オンチェーンゲーム/AWの主要プロダクトを一覧でまとめ、それぞれの簡単な概要や資金調達状況などを理解し、全体的な傾向と今後の見通しなどを考察する

どうも、イーサリアムnavi運営のでりおてんちょーです。

イーサリアムnaviでは、毎日大量に流れてくるクリプトニュースを調査し、その中でも面白いトピックやクリプトネイティブな題材を選び出し、それを分かりやすく読みやすい形でお伝えしています。パラパラと内容を眺めているだけでも、事業やリサーチの新たなヒントに繋がることがあります。世界の最先端では、どのようなクリプトコアな試みが行われているのかを認識するだけでも、 思わず狭くなりがちな視野を広げてくれるでしょう。

今回は、執筆時点におけるオンチェーンゲーム/AWの主要プロダクトを一覧でまとめ、資金調達状況などについても概観しつつ、全体的な傾向分析や今後のアクションプランの考察など行なっていきたいと思います。

2024年3月27日に、DeNAさんと共催で「AWの時間」というイベントを企画致しました。

大変ありがたいことに、申請開始からすぐに80人の枠が埋まってしまったのですが、同時に『オンチェーンゲームやAWがテーマのイベントに対して、わざわざ足を運んでくださる方がこれほど多いとは感慨深い…!』という気持ちになったのが、正直な感想です。

しかし、その一方で、これからオンチェーンゲーム/AWについて調べる方にとっては、現在どのようなプロダクトが存在しているのか、また、それらについて簡単に概観できるページがあった方が親切なのではないかと思い、本記事の執筆に至りました。

現時点でローンチされているプロダクトや、資金調達を実施している会社/プロジェクトについて、一覧でまとめた記事を作成しておけば事前予習にもなりますし、都合がつかずイベントに来られない方も活用できるのではないかと思います。ぜひ、それぞれのニーズに沿ったかたちで、本記事をお役立て頂くことができれば、冥利に尽きる思いです。

ちなみに、そもそも「オンチェーンゲームとは? AWとは?」という方は、最初に以下の記事をご覧いただくとよろしいかと思います。

ということで本記事では、オンチェーンゲーム/AWの主要プロダクトを概観しつつ、その簡単な概要や資金調達状況に関する情報などを添えて、業界全体の傾向と今後の見通しなどについて、筆者の私見を交えながら解説していきたいと思います。

でははじめに、この記事の構成について説明します。

STEP
オンチェーンゲーム/AWの主要プロダクトを概観

まずは、オンチェーンゲームやAWについてこれからリサーチしたいという方を対象とし、筆者の主観込みで『初級編として最初におさえておくべき主要プロダクト 10選』について厳選しながら、それぞれ簡単にご紹介します。

STEP
資金調達状況の概観

続いて、オンチェーンゲーム/AW関連プロジェクトやその周辺ツール群の中から、執筆時点までに資金調達を実施しているものについてまとめていきます。

STEP
全体的な傾向と今後の見通しなどを考察

最後に、

本記事が、オンチェーンゲーム/AWの主要プロダクトに関する情報や資金調達状況、それが他のweb3ゲームと比較すると現状どのくらいの規模感なのか等について理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資上のアドバイスとして解釈されることを意図したものではなく、また解釈されるべきではありません。ゆえに、特定のFT/NFTの購入を推奨するものではございませんので、あくまで勉強の一環としてご活用ください。

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目次

オンチェーンゲーム/AWの主要プロダクトを概観

本章では、オンチェーンゲームやAWについてこれからリサーチしたいという方を対象としています。そして、まずは筆者の主観込みで『初級編として最初におさえておくべき主要プロダクト 10選』について、以下のように厳選して簡単にご紹介します。

  1. Sky Strife
  2. Primodium
  3. Words3
  4. Treaty
  5. Pirate Nation
  6. Network States
  7. Project Awakening
  8. Kamigotchi
  9. Dark Forest
  10. Shoshin

資金調達周りの情報については次章でまとめていますが、執筆時点におけるローンチ状況などを一目で分かるようにまとめると、以下のようになります。

これらの主要プロダクトについてザックリと眺めておくだけでも、オンチェーンゲームやAWが全体的にどのような方向性に進んでいるのか、どのようなポイントが特徴的なのか等について理解が深まると思います。

