イベントレポート|「AWの時間」で実際に使用した資料と、その内容の文字起こしの要約版を交えながら、オンチェーンゲームやAWに関して幅広くご紹介

今回は、先日DeNAさんと共催したイベント「AWの時間」について、使用した資料と実際に話した内容の文字起こしを添えつつ、オンチェーンゲームやAWに関する概要を解説していきたいと思います。

このイベントは、「AWに興味はあるものの、その実態を十分に理解していない」という方を主な対象に、オンチェーンゲームの誕生背景からその概念、AWとの相違点、注目すべきプロダクト、有益な情報収集リソースまで、幅広く説明しました。具体的なアジェンダは以下の通りです。

また、この度のイベントでは、DeNA様から会場提供やフード/ドリンクのご提供を受け、共催の形で企画から準備まで一緒に進めさせていただきました。

当初は、最大70人の参加を見込んで告知していたのですが、告知当日すぐに定員に達するほどの反響があり、オンチェーンゲームやAWへの高い関心に驚かされたことを、昨日のことのように鮮明に覚えています。

結局その後、参加できる最大人数を90人まで増やしたのですが、それでもすぐに満席となり、「参加を希望したができなかった」という声を多くいただきました。

そういった方々のためにも本記事では、「AWの時間」で実際に使用した資料と、その内容の文字起こしの要約版を交えながら、オンチェーンゲームやAWに関して幅広くご紹介していきたいと思います。

また、イベント当日は情報リソースの共有時にすべてのリンクを紹介しきれなかったところがあったため、本記事で改めてテキストで詳細を記載し、リンクを追えるようにしたいと思います。

イベントにご参加いただいた方々からの感想ポストなどは、一部以下に掲載していますので、興味のある方はぜひご覧ください。


twitter.com/otti_nuckle/status/1773001022031704089

でははじめに、この記事の構成について説明します。

STEP
歴史をおさらい 〜オンチェーンゲームが誕生した背景を知る〜

まずは、オンチェンゲームについての話を始める前に、その「誕生背景」からお話しします。

STEP
要点を押さえる 〜オンチェーンゲームやAWとは一体何なのか?〜

続いて、ステップ1の話を踏まえて、「オンチェーンゲーム」「AW」というそれぞれの概念について、順に掘り下げていきます。

STEP
FOCG/AW10選 〜現在注目されているプロダクトを概観〜

その後、実際に現在どのようなオンチェーンゲームが存在していて、それぞれどういった点でオンチェーン要素を持っていたり、相互運用性を意識した設計になっているのかについて概観していきます。

STEP
有益な情報源 〜リサーチに役立つメディアや特定の記事などを紹介〜

さらに、「オンチェーンゲームやAWについてしっかりリサーチしたい!」という方に向けて、見ておくと良いメディアや記事などを、一式ご紹介します。

STEP
将来への期待 〜オンチェーンゲーム/AWの最近の動きと発展可能性〜

最後に、オンチェーンゲームやAW領域における「将来への期待」についてお話しし、締めくくります。

本記事が、「AWの時間」イベントの内容をテキストベースで理解したい方や、オンチェーンゲーム・AW周りの基礎などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

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目次

①歴史をおさらい 〜オンチェーンゲームが誕生した背景を知る〜

オンチェンゲームについての話を始める前に、まずはその「誕生背景」からお話ししたいと思います。

まず、このイベントに参加されている皆さんも一度は、「web3って何ですか?」という質問をされたことがあるでしょう。この質問にわかりやすく答えるのは非常に難しいですよね。

ただ、クリス・ディクソンが言うように「web1、web2、web3の流れを理解する」ことで、web3が何なのかが説明しやすくなりますよね。

私は過去に「web3とは何か」というイベントで、この流れに基づいてweb3を説明したことがありますが、実際にそのとき歴史的なところから教えてもらえると分かりやすいというフィードバックを多くもらいました。

その経験をもとに、今回オンチェンゲームを説明するにあたっても、その誕生経緯から話を始めたいと思います。

このスライドでは、この後の「歴史をおさらい」編で何を説明するかについて結論をまとめています。

まず、伝統的(トラディショナル)なゲームがありますけど、仕組み上「運営企業が倒産したりサービスを閉鎖してしまうと、データが消えてしまう」という課題があると言われていました。

