どうも、イーサリアムnavi運営のでりおてんちょーです。
今回は、ユーザーがStarkNetで展開されているオンチェーンゲームへ参入する際の障壁を取り除こうとするサービス「Cartridge」について解説します。
昨今ではオンチェーンゲームを始め「クリプトネイティブなプロジェクト」が増えつつありますが、

そんな難しいサービスは初心者が触れないよ!
といったご意見を聞く機会も、同時に増えてきたように感じます。
これは実際その通りだと思いますが、そもそもクリプト初心者の方々からすると「クリプトネイティブか否か」にかかわらず、
- MetaMaskでウォレットアカウントを作成する
- ニーモニックフレーズ/秘密鍵を安全に保管する
- 暗号資産取引所でETHを購入しMetaMask等のアカウントに送金する
といった基本的な作業でも挫折してしまうケースが多く、業界としてもウォレット体験の改善については度々議題に挙げられる機会が多かったと同時に、 とりわけ画期的な改善策も見当たらない状況が続いてきたと認識しています。
それを踏まえて、今回はオンチェーンゲームのUI/UXを劇的に改善する試みをおこなう「Cartridge」というプロジェクトについてご紹介したいと思います。


詳細は後述しますが、Cartridgeではオンチェーンゲームを触るために必要なウォレットの生成を「指紋認証など(WebAuthn技術)を通して」裏側でおこない、デフォルトでニーモニックフレーズ/秘密鍵の保管が必要ないという強みがあります。
「オンチェーンゲーム」と聞くと、操作が難しそうだという印象を受けるかもしれませんが、この分野では「どれだけ分かりやすく提供できるか」という模索が行われており、多くの意味を含んだ事例が出てきているため、一見の価値があると思います。
ということで今回は、従来のweb2ゲームに近いユーザー体験を提供しながらも、ハードウェアウォレットと同程度のセキュリティが得られることを標榜するCartridgeの概要について解説しつつ、その使い方や今後の発展可能性などについて概観していきます。
でははじめに、この記事の構成について説明します。
まずは、CartridgeというStarkNet上のオンチェーンゲームのUI/UX改善を試みるプロジェクトの概要や、その使い方などについて解説します。
続いて、Cartridgeが過去におこなってきた提携・コラボ関連の取り組みに関して、筆者が興味深いと思った以下2つの事例をピックアップして概説します。
最後に、「難解なUI/UXを分かりやすいかたちで提供すること」というテーマを中心に、既存のNFTや他のプロダクト事例をもとにしながら、筆者の私見を交えながらCartridgeの今後の発展可能性について解説していきます。
本記事が、「Cartridge」の概要や注目ポイント、今後の発展可能性などについて理解したい方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。


Alpha Navigatorは、超アーリーなクリプトプロジェクトに特化して探知し、webサイト, discord, twitterで情報発信を行っています。
Cartridgeとは


概要


Cartridgeは、StarkNet上の「ゲームコンソール」としてのポジションを確立しているプロジェクトです。ゲーム開発者に対して『プレイヤーを取り込むためのツールとインフラ』を提供し、StarkNetのゲームエコシステムを成長させることに重点を置いています。
執筆時点において、ユーザーがweb3プロジェクトに参加するためには、MetaMask、AA(Acount Abstruction)機能を備えたArgent X、ハードウェアウォレットなどの使用が欠かせないケースが多いです。
しかしながら、これらのウォレットを用いたユーザー体験は一般層の人々からすると敷居が高く、ゲームプレイまで辿り着けるユーザー層は限られてしまい、発展可能性が狭まってしまうという懸念もあります。
この課題に対して、CartridgeではWebAuthn(Web認証)技術を採用することで、StarkNet上で展開されるゲームを「誰でも簡単に遊べるようなゲーム機(ウォレット機能含む)」として提供し、ブロックチェーンゲームにありがちな『難しさ』を解消しようとしています。
StarkNetのオンチェーンゲームというだけで、遊ぶの難しそうじゃないですか
— でりおてんちょー|derio (@yutakandori) January 13, 2023
でもcartridgeを使えば、もはやシードフレーズすら必要なくて、指紋認証やQRコードでログインできるんですよ。メアドすら必要ない
他の多くの選択肢と比較してオンボーディングフローが大幅に改善されることが期待できます pic.twitter.com/FnPplXvO7T
ユーザーは、CartridgeのWebAuthn(Web認証)経由でアカウントを作成することで、自動的にウォレットの作成までおこなってくれます。
また、L1や別ウォレットにアセットを転送したい際には、MetaMaskなど外部のウォレットと接続することで持ち出すことも可能な仕様となっています。
詳細は次章で述べますが、簡潔にまとめると以下のような流れでゲームプレイまで至ることができます。
ユーザーはWebAuthn(Web認証)経由でCartridgeコントローラーを作成します。(※シードフレーズ/ニーモニックフレーズが不要な設計)
プレイヤーはすぐにフィアットオンランプまたは既存のL1/L2ウォレットで、コントローラに資金を供給することができます。
Cartridgeでは、クエスト・達成度・評価システムなどの機能(※詳細は後述)を提供しているため、質の高いプレイヤーを取り込む設計となっています。
ゲームプレイ時に、その都度MetaMaskでトランザクション生成を求められるような作業が必要なくなります。