また各項目、それぞれ3~5分程度で基本概要や、各種どこにオンチェーン要素が盛り込まれているかなどを理解できるように、可能な限りコンパクトに情報をまとめていますので、ご参考ください。

Sky Strife

出典:twitter.com/skystrifeHQ/status/1754658176501235960

Sky Strifeは、MUDゲームエンジンを使って構築されたオンチェーンRTS(リアルタイム戦略ゲーム)です。

3~4人対戦で試合が行われ、軍隊を作ったり敵を倒しながら最後まで生き残り続けたプレイヤーが勝者となります。

執筆時点ではRedstoneでテストネットプレイが開催されており、毎日21:00(JST)から開催される無料枠で誰でも参加することが可能です。上位入賞すると、Rewardとしてテストネットトークン $ORBS (ERC-20)がもらえます。

Sky Strifeは現在テストネットの段階なので未実装ですが、将来的には『各ターンの持ち時間が実際のブロックタイムになる』『第三者がパーミッションレスに構築可能なbotを組み込んでプレイできる』などの機能追加が期待されています。

また、上記のように裏側ではクリプトコアな試みを行いつつ、ビジュアルやUX(例:アクションごとに署名・ガス代が不要)は既存ゲームに近づけるよう工夫されており、初心者の方がオンチェーンゲームを体験してみるのであれば、まずはSky Strifeがオススメだと考えています。

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ちなみに、イーサリアムnaviの「オンライン会」でも、皆でよくSky Strifeを遊びながら雑談したりしています。興味がある方は、ぜひ遊びに来てください。

Primodium

Primodiumは、Factorio(広大な2D世界に自動化工場を設計・建設するゲーム)のようなサンドボックス型の工場づくりゲームを、マルチプレイ可能なAutonomous Worldsとして表現しようと試みるプロジェクトです。

オンチェーンに格納されたロジックを元に「手続的に生成されたマップ」を舞台にして、資源を集め、新素材のを研究し、製品を生産していきます。そして、徐々に自動化を進めていき、巨大な産業プラントを構築することを目指すというゲーム性です。

「Primodium」では、『あなたは資源が豊富な惑星に着陸し、その資源を開発する任務を担当する』という設定で、ゲームがスタートします。目指すべき目標は、「発見した全ての資源を活用して、その場所で最大規模かつ最も効率的な工場を建設すること」です。

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言葉だけではイメージが伝わりづらいので、以下ツイートの動画をご覧いただければ、ゲーム性や概念が想像しやすくなるかと思います。

Primodiumは、裏側でバーナーウォレット(ブラウザにローカルに保存され、ユーザーに代わって取引に署名する権利を持つウォレット)を使用しているため、ユーザーはサインフリーで行動や取引をスムーズに行うことができます。

オンチェーン要素としては、例えば工場で素材を作成してClaimを行うことができるのですが、それがオンチェーンベース(ERC20/ERC721)で行われたり、スマートコントラクトでルールセットを作成し、強制的に実行できる機能が実装されようとしています。

出典:twitter.com/primodiumgame/status/1723044254694391849

そのため、既存のDeFiやNFTプロジェクトとの統合が期待されていたり、「本格的な経済レイヤーの構築」に力を入れている点が、今後の注目ポイントとなっています。

Words3

出典:words3.xyz

Words3は、Small Brain Gamesによって開発された「オンチェーンPvPワードゲーム」です。

このゲームでは、プレイヤーが相互に競争しながら単語(ワード)を形成し、ポイントを獲得していくというシンプルなゲーム性でありながら、使用する各文字に対してETHを支払う必要があるなど、戦略性の高い設計となっています。

簡単にまとめると、このゲームの目的は『支出したETHよりも多くのETH報酬を獲得し、利益を得ること』にあります。

文字を使用するためにはETHが必要ではあるものの、早期に購入してマップ上に並べられた文字を他の誰かが活用することで、先行者に対して報酬が付与されるような仕組みになっています。