ここからブロックチェーン技術が出現し、データをブロックチェーン上に保存したり、NFTを作成したりすることで、既存ゲームの課題解決を図ろうとします。その後、STEPNやAxie Infinityなどを筆頭にPlay-to-Earnゲームが流行り、その流れの延長線上でオンチェンゲームが誕生したとされています。

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それでは、次のスライドに進んで、ブロックチェーンの誕生以前と以後に分けて、ゲームの世界がどのように変化したかを見ていきたいと思います。

このスライドで伝えたいことを簡単に言うと、ブロックチェーンの誕生に伴って、ゲーム業界にも「オフチェーン」と「オンチェーン」という新たな概念が登場したということです。

まず、ブロックチェーン技術が存在しなければ、オンチェーンという概念もありません。ブロックチェーンが登場する以前には、任天堂やプレイステーションのゲームや、スマートフォンで楽しむモバイルゲームなど、いわゆるオフチェーンゲームが主流でした。

しかし、スライド右側にある通り、ブロックチェーン技術の登場とともに、オフチェーンとオンチェーンの間にある多様な可能性を示すグラデーションが形成されるようになります。

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このグラデーションについては、海外の記事で『オンチェーン度合いをスペクトラム図で表したもの』がありますので、次のスライドで見ていきます。

そして、これを分かりやすく私が日本語版に直したものが以下です。

このスライドは、ブロックチェーンベースのゲームにおけるスペクトラム図のイメージを表しています。

ブロックチェーンゲームの最も初期にあたる「Star Atlas」や「GuildOfGuardians」のようなゲームは、NFTをオンチェーンに置きながらも、処理内容やセーブデータはオフチェーンにありました。

この後、web2.5と呼ばれるゲームが登場し、X-to-EarnをコンセプトにしたGameFiプロジェクトなどを筆頭に、ハイブリッドオンチェーンゲームを提供し始めました。

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要は、NFTに加えてトークンエコノミクスを駆使したゲームが台頭したのですが、当時はL2などの技術も未発達段階でしたから、処理内容やセーブデータは主にオフチェーンにありました。

そして、この延長線上でweb3ゲーム、すなわちオンチェンゲームが登場しました。

web3ゲームは、処理内容やセーブデータもオンチェーンに置くことで、全く新しいゲーム体験を提供しようとしているのですが、こうした大局的な歴史を概観してみると、オンチェーンゲームが何をしようとしているのかについて、理解が深まるのではないかと思います。

ということで、最後にまとめます。

  • トラディショナルゲームのデータ保存問題は、ソフトを失ったり、ゲーム会社が倒産したりするとデータが失われるという問題でした。
  • これに対し、web2.0+ゲームでは、NFTはブロックチェーン上に残りますが、結局ゲーム企業が倒産したりサービスクローズすると、ゲームがプレイできなくなったり、NFTの画像部分が消失してしまうなどの問題がありました。
  • また、トークンモデルを兼ね備えたweb2.5ゲームも登場しますが、長続きするものはほとんど残っていないのが現状です。
  • これらの状況を打開するべく、技術の進歩と呼応するように、オンチェンゲームが誕生し、注目されるようになりました。

以上が、オンチェンゲームが誕生するまでの全体的な流れと経緯です。

②要点を押さえる 〜オンチェーンゲームやAWとは一体何なのか?〜

では続いて、ここまでの話を踏まえて、「オンチェーンゲーム」「AW」というそれぞれの概念について、順に掘り下げていきたいと思います。

イーサリアムnaviでは「オンチェーンゲームの誕生背景と概要、事例紹介、そして現状の課題から今後の発展可能性までを網羅的に解説」という記事を掲載しています。

もしこの後で疑問が残った場合や、さらに詳しく知りたいと思われた場合は、ぜひ併せて参考にしていただければと思います。

まず、本編で話すことの結論は以下です。

  • オンチェーンゲームは、すべてのステートとロジックがオンチェーンに格納されている
  • AWは、不変のルールセットを持ちながらも、それを超えた意味付けをプレイヤー間の相互作用によって生み出せる世界全体を指す

それでは見ていきましょう。

まず、オンチェーンゲームとAWは別の概念として捉えられていますが、実際にはその定義はまだ確立されていません。

最前線のビルダーたちが、実際にプロダクトを作りながら「これがオンチェーンゲームだよね」と互いに確認し合い、定義を模索している段階です。

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そのため、何をもってオンチェーンゲームとするかは人によって見解が異なるところがあることは、まず最初に言っておく必要があると思います。今回はわかりやすさを優先して、上のスライドのように定義しました。

