加算され、最大15マナまで増えていく仕様です。
また、プレイヤーはそれぞれ6種類のユニットを持ち、最大3ユニットまで召喚することができます。さらに、ユニットの移動には2マナが必要で、移動できる距離はそのユニットの移動速度によって決まります。
基地の体力が0になると、ゲームが終了します。
現段階ではCLI (コマンドラインインターフェース)操作で動くゲームとなっているため、実際にプレイしてみないとイメージが掴めないところも多いですが、デモを見た感じでは面白そうに感じました。ビジュアル(フロント)部分を、第三者が構築するといった方向性で発展しても面白そうだなと思います。
実際、Garnetでは第三者によるAWの拡張を推奨しているそうで、クリプト関連の機能をすべてバックエンドで処理し、クライアント側では全ての情報を保存しているブロックチェーンがあることを知らなくても済む設計となっているようです。
⚔️ PFP WAR
- Tl;DR
- Ethereumメインネット(L1)で所有するNFTを、L2で使用する共同ゲーム
- Storage proofsとMUDを介することで、L2でのNFT使用を可能に
- Redditのr/placeからインスパイアされたもの
- Submitメンバー
PFP WARは、Ethereumメインネット(L1)で所有するNFTを、L2で使用するというコンセプトの共同ゲームです。
参加者は、自身の保有するNFTを、下写真のようにオンラインキャンバスである2500(50 x 50)ピクセルのタイルの上に、配置していきます。
「L1のNFTの保有権を、L2で証明することに挑戦している」という点において、技術的な挑戦があったとしています。
また、OP-stack上のMUDとStorage Proof検証機を使ってAWを構築したことや、Merkle Patricia Trie (MPT) を検証するSolidityライブラリを開発したことなどが評価され、Optimismと0xParkの両方からグラントを獲得したプロジェクトとなっています。
また、バックエンドのみならず、フロントエンドの簡素化にも挑んだと言及されており、開発者ならびにユーザーが使いやすい設計を目指したということが分かります。
実際にゲームデモを触ってみると分かりますが、UI/UXが非常に簡素化されており、既存のオンチェーンゲーム/AWの中では群を抜いて分かりやすい仕様になっていると感じました。
ちなみに、本プロダクトの『自身の保有するNFTを、下写真のようにオンラインキャンバスである2500(50 x 50)ピクセルのタイルの上に配置していく』というコンセプトは、Redditの「r/place」から影響を受けたそうです。
なお、今回のハッカソンでは、先述の「Merkle Patricia Trie (MPT) を検証するSolidityライブラリ」の開発と、「PFP Warというオンチェーンゲーム」の開発までデプロイが完了したと発表されています。
コンセプトとしては非常に面白く、新しくNFTを発行するモデルではなく『既にあるものを再活用する』モデルなので、高いネットワーク効果に期待できそうだと思いました。また、本チームは2つのグラントを獲得しており、ゲーム部分以外の開発まで手掛ける技術力の高さを持ち合わせていることからも、今期待が集まっているのではないでしょうか。今後の進捗共有が楽しみです。
🚢 Trade Wars
- Tl;DR
- 他の海賊に警戒しながら、海を航海し港間の取引で利益を上げる「商人ゲーム」
- Balancerプールを使ったMUD v2ベースのinfiniteゲーム
- 港では資源が絶えず消費されることで、資源価格が上昇し続ける仕様
- Submitメンバー
Trade Warsは、海商として様々な港での取引を行いながら、同時に他の海賊プレイヤーから身を守る、または自ら海賊となって他の船を略奪するという「海洋商取引ゲーム」です。
Trade Warsのゲーム内の世界はほぼ無限に広がっており、プレイヤーはその中で絶えず経済的な相互作用を続けます。
現時点ではビジュアルは簡素的なものとなっていますが、ゲーム内の経済はそれぞれの交易港に設けられたユニークな「Balancerプール」を基盤にしています。
これにより、海商のプレイヤーが利益を得るためのアービトラージ(価格差取引)の機会が生まれたり、Trade Warsのゲーム内での活動を通してトランザクションを刻むことができるようになると考えられます。
つまりTrade Warsは、BalancerというDeFiプロトコルを、Autonomous Worldsに連携させている事例になります。先ほどの「Realm of Pepe」ではSuperfluidを使用していましたが、このように『Autonomous Worlds×DeFi』の事例が今後も増えていくと、面白くなっていきそうです。
なお、Trade Warsのデモ画面を見てみると、「Add Liquidity(流動性提供)」「Swap」など、DeFiで馴染みのボタンが配置されていることが分かります。
プレイヤーは、この港で商品を買ったり別の港へと運んだりする中で、アービトラージによって利益を得ることができるのですが、一度にプレイヤーの持てる貨物の量は限られているため、「重さが軽くて価値の低い商品」「重さが重くて価値の高い商品」の間で最適なバランスを見つけ出す必要があり、そこがこのゲームにおける駆け引きのポイントだと言及されています。
現時点ではゲームをプレイすることはできませんが、オンチェーンでルール(Onchain physics)を定めてDeFi×MUDの世界を実現したり、マルチアセットAMMを構築した点はとても興味深く、今後に期待できるプロダクトなのではないかと思いました。
どのように既存のDeFiコントラクトをAutonomous Worldsに連携させているのかについては、GitHubなどをご参考ください。
参考:
・twitter.com/ETHGlobal/status/1662142940762759169
・ethglobal.com/showcase/trade-wars-0xpoh
・youtube.com/live/rvGbHIw6_MQ?feature=share&t=3555
全体を通しての所感
今回のETHGlobalによる「Autonomous Worldsハッカソン」を通して、筆者が特に注目したポイントは次の3つです。
- 参加者数の多さ
- 多種多様なアイデアが創出され、時代が前に進んだ感
- 現時点でのMUDの課題も浮き彫りに
この続き: 2,014文字 / 画像4枚
まとめ
今回は、「Autonomous Worldsハッカソン」でファイナリストに選出されたプロジェクトについて紹介・解説しつつ、本ハッカソン全体を通しての筆者の所感などについて書きました。
本記事が、ETHGlobalによる「Autonomous Worldsハッカソン」でファイナリストに選出されたプロジェクトの詳細、そしてAutonomous Worldsの具体的事例や今後の可能性・課題などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。
◤ ETH GlobalのAWハッカソン ◢
— イーサリアムnavi🧭 Called "Ethereumnavi" (@ethereumnavi) June 4, 2023
🌐ファイナリストに選出された10個のプロジェクトについて解説
🌐既存概念の拡張やDeFiとの組み合わせなど、多様なアイデアが創出
🌐全体を通してのポジティブな面が多いものの、AW構築に際し、新たな課題も見つかる
詳細はこちら👇https://t.co/AVWRaFXQRm
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