では、本当にその人が先行者であるのか否かについては、オンチェーンに情報が記録されていることで検証可能なので、不正を防ぎつつグローバル・コンセンサスを得られます。

また、以下でも触れられているように、『参加者が増えるほど面白さ/収益性が増える』という設計になっているため、Words3の利用者が増えるほど、Words3が提供する価値が増加するため、ネットワーク効果の恩恵を受けやすいという意味でオンチェーンゲームの特性を活かしたプロダクトと言えます。

Treaty

出典:blog.curio.gg/untitled

Treatyは、土地を確保し経済を発展させることで競い合うという意味で「古典的な4X戦略ゲーム」でありつつも、それを”完全オンチェーンで”実現するゲームプロジェクトです。

ゲームに参加したプレイヤーは、ゲーム内で出会う他プレイヤーと、スマートコントラクトとして実装された条約を元に交渉したり、それらの活動を通して資源などを獲得・割り当てなどをおこないゲームを有利に進めていきます。

そして自分の軍隊や陣地を拡大し、最終的には内側のレイヤーにある中央タイルを占めることでゴールとなります。

執筆時点ではTreatyをプレイすることはできませんが、Treatyは上記の点などをはじめ、オンチェーンゲームとしては非常にユニークで興味深い事例となっています。

例えば、「建物」「軍隊」など個々のゲームオブジェクトがスマートコントラクトとなっており、それぞれ固有のウォレットアドレス(0x○○○○○)を保持していたり、ユーザーが作成した「社会契約」をスマートコントラクトとしてエンコードすることで、トラストレスな合意形成やOTC取引などを実現しようとしています。

出典:blog.curio.gg/introducing-treaty

その他にも、以下のような条約をサードパーティの開発者が作成し、UGL(ユーザー生成ロジック)としてオンチェーンで共有することが可能になるとしています。

  • 経済的利益を侵害する仮想国家を制裁する禁輸協定
  • 資源(ERC20)を獲得する度に、ギルドメンバーに対して課税
  • 送信者と受信者が互いに10タイル以内にいる場合のみ、トークンの転送を許可

現実世界におけるNATOのような合意形成モデル(参加して会費を支払うと他の委員会メンバーを攻撃できない)をオンチェーンで表現しようとしており、独自路線での社会実験としておさえておきたい事例の一つです。

Pirate Nation

出典:Pirate Nation

“Pirate Nation”は、Proof Of Playによって開発されたブラウザベースの海賊テーマのRPGです。

キャラクターはEthereum (L1) チェーン上に存在し、ゲームコントラクトはArbitrum Nova (L2) 上に配備されていることが特徴的です。(※追記:現在は独自のMultichain:Apexにデプロイされています。参考

Pirate Nationの開発者チームはWeb2ゲーム開発の豊富な経験を持っている方々で、その効果もあってなのか、シードラウンドではa16zとGreenoakがリード投資家となり、$33Mもの金額を調達しています。

出典:Combat v2: Reinventing Combat in Pirate Nation

しかし、現状こちらはオンチェーンゲームとしてどのような発展を遂げていくのかが不明瞭なので、情報がアップデートされ次第ゲーム自体については論じていきたいと思います。

とはいえ、大型資金調達の事例としては知っておくべき題材であることは疑いようがないため、取り上げさせて頂きました。

追記:
ちょうど先日、ggQuestからPirate Nationに関するNFT獲得クエストが出ていたので、興味がある方はこちらを触ってみると良いでしょう。

Network States

出典:network-states-smallbraingames.vercel.app

Network Statesは、Small Brains Gamesが開発する『MUD v2エンジンを使用したオンチェーン戦略ゲーム』です。

簡潔に言い表すと、オンチェーンで「ネットワーク国家(Network States)」を構築していくという試みを行っています。

また、このゲームが将来実装する機能として一番興味深いのが、「大規模言語モデル(LLM)を使用して、プレイヤーの動きや行動をストーリーに変換する」点です。

具体的には、Network Statesはオンチェーンでネットワーク国家を創造するだけでなく、AIの力を使って国家形成の過程(オンチェーンアクティビティ)を「物語」として表現し、それによって国家の歴史や伝承を構築する試みをしています。