簡単に言うと、「ゲームのセーブデータ」と「ゲームの処理内容」がブロックチェーン上に存在する場合、それをオンチェーンゲームと呼びます。この基準については、概ね共通認識が得られていると思います。

ゲームの「処理内容」とは何か。ゲーム開発に携わったことのない方はイメージしづらいかもしれませんね。

ゲームの「処理内容」は、ポケモンゲームを例に取ると、「『たいあたり』したら20ダメージを与える」とか、「このモンスターにモンスターボールを投げたら、70%の確率で捕獲成功する」とか、そういったゲーム内の挙動を定義するためのものだと思って下さい。

また、タイプマッチ(火は草より強いが、水には弱い。など)によってダメージ量が変わる関数なども、これに該当します。

要は、これらの処理をブロックチェーン上に置くことで、ポケモン以外の他のゲームでも、同じ処理内容を使うことができるようになる訳ですね。

また他にも、ブロックチェーン上に処理内容を格納するメリットとしては、「サードパーティによるbotの作成が可能になる」などが挙げられます。これにより、ブロックチェーンゲームは開発者やプレイヤーにとって新たな可能性を開くと期待されています。

では、そんなオンチェーンゲームがどのような特性を持ちうるのか。スライド1枚にまとめると、次のようになります。

このスライドは、オンチェーンゲームならではの特性を、大きく4つに分類したものです。

まず先ほども述べたように、オンチェーンゲームの特性として、左上の「ゲームのセーブデータや処理内容がブロックチェーン上に格納されていること」が挙げられます。そして、パブリックブロックチェーンのパーミッションレスな仕様により、「誰でもこれらのデータや機能にアクセスできること」が挙げられます。

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例えば、一般的なスマートフォンのゲームとか、多くのブロックチェーンゲームには、APIが提供されていませんよね。仮にされていても、そのAPIを利用するためには運営会社の許可が必要だったり、許可なしには関数などにアクセスできないのが通常です。

これは、「ビジネスモデルへの影響」や「サーバーへの大きな負荷」、「権利関係の複雑化」などが要因として考えれますが、これに対してオンチェーンゲームの場合は、パブリックブロックチェーン上にセーブデータや処理関数などの情報が格納されているため、誰でもアクセスが可能であるという特徴があります。

さらに左下の「ゲームの半永続性」について説明しますと、これは使用しているブロックチェーンによって異なりますが、ゲームのデータや機能が持続的に存続することを意味しています。

例えば、オンチェーンゲームを開発している会社が倒産したとしても、情報自体はブロックチェーン上に残っているため、ゲーム自体は変わらずそのまま運用され続けるし、他の開発者がその情報を利用して新たなゲームを開発することなどが可能になります。

NounsDAOのNFTが1日一体生成されますが、そんな感じでゲーム自体もブロックチェーン自体が安定稼働し続ける限り動き続けるということです。

また、右下の「拡張性の高さ」に関しては、パーミッションレスという特性に関連していますが、要は誰もがフロントエンドを共同で開発したり、特定のゲームコントラクトをフォークして全く新しいゲームを作り出したりするなど、拡張性の高さを生かした発展可能性が見込まれます。

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イメージとしては、DeFiだとUniswapなどがこの特性の分かりやすい事例ですね。

あとは、最近話題のFarcasterに関しても同じで、仮に公式クライアントアプリであるWarpcastがダウンしたとしても、Supercastをはじめ他の第三者が作ったアプリを使える訳ですから、他に選択肢が存在しますよね。

逆にTwitterなどの場合は、Twitterアプリがダウンした場合には問答無用でアクセスできなくなってしまいます。

つまり、従来のゲームがサーバーダウンでアクセス不可能になる状況と比較して、ブロックチェーン技術を採用しているゲームでは、とあるクライアントアプリがダウンしても、他のアプリなどを通じてゲームをプレイできる可能性があります。これにより、ブロックチェーンが安定稼働し続ける限り、ゲーム体験が継続可能になります。