従来のweb2ゲームに近いユーザー体験を提供しながらも、ハードウェアウォレットと同程度のセキュリティが得られるところが、Cartridgeの特徴的なポイントとなっています。また、指紋/顔認証などを使ってログインできるなど、他の多くの選択肢と比較してオンボーディングフローが大幅に改善されることが期待されるでしょう。
このように、StarkNetゲームをメインストリームに届けることに注力しているプロジェクトなので、オンチェーンゲームに限らずクリプト事業を手掛ける多くの方々にとって、参考になるエッセンスが多分に含まれている事例なのではないかと思います。
どうやって始めるのか
本節では、Cartridgeについての理解を深めるために、Cartridgeコントローラーを作成(MetaMaskで言うとウォレットアカウントを開設)する手順について解説していきます。


今回筆者は、PC(Mac)ならびにGoogle Chromeでの作業環境のもと進めていきます。
まずはCartridgeのサインアップページにアクセスして、上写真のように任意のユーザーネーム(ここではderio)を入力し、「CREATE」ボタンをクリックします。


続いてWebAuthn(Web認証)を求められるので、「CONTINUE」をクリックします。


Cartridgeのパスキーを作成します。筆者のMacはTouch IDに対応しているため、指紋認証による認証をおこないました。
Cartridge Controller creation flow 👀
— cartridge (@cartridge_gg) September 19, 2022
WebAuthn and Pass Keys mean:
No seeds, no passwords, just sticks 🎮
Securely available across all your devices📱
Uniquely enabled by Account Abstraction on @StarkWareLtd Starknet 🚀 pic.twitter.com/neDnNkEsCN
なお上ツイートのように、スマートフォンでも同様のユーザー体験・高いセキュリティを受けられる点も、オンチェーンゲームを始めとするStarkNet上のゲームプロダクトを普及させるために一役を買うのではないかと期待されます。


以上で、Cartridgeコントローラーの作成は完了しました。次回以降は、webサイトにアクセスして右上に表示されている「LOGIN」ボタンをクリックすると、作成したアカウントでプレイすることができます。
ちなみに執筆時点では、以下10種類のStarkNetゲームがCartridgeを通してプレイできる状況です。(弊メディアで概要記事を執筆済みのものは参考資料を併せて記載しています)
クエスト・達成度・評価システムなどの機能


ユーザーは、Cartridgeプラットフォームでクエストを完了することで、報酬(XP)を獲得できます。
現在はローンチ前の状況ですが、獲得したXPは近日中に「アバターをアップグレードする」などの用途で使用できるようになるそうです。(参考:discord)
なお、執筆時点では以下のクエストが用意されています。
- Cartridge
- discordアカウントを接続する(10XP)
- Cartridgeのdiscordサーバーに参加する(10XP)
- CartridgeコントローラーとTwitterアカウントを紐づける(10XP)
- CartridgeのTwitterアカウントをフォローする(10XP)
- Non-Fungible Football(コラボPJ)に関する最新のツイートをRTする(10XP)
- Influence
- Adaliaシステムに影響を与えるための旅で、最初のクルーメイトを作る(10XP)
- 船を指揮する船長を選ぶ(10XP)
- Influenceのdiscordサーバーに参加する(10XP)
- Realms
- Realmを引き継ぐ(10XP)
- Adventureをミント(10XP)
- 鎧と武器を装備する(10XP)
- Cryptをレイドする(10XP)
- Call to Action, Suit Up, Raiderを完了させる(10XP)
- Lost in Cairo
- 初めてアリーナに入る(10XP)
- アリーナで10ラウンドを完了する(10XP)
- アリーナで7ラウンド敗北する(10XP)
- アリーナで10ラウンド勝利する(10XP)
- アリーナで5ラウンド連続勝利する(10XP)
ちなみに、このようなオンチェーン活動履歴に応じてポイントやNFT、その特性(traits)などを獲得できる機能は、SoulbondsやPhiなどの「オンチェーンアクティビティを可視化するプロジェクト」でも用いられています。