ゲーム内でのアクション履歴や状態遷移などがオンチェーンに記録され、その情報をもとにAIがイラストを生成し、ビジュアルを可視化するという新進気鋭の試みとして関心が集まっています。

記事の執筆時点で、Network Statesのテストネット版はすでにローンチされており、メインネット版のローンチは今後予定されている段階です。ただし、テストネット版には先述の「AI×物語」の機能は実装されていませんが、誰でもNetwork Statesのテストネット版を試すことはできます。

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以下の記事では、筆者が実際にNetwork Statesのテストネット版をプレイしながら解説しています。興味がある方は併せてご参考ください。

Project Awakening

Project Awakeningは、20年以上の歴史があるMMORPG「Eve Online」という有名なゲームを運営するCCP Gamesが手掛けるクリプトゲームプロジェクトです。

執筆時点ではその詳細は公開されていないものの、2023年3月末にシードラウンドで、a16z cryptoなどから$40Mの資金調達を行ったことで話題となりました。

先ほどご紹介した「Pirate Nation」は、同じくシードラウンドでa16z cryptoなどから$33Mを調達しましたが、違いとしてはゲーム公開前から$7Mも多く調達していることであり、その期待の大きさが窺えます。

出典:twitter.com/Crypto_Dealflow/status/1638257419653378062

なぜa16z cryptoは、これほど大きな金額を「Project Awakening」単体に対して投じているのかというと、a16z cryptoが公開した記事「CCP Games raises $40M for new triple-A Web3 game in the Eve universe」では、以下のように書かれています。

  • 「EVE Online」は、20年の歴史の中においてその多くがプレイヤー主導で構築され、作り込まれた経済システム・プレイヤーによるガバナンス・自由に取引されるアイテムなどが特徴の、永続的な仮想世界である
  • 私たちは、次世代のWeb3ゲームは、オープンエコノミー・プレイヤー主導の社会システム・コンポーザビリティを備えたゲームプレイを基本とすると信じてきた
  • CCPはこの分野の先駆者であり、CEOであるHilmar Pétursson氏のweb3へのアプローチや、複数のビジネスサイクルを通じたCCPの運営経験、またベテラン起業家兼スタジオリーダーとしての経歴に感銘を受けている
  • そのため、私たちは次世代の仮想世界を構築するこの旅に、CCP Gamesチームと共に参加できることに非常に興奮している

これを見る限り、a16z cryptoは「Eve Online」の20年にわたる運営経験と、プレイヤー主導の経済システムやガバナンスモデルが次世代のWeb3ゲームにどのように貢献できるかに期待しているように見て取れます。

そんな期待の「Project Awakening」ですが、執筆時点においてはプレイテストを開始した段階となっています。

しかしながら、プレイテストに参加するためにはNDA(秘密保持契約)を結ぶ必要があるため、具体的な内容について、現状ここでは記述することができません。

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興味がある方は、上記ツイートにあるリンクを辿って申請し、体験してみてください。

また、今回は取り上げていませんが、補足情報を一つ。Starknet上のオンチェーンゲーム「Influence」は、Eve Onloneに影響を受けて誕生したプロダクトなので、興味がある方は併せてご参考ください。

Kamigotchi

出典:Introducing Kamigotchi
  • Webサイト
  • Twitter
  • チェーン:OP Mainnet
  • 資金調達:なし or 未発表

Kamigotchiは、Asphodel Labsというオンチェーンゲームスタジオが手掛ける、Cosmosエコシステム上のalt-L1チェーン「Canto」をベースに構築されていたオンチェーンゲームです。(※現在は、2024年前半に、OP Mainnetでのローンチを目指しているようです。)

Kamigotchiは育成系オンチェーンゲームであり、ポケモンのように「一部の特性は他の特性よりも珍しかったり強力になり得る」という仕組みをオンチェーンベースで実装していることが特徴的です。

これにより、戦略的な判断とバランスが必要とされることで『ゲームとしての面白さ』も感じることができたり、Mod(Modificationの略)を用いてKamigotchiをボトムアップに改良・開発したりすることが可能になるそうです。