この特性を『ヘッドレス』なんて言ったりもしますが、要は誰もがゲームの顔となるフロントエンドを構築したり、それによって一つのクライアントアプリが閉鎖されたとしても他のアプリでは遊べるなど、開発者やユーザーにとって多様な選択肢と革新的なゲーム体験を提供することが可能になります。

以上がオンチェーンゲームの特性の解説になりますが、このあたりまでは比較的理解しやすいのではないかと思います。

では続いて、「AWとは何か」について見ていきましょう。

「AW」とは、一体何なのか。

まず冒頭で触れたように、厳密な定義はまだ確立されていませんし、人によってその捉え方も異なるのが現在の状況です。

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また、日本語でいうと「自律世界」、英語では「Autonomous World」と呼ばれていますが、これはかなり哲学的な概念であることを最初に申し上げておきます。

さらに、AWとは単に特定のオンチェーンゲームを指すものではありません。たまに両者を混同したような投稿を目にすることもありますが、この2つは明確に異なるものだということを、本編では順を追って分かりやすく説明していきます。

では、まずはその霧を晴らすために、「自律」と「世界」のそれぞれの単語の意味について確認していきましょう。

このスライドは、AWのA(自律)の部分にフォーカスしたものです。一言でいえば「自律」とは、『自分自身で制御や管理を行い、外部からの支配や介入を必要としない状態』を指します。

例えば、左上の写真には自律運転ロボットがありますね。最近都内でもこれらの自律運転ロボットの実証実験が行われているそうですが、これらは決められた道を走り、障害物をちゃんと回避する能力を持っています。要は、単に決められた道を自動で走るだけではなく、人の介入なしに”自律的に”動作します。

また、左下の写真には自律神経のイラストがありますが、人間が暑さを感じると自然と汗をかくのも、意識的な判断ではなく、自律的な反応です。要は、「暑いから汗をかいて体温を下げよう!」と思って汗をかいている訳じゃなくて、暑いと自律的に汗をかくような仕組みになっている訳ですが、 イメージ的にこういった性質を兼ね備えた世界を作ろうとしていると思っておいてください。

では、続いて「世界」の方を見ていきましょう。

次に、「世界」とは何かという問いについてですが、これはかなり哲学的な問いになりそうですね。

一般的に「世界」と聞くと、地図や地球全体を想像するかもしれませんが、調べてみると「特定のルールに従うエンティティが存在し相互作用する環境」と書かれていました。

つまり「世界」とは、まず前提として「ルール」が存在し、そのルールに従うことになる「エンティティ」が入ってきて、それらが相互作用することで成り立つする環境と言えます。

例えば、これを地域や社会のレベルで考えると、家族や市区町村なんかも、一種の「世界」だと言えますね。

各家族ごと、市区町村ごとにそれぞれ異なるルールがあって、そのルールに従うことで私たちはある特定の「世界」の一員となります。

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『郷に入っては郷に従え』という、「よその土地へ行ったら、その土地の風習を尊重し、それに従うのが吉とされる諺」もありますが、一歩足を踏み入れるとその「世界」のルールに従うことが求められるんですね。

このように、「AW」は自律した世界を意味し、『自律:自分自身で制御や管理を行い、外部からの支配や介入を必要としない状態』『世界:特定のルールに従うエンティティが存在し相互作用する環境』を、ブロックチェーンを用いて構築しようとするムーブメントだと表現できます。

つまり、「世界」とは、「様々なエンティティが集まる箱のようなもの」だと考えられます。そして、この「世界」という箱の内でエンティティがどのように振る舞うかを決めるのが「ルール」です。

また、この「世界」に入るための境界線は、ケースによって曖昧さ(上画像の左側)・明確さ(上画像の右側)が異なります。例えば、ファンコミュニティのように、所属が自己申告によるものや共通の興味に基づくものは境目が曖昧ですが、金融のような分野では、法律や規制によって境目が厳格に設定されている傾向があります。

ということで、ここからはいろんなパターンの「世界」を見ていきながら、その境界の曖昧さ・明確さについての理解を深めていきましょう。まずは、最も左側にある世界から詳しく見ていきます。


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まとめ

今回は、「AWの時間」で実際に使用した資料と、その内容の文字起こしの要約版を交えながら、オンチェーンゲームやAWに関して幅広くご紹介しました。

本記事が、「AWの時間」イベントの内容をテキストベースで理解したい方や、オンチェーンゲーム・AW周りの基礎などについて理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。

また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。

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