過去の提携・コラボ事例を一部ご紹介
本章では、Cartridgeが過去におこなってきた提携・コラボ関連の取り組みに関して、筆者が興味深いと思った以下2つの事例をピックアップして概説します。
- Ledger・Argentと提携
- Non-Fungible Footballとのコラボ
①Ledger・Argentと提携
Cartridgeは、2022年12月にセルフカストディアルウォレットの未来に向けてLedger・Argentと提携し、next billion users(次なる10億人のユーザー)のための「シームレスなUX」を提供することに努めています。
Incredibly excited to be working with @Ledger and @argentHQ on the future of self custodial wallets.
— cartridge (@cartridge_gg) December 7, 2022
A seamless user experience for the next billion users. pic.twitter.com/m6mKC9YA94
Ledgerは、Ledger Nano Xなどクリプトのハードウェアウォレットを開発・販売する会社です。Argentは、zkSyncやStarkNet、Ethereum L1で使用するウォレットを開発しています。
本提携により、Ledgerチームはマークルツリーを使用した効率的なオンチェーントークン権限の検証に取り組み、Argentはプラグインベースのアカウントアーキテクチャの実装を開拓し、セッションキー(≒スマートコントラクト)プラグインを実験的な機能としてサポートすることを計画しているとのこと。
また、StarkNetのブラウザウォレット「Argent X」については以前記事にまとめているので、興味がある方はこちらもご参考ください。


既存ウォレットのUXを改善し、トランザクションを読みやすくし、ユーザーが1つ1つのアクションをその都度確認せずとも実行できるようにすることで、ユーザービリティが大幅に向上し、フラストレーションが軽減され、マスアダプションへと近づくことが期待されます。
②Non-Fungible Footballとのコラボ


Non-Fungible Footballは、StarkNet上でフットボールシミュレーションゲームです。
当ゲームは以前、MatchboxDAOが開催した2度目のハッカソンで2位となり、プライズを獲得したことでも少し話題になりました。


Non-Fungible FootballのNFTをフリーミントできる機会があったのですが、WebAuthn(Web認証)技術を用いることで、シードフレーズ/ニーモニックフレーズ無しで処理を実行することを可能にしました。
一般的には遊ぶためのハードルが高いとされるStarkNet上のゲームを、顔認証・タッチ認証により簡単に遊べるようにし、且つNFTのミント時に必要なgas代もかからないという仕様で提供したという点で、Cartridgeのバリューを発揮した一事例となっています。
Got the World Cup fever?
— cartridge (@cartridge_gg) November 22, 2022
Mint a FREE Non Fungible Player on Starknet Mainnet using your Cartridge Controller!
⚽️ 832 fully onchain rendered players
⚽️ Face / Touch ID w/ Account Abstraction
⚽️ Subsidized transactions (NO GAS!)
⚽️ Champion wins an trophyhttps://t.co/pEPwigUQov pic.twitter.com/qKlUwOoajc
なお、先ほど紹介したMatchboxDAOのハッカソンで、追加バウンティ(賞金)枠としてCartridgeも資金提供をおこなっていました。


そのCartridgeの枠ではNon-Fungible Footballが受賞しているため、当コラボもその流れで生まれたものと思われます。
今後の発展可能性


Cartridgeを見たとき、ゲームのためのエコシステム・コンポーザービリティを提供するという点において、様々なPCゲームを購入・ダウンロードできるゲーム配信プラットフォーム「Steam」に似た側面があるように感じました。
Steamでは、インディー含め数千種類ものゲームが統合されているため、Steamサイトを訪問すれば自分が探しているジャンルのゲームは、概ね揃っているのです。
さらに、そこからSteam内でダウンロードしてそのままプレイすることが出来るので、非常にUI/UXが簡略化された素晴らしいゲーム配信プラットフォームとして、多くのゲームファンから親しまれています。


少し話が脱線しますが、Cartridgeのようなプロダクトが生まれた背景の一つに「多くのオンチェーンゲームは、オンチェーン故のコンポーザビリティの高さを備えているため、サードパーティのプロジェクトが統合しやすいから」が挙げられますが、実はこの現象はゲームだけでなく、実は既にNFTスペースでも見られています。
例えば、Ethereumチェーン上で発行されるNFTの多くは共通規格(ERC721など)を用いて設計されており、それ故にOpenSeaのような集中型マーケットプレイスが容易に統合しやすく、多くのNFTの流動性が生まれることから、NFTの売買をしたいユーザーにとって利便性の高い場となっています。