また、初期運営チームはAsphodel Labsが担っていますが、将来的にKamiDAOに対して権限をどんどん移譲していく予定で、最終的な目標は「Autonomous Worldとして完全に分散化された状態になること」だとしています。

Dark Forest

出典:Dark Forest DAO: Games as mediums of technological experimentation and exploration

Dark Forestは、Dark Forestは、EthereumチェーンとGnosis(旧: xDai)チェーン上で構築される、分散型のRTS(リアルタイム戦略)オンチェーンゲームです。

本ゲームは「MMO宇宙征服ゲーム」であることを謳っており、劉慈欣(りゅう じきん)氏の代表作である『三体』シリーズの2冊目「The Dark Forest」という同名の小説に基づいたゲーム作品となっています。

2020年8月7日にEthereumのRopstenテストネットワークで最初のベータ版 (v0.3) がリリースされ、現在ではv0.6.5まで開発が進んでいることから、最も歴史があるオンチェーンゲーム(オンチェーンゲームの先駆け的存在)と言えます。

Dark Forestは、なんと言ってもオンチェーンゲームでありながら、zkSNARKsの技術を用いて「不完全情報ゲーム」を実現していることが特徴的です。

要するに、『プレイヤーの動きは正確な詳細で検証可能でありつつも、他のプレイヤーからは隠されている状態』を実現しているのです。

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2020年といえば、web3というワードもなく、今のようにNFTなどの認知度も高くない時期でしたので、その段階から『オンチェーン×不完全情報ゲーム』という構想を練っていたことには、驚くばかりです。

ちなみに、Dark Forestは現在オープンソースプロジェクトとなっており、これをベースにした派生プロジェクトも多数生まれています。

Dark Forestをプロトコルレイヤーとして捉えると、それを分かりやすく視覚化するアプリや、ゲームを効率的に進めるためのbotがボトムアップに開発・実装されるなど、エコシステムが拡大していく構造になっています。

そして先日、シードラウンドで1000万ドル調達したオンチェーンゲームエンジン『World Engine』の開発を手掛けるArgus Labs社が、Dark Forestのリブート版ゲーム「Dark Frontier」をローンチしたことも話題となりました。

リブート:
オリジナルの要素の一部を含みながら、全く新しい作品とすること。「リメイク」とは異なる。

参考:https://www.gamespark.jp/article/2023/07/13/132038.html

このように、Dark Forestを中心に様々な派生プロジェクトや関連ツールの開発が行われていく様子は、オンチェーンゲームの理想の具現化事例として捉えても興味深い題材であるため、オンチェーンゲームの成り行きを追いたい方にはオススメです。

Shoshin

Shoshinは、TopologyがStarknetで開発した「TPSにとらわれない非同期型のオンチェーン格闘ゲーム」です。

TPS(Transaction per second): 1秒間にネットワークが処理できるトランザクション数

一般的に格闘ゲームは、プレイヤーの反応速度に依存して、集中的な対決が行われるケースが多いかと思います。

しかし、現状ではEthereum/Starknetのブロックチェーンがそのような高負荷のTPSをサポートできないため、Topologyは『プレイヤーが戦略的なムーブセットを非同期に提出して、他のプレイヤーやAIと対戦する』というゲームデザインを採用しています。

特徴的なのは、Shoshinは格闘ゲームでありながらリアルタイムでのバトルではなく、プレイヤーが「マインド」と呼ばれるムーブセットをデザインして提出し、それを元に非同期処理で戦わせる点です。

この構想に関してファウンダーのguiltygyoza氏は、「ブロックチェーンならではの面白さを追求したオンチェーンゲームを作るために必要なことは何か」「ブロックチェーンをメディアとして捉えると、新しいメディアには新しい思考、新しいテクニック、新しいデザインパターンが求められると考えている」と言及しており、オンチェーンゲームの中でも独特な思想を反映したプロダクトとなっています。

詳しくは以下の記事にまとめているので、興味がある方は併せてご参考ください。

ちなみに、guiltygyoza氏が共同創業社となっている「Topology」という組織は、Shoshin以外にも『Isaac』や『MuMu』など、ユニークで斬新な試みをいくつか行っているので、こちらも併せてご覧頂けると彼らの思想がより深く理解できると思います。


以上、筆者の主観込みで『初級編として最初におさえておくべき主要プロダクト 10選』についてまとめました。

最後に、本章の冒頭で掲載したまとめ画像を再度貼っておきます。

資金調達状況の概観

続いて本章では、オンチェーンゲーム/AW関連プロジェクトやその周辺ツール群の中から、執筆時点までに資金調達を実施しているものについてまとめていきます。

先に結論から言うと、オンチェーンゲームやAW、またその周辺ツールやゲームエンジン、コミュニティなどの中で、執筆時点において資金調達を発表しているプロジェクトとその金額比較は、以下の通りです。

金額だけで見ると、既存ゲーム業界から参入したCCP Gamesの「Project Awakening」や、「Pirate Nation」の開発を手掛けるProof Of Playが飛び抜けて見えますね。

ただ、それ以外にも2.9M〜10Mドルの範囲でシードラウンドの資金調達を行っている事例が実はいくつかありますので、本章ではそれらについて網羅的に情報をまとめながら、順に見ていきたいと思います。

なお、本章ではOptimismのRetroPGF(Retroactive Public Goods Funding)については割愛します。こちらに関しては、改めて別の機会に取り上げたいと思います。

それでは、以下の以下の順番で見ていきましょう。

  1. Argus Labs
  2. Cartridge
  3. Citadel
  4. Curio
  5. Matchbox DAO
  6. Project Awakening(CCP Games)
  7. Proof Of Play

Argus Labs

Argus Labsは、2023年6月7日に、 シードラウンドで合計10Mドルの資金調達を行なったと報告しています。

このラウンドでは、元a16zのGPであるKatie Haun氏によって設立されたHaun Ventures ($1.5Bのクリプトファンド)を筆頭にしたVC、またBalaji Srinivasan氏やSiqi Chen氏などのエンジェル投資家たちが出資しています。

出典:blog.argus.gg/world-engine/

Argus Labsは、Layer2 SDK(オンチェーンゲームエンジン)である「World Engine」の開発を行っており、前章でご紹介したDark Forestのリブート版ゲーム『Dark Frontier』などを、World Engine上で開発したりしています。

ちなみに、Argus LabsのFounder & CEOであるScott Sunarto氏は、Dark Forestの共同創設者であり、いわば『オンチェーンゲームの立役者』とも言える人物です。

彼は、2020年の段階で「すべてのゲームアクションが、オンチェーントランザクションとして残るゲームを作成したらどうなるか」というアイデアを元に、zk-SNARKsを用いたフルオンチェーンの宇宙探索ゲーム『Dark Forest』を共同開発し、そこで得た教訓や知見を活かして、World Engineの開発に取り組んでいます。

Cartridge

Starknet上のゲームコンソールとしてのポジションを確立しているプロジェクト「Cartridge」は、2023年9月5日に、 シードラウンドで合計5Mドルの資金調達を行なったと報告しています。

このラウンドでは、DuneとChapter Oneが共同リードし、Geometry、Fabric、Starkware、Voltなどが参加しています。

出典:cartridge.gg

Cartridgeは、WebAuthn(Web認証)技術を採用することで、StarkNet上で展開されるゲームを「誰でも簡単に遊べるようなゲーム機(ウォレット機能含む)」として提供し、ブロックチェーンゲームにありがちな『難しさ』を解消しようとしています。

一般的に難しそうだと思われているオンチェーンゲームのプレイ体験を、UIUXの改善だけなく、クエストシステムやポイントのEarn機能などを導入することで、簡易的なものにしようと試みています。

Citadel


3DのMMOゲームの開発を手掛ける「Citadel」は、2023年11月8日に、1kxをリードとしてShima Capital、Hashedなどから、合計3.3Mドルのシードラウンド資金調達を行ったと発表しました。

出典:citadel.game

執筆時点では、Citadelはローンチ前の状態であり詳細が不明ですが、ユニークな分散型ガバナンスシステムや不完全情報ゲームのためのゼロ知識証明技術など、ユニーク機能が盛り込まれる予定だと言われています。