NFTを購入したいと思った際に、毎度各プロジェクトのwebサイトへ訪問しなければならない状況(≒NFT売買のためのwebサイトごと分散している状態)は、ユーザーとしては少し不便ですよね。なので、OpenSeaのような集中型マーケットプレイスが愛用されています。
また、OpenSea側としてもNFTプロジェクトごとに一つずつリスティング対応などをおこなっていたら膨大なコストがかかってしまいますが、規格が統一されていることで実装の手間も大幅に削減されます。
そしてここで重要なポイントは、仮にOpenSeaが消滅してしまったとしても、あなたが保有しているNFT自体には何の影響もないということです。(※ただし独自コントラクトで発行したものに限る)


仮にOpenSeaが使えなくなったとしても、他のNFTマーケットプレイス(LooksRare, sudoswapなど)を活用すれば良いですし、万が一それらも使えなくなった場合はEtherscanなどを通して直接コントラクトから関数を呼び出して転送することもできます。


これは、いわゆる一般的なNFTが
- 特定のサードパーティサービスのデータサーバー内に閉じ込められていない
- 統一規格のもとオープンに共有されている
からこそ為せる技ですが、それと同じようにCartridgeでも「分散的な(≒オンチェーン実装された)ゲーム」を次々に統合していくことでweb3版のSteamを目指しながら、NFTマーケットプレイスにおけるOpenSeaのようなポジションを確立できるのではないかと期待しています。
ただし、先述の通りオンチェーンゲーム自体はコンポーザービリティの高い設計なので、競合が現れた際にどういった機能・ブランドで差別化を図っていくかは今後の課題になりそうです。
現時点ではローンチされていない『獲得したXPでアバターをアップグレードする機能』をはじめ、コミュニティ周りにフォーカスした施策が打ち出されていくのではないかと、個人的には楽しみにしています。(現状は市場規模も小さく競合が現れづらいので独壇場だと思っています。)


さて、今日のようなベアマーケット状況下において、next billion users(次なる10億人のユーザー)をクリプトスペースに取り込むのは『ゲームのようなエンタメである』というのは、よく言われる話です。
ですので 、広くメインストリームにアピールするようなクリプトゲームを構築しつつ、巧妙に設計されたインセンティブ設計、持続可能なエコシステム、なおかつ優れたユーザー体験を提供することが、今後一層求められるでしょう。


そういった意味では、PhiやNounsのように「可愛いキャッチーなアートワーク」から多くの層のユーザーに関心を持ってもらい、後々そのコインの裏側にある美学・深淵さに気づいてもらうというアプローチは、クリプトネイティブなプロジェクトがメインストリームに近づくための一つの解になり得るでしょう。
また、Gearbox ProtocolというDeFiプロトコルも、DeFi特有の難解なUI/UXとは別に「ゲームインターフェイス」としてその機能の一部を提供していますが、今後もこういった『クリプト文脈でコアな試みでありながらも、UI/UXの改善により極限まで敷居を下げた事例』は、多数出てくるはずです。


web3スペースのユーザーの目も肥えてきており、ただ単に画像をNFTとしてリメイクして販売しても売れず、またweb2ゲームをweb3ゲームに作り替えただけではすぐに廃れてしまうといった状況下においては、このようなクリプト文脈で先進的な取り組みか否かが一層重要になっていくというのが筆者のスタンスです。
今回ご紹介した『オンチェーンゲームのUI/UXを劇的に改善するCartridge』の事例のように、クリプトネイティブなプロダクトに対するハードルを下げる試みを実践するプロジェクトについては、今後も弊メディアでは積極的に取り上げていきたいと思います。
まとめ


今回は、従来のweb2ゲームに近いユーザー体験を提供しながらも、ハードウェアウォレットと同程度のセキュリティが得られることを標榜するCartridgeの概要について解説しつつ、その使い方や今後の発展可能性などについて概観しました。
本記事が、「Cartridge」の概要や注目ポイント、今後の発展可能性などについて理解したい方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。
また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。
🆕記事をアップしました🆕
— イーサリアムnavi🧭 (@ethereumnavi) January 15, 2023
今回は、StarkNetオンチェーンゲームの体験を劇的に改善する「Cartridge」について解説👾
従来のweb2ゲームに近いUI/UXを提供しつつも、ハードウェアウォレットと同程度のセキュリティが得られる点が特徴的。一見の価値ありです🕹@cartridge_gghttps://t.co/ZL0pmemx2E


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