Curio

先の章でもご紹介した「Curio」は、2023年2月21日に、1kxをリードとしてShima Capital、Hashedなどから、合計2.9Mドルのシードラウンド資金調達を行ったと発表しました。

出典:blog.curio.gg/introducing-treaty

先述の通り、Treatyを始めとした「4Xストラテジー」×「オンチェーン/コンポーザブル領域のゲーム」の構築に力を入れています。

4Xは、ストラテジーゲームのサブジャンルの一つ。ストラテジーゲームの中でも、”eXplore”:探検、”eXpand”:拡張、”eXploit”:開発、”eXterminate”:殲滅、の4つの性質を兼ね備えた作品を指す。

出典:Wikipedia

Matchbox DAO

「Starknetでオンチェーンゲームなどのインフラストラクチャを構築する、開発者・アーティスト・デザイナーのコミュニティ」であることを標榜する「Matchbox DAO」は、2022年8月18日に、 シードラウンドで合計7.5Mドルの資金調達を行なったと報告しています。

オンチェーンゲーム/AW界隈の中でも、かなり早期に資金調達を成功させたプロジェクトとして、話題になりました。

Matchbox DAOは、主にオンチェーンゲーム関連のハッカソンを開催したり、Starknetでゲームプロダクトをインキュベート(起業支援)するための「プログラム」を行ったりするなど、Starknetのオンチェーンゲーム開発を至れり尽くせりサポートするコミュニティとして機能しています。

Project Awakening(CCP Games)

出典:twitter.com/Crypto_Dealflow/status/1638257419653378062

先の章でもご紹介した「Project Awakening」は、2023年3月22日に、a16z cryptoなどから合計40Mドルのシードラウンド資金調達を行ったと発表しました。

「Project Awakening」は、EVE Onlineという著名ゲームを開発する企業CCP Gamesが開発を手掛けるクリプトゲームですが、先述の通り執筆時点ではその詳細は不明の状況です。

その他の内容については、前章に記載のとおりです。

Proof Of Play

先の章でご紹介した「Pirate Nation」の開発を手掛けるProof Of Playは、2023年9月22日に、a16zなどから合計33Mドルのシードラウンド資金調達を行ったと発表しました。

その他の内容については、前章に記載のとおりです。


以上、オンチェーンゲーム/AW関連プロジェクトの中から、執筆時点までに資金調達を実施しているものについて網羅的にまとめました。

第1章、第2章でご覧いただいた通り、資金調達事例も徐々に増えており、またその金額も既存ゲーム業界からの参入などにより、大規模なものまで見られるようになりつつあります。また、テストネット/メインネット版のローンチが行われているものも増えてきているため、いよいよ2024年はオンチェーンゲーム/AWに実際に触れる機会が増えるようになるのではないかと期待されます。

最後に、第1章、第2章での冒頭で掲載したまとめ画像を再度貼っておきます。

以上を踏まえて次章では、現時点における全体的な傾向というテーマを中心に、他のweb3ゲーム産業と比較すると現状どのくらいの規模感なのか『初期のフェーズから独自トークンを発行してはならない』という教訓など、マニアックな考察を「定期購読プラン」登録者向けにまとめています。ご興味あればご覧ください。

全体的な傾向と今後の見通しなどを考察

  • 現時点における全体的な傾向
  • 他のweb3ゲームと比較すると現状どのくらいの規模感なのか
  • 『初期のフェーズから独自トークンを発行してはならない』という教訓

現時点における全体的な傾向


この続き: 3,604文字 / 画像11枚

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まとめ

今回は、オンチェーンゲーム/AWの主要プロダクトを概観しつつ、その簡単な概要や資金調達状況に関する情報などを添えて、業界全体の傾向と今後の見通しなどについて、筆者の私見を交えながら解説しました。

本記事が、オンチェーンゲーム/AWの主要プロダクトに関する情報や資金調達状況、それが他のweb3ゲームと比較すると現状どのくらいの規模感なのか等について理解したいと思われている方にとって、少しでもお役に立ったのであれば幸いです。

また励みになりますので、参考になったという方はぜひTwitterでのシェア・コメントなどしていただけると嬉しいです。

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